■ 春の等々力競技場昨シーズン2位の川崎フロンターレが、昨シーズン4位の清水エスパルスをホームの等々力に迎えた、J1第6節のビッグカード。
川崎は、前の5節以降の3試合で、G大阪・清水・浦和と昨シーズンの上位チームとの対戦が続く。ACLを戦いながら強敵との対戦が続く正念場の時期である。
対する清水は、枝村が怪我で欠場、青山が五輪代表でシリア遠征中と、主力を欠く中での試合となった。
試合は、前半32分に、清水のFWチョジェジンからのクロスを、MF岡崎がダイビングヘッドで決めて先制する。
しかし、後半に入ると、61分に川崎のFW黒津が相手GKのバックパスの処理ミスをカットして、無人のゴールに流し込んで同点に追いつくと、そのすぐあとの63分に、FWジュニーニョがドリブルから豪快に二アサイドに勝ち越しのゴールを突き刺して逆転。
清水は、FW西澤やFW矢島を投入するものの、攻撃に迫力を欠いて、結局2対1で川崎が勝利した。
■ 止まらないジュニーニョ苦手の清水相手に勝利した川崎にとっては、大きな勝利となった。ミッドウイークに韓国まで遠征した疲れもあって、十分な試合内容ではなかったが、苦しいながらも勝ち取った価値ある勝利となった。
MOMは、勝ち越しのゴールを挙げたFWジュニーニョだろう。ドリブルから決めた2点目のシーンのように、思い切りのいいプレーで、清水DFを混乱させた。
圧倒的なスピードが持ち味のジュニーニョだが、もともと中盤の選手だったこともあって、オフサイドラインに張り付いて裏へ飛び出すプレーよりも、低い位置まで下がってきてボールを受けて、そこからドリブルで仕掛けていくスタイルが得意。マンマークをつけようにも、すぐに中盤まで下がって来るので、なかなか密着マークしにくい。
また、シュートのアイディアも豊富で、ニアを狙ったシュートやGKの頭上を狙ったシュートなど、いろいろなシュートを見せる非常にやっかいな選手である。
■ 右の村上と左の森の意図は?川崎はこの試合では、今までのように「右サイドが森」で「左サイドが村上」という配置ではなくて、全く逆の配置(「右サイドが村上」で「左サイドが森」)をしてきた。この意図としては、
① 清水の右サイドバックの市川の突破力を封じるための策
→ 市川のスピードに対抗するには、スピードのある森の方がベター
② 森の攻撃力を生かすには、対児玉よりも対市川の方が攻略しやすい。
→ 児玉は、CBをこなすだけの守備力をもつ。
の2つが考えられる。
試合後の会見で、どういう意図だったのか説明されるはずだが、今日に限っていうと、配置を逆転したメリットはあまりなかったと思う。(後半に入ると、いつもの配置に戻した。)
ただ、相手によって、両サイドの面子を変えられるようになれば、様々な相手に、対応しやすくなるので、有効であるように思う。
■ プランどおりだった清水だが・・・前半から、アウェーということもあって、やや守備的に戦った清水。いい時間帯に先制点を奪って、勝ちパターンに入ったかと思われたが、GK西部の軽率なミスで同点に追いつかれたことで、チームは意気消沈してしまった感がある。
西部のミスについては、軽率だったといわざるえない。伊東からのバックパスが難しいバウンドになったことは事実だが、あまりにも注意力が無さ過ぎた。
■ 進化系を探る清水清水の攻撃陣に関しては、非常に物足りなさを感じた。トップ下に入った岡崎がファインゴールを決めたシーンを除くと、見るべきものは少なかった。攻撃がうまくいっていない原因は、やはり、シーズン前の布陣変更が大きく関係している。
清水は、シーズン前にフェルナンジーニョを獲得したことで、中盤の配置を大きく変更することになった。結果的には、これが、まだ、十分に機能していない。
清水の昨シーズンまでの基本システムは、<4-2-3-1>に近い形で、きれいにポジションを守って攻守にバランス良く戦う戦術で、一方、今シーズンは、<4-1-3-2>に近い形。枝村と伊東のダブルボランチの形から、伊東の1ボランチに変更し、藤本と兵働をダイヤモンドの左右に配置し、トップ下に枝村(フェルナンジーニョ)を置くものである。
バランス重視の方針から、より攻守に自由度を増した流動的な形に変更したわけだが、特に、両サイドの藤本と兵働の役割が明確ではなく、攻撃にうまく絡めていない。スタートポジションが上がっているため、一見すると、攻撃的になったように見えるが、実際には、昨シーズン以上に守備の負担が増していて、このふたりのところにボールが入らないことは、両サイドバックが効果的に攻撃参加できない要因にもなっている。
移籍してきたフェルナンジーニョ自体のプレーは悪くない。ただ、フェルナンジーニョが入って、チームバランスが悪くなったのも事実である。
このあたりは非常に難しい問題で、昨シーズンまでのある程度完成されていたスタイルを壊してまでチームとしてもう一歩進化する道を選択したのだから、ある程度、苦しむことは予想されたことである。長谷川監督が、今後、どのようにチームを作っていくのか、見ものである。
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