サッカーコラム J3 Plus+　

■　試合の「始め」と「終わり」の時間帯

サッカーでは、「試合の入り方」と「試合の終わり方」が重要であるといわれる。

例えば、試合開始からすぐの時間には必ず、テレビ朝日の松木さんは、「大事な時間帯ですよ。」というコメントを残す。時間が経過して、残り時間が少なくなると、同じく松木さんは、「大事な時間帯ですよ。」とお茶の間のみなさんにも注意を促して下さる。

確かに、試合の「始め」と「終わり」の時間帯は、危険な時間帯で得点が入りやすいような気もする。イメージでは、勝負強いチームといわれる鹿島アントラーズや浦和レッズは試合終了間際の決勝ゴールが多いような気がするし、イケイケサッカーの傾向の強いジェフ千葉やＦＣ東京は、前半に攻めて、後半にスタミナ切れを起こして逆転負けを食らうことが多いかな、という感じもする。

では、実際に、そのイメージが正しいのか、調べてみた。（データは２００７年のＪ１での記録である。）

 

鹿島アントラーズ
時間帯	得点(*)	失点	シュート	被シュート	CK
0～15分	4	4	81	43	26
16～30分	10	10	67	65	25
31～45分	11	4	73	77	30
46～60分	13	7	74	72	22
61～75分	8	5	66	69	26
76～90分	14	6	87	93	40
合計	60	36	448	419	169

 

浦和レッズ
時間帯	得点(*)	失点	シュート	被シュート	CK
0～15分	5	2	66	64	35
16～30分	7	2	63	61	19
31～45分	14	6	79	74	37
46～60分	4	7	66	63	26
61～75分	13	5	87	55	38
76～90分	10	6	93	85	41
合計	53	28	454	402	196

 

Ｇ大阪
時間帯	得点(*)	失点	シュート	被シュート	CK
0～15分	9	6	68	49	21
16～30分	7	3	79	41	37
31～45分	9	5	77	60	31
46～60分	7	6	70	50	36
61～75分	18	8	87	39	24
76～90分	20	9	116	55	45
合計	70	37	497	294	194

 

清水
時間帯	得点(*)	失点	シュート	被シュート	CK
0～15分	5	3	56	65	21
16～30分	10	7	77	54	30
31～45分	13	4	72	61	26
46～60分	7	5	67	66	20
61～75分	13	9	60	66	30
76～90分	5	8	74	83	33
合計	53	36	406	395	160

 

川崎Ｆ
時間帯	得点(*)	失点	シュート	被シュート	CK
0～15分	9	6	82	51	26
16～30分	12	3	58	60	22
31～45分	9	11	66	64	23
46～60分	13	7	91	59	36
61～75分	10	10	65	61	29
76～90分	13	11	95	68	45
合計	66	48	457	363	181

 

新潟
時間帯	得点(*)	失点	シュート	被シュート	CK
0～15分	6	5	60	63	25
16～30分	5	5	48	54	28
31～45分	6	11	73	94	32
46～60分	10	8	70	64	15
61～75分	6	9	66	74	21
76～90分	15	9	99	92	51
合計	48	47	416	441	172

 

横浜ＦＭ
時間帯	得点(*)	失点	シュート	被シュート	CK
0～15分	5	7	60	49	23
16～30分	4	1	71	45	28
31～45分	9	3	88	57	30
46～60分	13	5	75	68	31
61～75分	13	10	79	64	28
76～90分	8	9	88	83	32
合計	52	35	461	366	172

 

柏
時間帯	得点(*)	失点	シュート	被シュート	CK
0～15分	4	2	43	63	21
16～30分	3	4	39	75	27
31～45分	10	8	64	72	24
46～60分	10	4	58	63	21
61～75分	8	9	54	82	24
76～90分	7	9	62	71	25
合計	42	36	320	426	142

 

磐田
時間帯	得点(*)	失点	シュート	被シュート	CK
0～15分	4	8	51	63	31
16～30分	9	8	59	59	31
31～45分	9	6	70	79	30
46～60分	8	7	80	61	26
61～75分	12	8	57	78	21
76～90分	12	18	95	97	37
合計	54	55	412	437	176

 

神戸
時間帯	得点(*)	失点	シュート	被シュート	CK
0～15分	9	5	67	62	19
16～30分	5	9	57	74	22
31～45分	8	13	80	77	29
46～60分	6	7	64	62	26
61～75分	11	9	67	70	29
76～90分	16	5	82	103	30
合計	55	48	417	448	155

 

名古屋
時間帯	得点(*)	失点	シュート	被シュート	CK
0～15分	3	3	50	45	29
16～30分	7	8	55	49	17
31～45分	9	5	74	40	22
46～60分	4	6	74	74	33
61～75分	12	12	79	62	31
76～90分	8	11	77	83	35
合計	43	45	409	353	167

 

ＦＣ東京
時間帯	得点(*)	失点	シュート	被シュート	CK
0～15分	2	5	63	62	29
16～30分	5	8	64	70	30
31～45分	6	12	76	78	19
46～60分	13	12	90	65	40
61～75分	7	12	58	58	21
76～90分	13	9	107	62	41
合計	46	58	458	395	180

 

千葉
時間帯	得点(*)	失点	シュート	被シュート	CK
0～15分	3	4	55	62	26
16～30分	6	13	68	62	30
31～45分	6	5	82	61	36
46～60分	5	12	74	76	27
61～75分	14	10	74	68	29
76～90分	15	12	89	96	28
合計	49	56	442	425	176

 

大分
時間帯	得点(*)	失点	シュート	被シュート	CK
0～15分	4	9	55	52	27
16～30分	8	4	45	45	25
31～45分	5	9	59	63	37
46～60分	6	7	59	64	36
61～75分	9	13	56	58	34
76～90分	10	18	75	82	51
合計	42	60	349	364	210

 

大宮
時間帯	得点(*)	失点	シュート	被シュート	CK
0～15分	2	2	35	49	13
16～30分	4	4	53	58	16
31～45分	4	9	58	68	25
46～60分	2	6	49	51	24
61～75分	4	10	42	71	20
76～90分	8	9	66	97	32
合計	24	40	303	394	130

 

広島
時間帯	得点(*)	失点	シュート	被シュート	CK
0～15分	5	5	54	89	15
16～30分	9	9	55	70	27
31～45分	8	9	88	67	29
46～60分	7	12	59	101	33
61～75分	5	16	81	79	24
76～90分	9	20	102	114	36
合計	43	71	439	520	164

 

甲府
時間帯	得点(*)	失点	シュート	被シュート	CK
0～15分	6	6	62	50	17
16～30分	3	13	51	56	30
31～45分	5	10	49	71	29
46～60分	3	11	49	72	28
61～75分	8	11	73	64	35
76～90分	8	14	89	84	40
合計	33	65	373	397	179

 

横浜ＦＣ
時間帯	得点(*)	失点	シュート	被シュート	CK
0～15分	2	6	36	64	26
16～30分	3	8	45	58	29
31～45分	2	16	36	104	18
46～60分	1	5	47	87	22
61～75分	5	14	46	83	22
76～90分	5	17	44	96	27
合計	18	66	254	492	144

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【考察】

①　鹿島は残り15分の時間帯での得点が多く、失点は少ない。しかしながら、被シュート数がシュート数を上回っている。試合終了間際に相手に攻め込まれることが多いのかもしれない。

②　上位チームであるにもかかわらず、清水と横浜ＦＭと柏は、残り15分の時間帯での失点数が得点数を上回っている。

③　Ｇ大阪の残り15分の時間帯での「得点数の多さ」と「シュート数の多さ」は異常である。

④　Ｇ大阪、川崎Ｆ、ＦＣ東京の３チームは、残り15分でのシュート数が、被シュート数を大きく上回る。

⑤　神戸は残り15分の時間帯での得失点差が「＋１１」でＧ大阪と並んでリーグ№１。

⑥　磐田の残り15分での失点数の多さは、降格チームと同レベルのひどさ。

⑦　開始15分に限ったデータは、各チームでそれほど違いは無い。上位の鹿島や浦和と下位の広島や甲府の間にほとんど差は無い。

⑧　広島は、前半45分の得失点差は「－1」で、後半45分の得失点差は「－27」。後半に弱いことが、Ｊ２降格の要因といえる。

⑨　前半の得点数が後半の得点数よりも多いのは、広島と清水だけ。

⑩　千葉は残り30分での得点数が、Ｇ大阪に次いで第2位。スロースターターである。　

⑪　大分は、残り15分でのＣＫ獲得数が新潟と並んで最多である。

⑫　前半45分の被シュート総数が一番少ないのは、名古屋である。


結論

ジーコジャパンは、試合終了間際の劇的なゴールが多かったが、「試合終了間際のゴールが多い」＝「勝負強い」といえるかどうかは疑問。データから見ると、確かに、鹿島は終了間際の時間帯に強いが、浦和はそうではない。浦和は「先行逃げ切り型」のチームであるといえる。

調べる前は、『強いチームは、「試合の始めの時間帯」と「試合の終わりの時間帯」の成績がいいのか』と思われたが、そうでもなかった。結局、９０分間で、特別、どの時間帯が重要というわけではなく、全ての時間帯で集中すべきであって、むしろ、時間帯による成績に偏りが無いチームが、上位に来ているといえるのかもしれない。

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