■ 開幕連敗チームの対戦名古屋&清水に敗れたジェフ千葉と、川崎&ガンバ大阪に敗れた鹿島アントラーズの対戦。いずれも、難敵チームとの対戦が続いたとはいえ、試合内容も十分ではなかった。
開幕3連敗だけはどうしても避けたい両チームが、フクアリで対戦した。
■ 激しい点の取り合い試合は、非常にエキサイティングな展開となった。開始から鹿島が猛攻を仕掛けて、前半23分、右サイドバックの内田のパーフェクトなクロスをFWマルキーニョスがあわせて先制。苦しくなった千葉だが、その直後のセットプレーで、MF羽生が同点のゴールを叩き込む。続けざまに、前半27分、左サイドに流れたFW新居のグラウンダーのクロスに、右サイドの水野があわせて逆転する。
前節の完敗を受けてか、立ち上がりから押され気味だった千葉は、マルキーニョスの先制ゴールで赤信号が灯りかけたが、すぐに羽生が同点のゴールを叩き込んだことが非常に大きかった。
千葉が2対1でリードを奪うものの、試合は、なかなか落ち着かない。前半40分、直接FKからMF中後がファンタスティックなゴールを決めて同点。2対2で前半を終えた。
後半は、立ち上がりのすぐに、千葉がCKから、DFジョルジェビッチが押し込んで、再度、突き放す。しかし、鹿島は、後半10分に、柳沢のクロスに対して、マルキーニョスが粘り強くキープしてからゴールゲット。
その後、両チームとも4点目を狙って、積極的に攻撃を仕掛けるが、ゴールは奪えず。結局、3対3のドローに終わった。
■ レベルは高くはなかったが・・・レベル自体は高くなかったが、非常に見ごたえのある面白いゲームとなった。試合のレベルの高さは、サッカーの面白さとは、また別の次元にあるということを再認識した。
前述したように、千葉としては、前半の羽生の同点ゴールが大きかった。おそらく、シーズン終了後に、今シーズンを振り返ったとき、「鹿島戦の羽生のゴールが大きかったよね。」と思い出させるくらいの、非常に重要なゴールだったと思う。その理由は、羽生のゴールが決まるまでの時間帯と羽生の同点ゴール以後のジェフのプレーを比べてみると一目瞭然。
前節の清水戦を見て、千葉がいい状態になるまでは少し時間がかかるかもしれないと見ていたが、1対1になった後のサッカーを続けていけば、まだまだ、上位に食らいついていくことも可能だろう。
■ 復活の兆しが見えた千葉千葉のサッカーは、「走るサッカー」という言葉に集約されるが、要するに、リスクを冒してでも、ゴール前に人数をかけて全員で攻めるサッカーである。この試合では、久々に、何人もの選手が連動してゴール前に攻め込むらしいサッカーを見せた。
キーワードは「リスク」。特別な技術を持たないチームは、簡単には相手DFを崩すことが出来ないため、人数をかけて攻撃することが必要とされるが、大抵のチームは、「セーフティー」に気持ちが動いてしまって、吹っ切れたサッカーが出来ない。
日本でも、「考えて走るサッカー」が流行していて、特に、タレント性に劣るJ2のチームは、ほとんどのチームがこのスタイルを求めてチームを作っているが、なかなか実践にうつすことは出来ない。
■ リスクマネージャー・下村東美サッカー選手は、馬鹿ではないので、「失点する危険」が高い状況にもかかわらず、やみくもに攻撃に参加して墓穴を掘るようなことはしない。イビチャ・オシム監督が優れているのは、「走るサッカー」を実践するためには、「リスクマネージメント」が絶対に必要だということを心得ているから。
オシムジャパンと反町ジャパンを比較してみると、一番の違いは、MF阿部勇樹とMF鈴木啓太がいるかいないか。オシムジャパンでは、阿部と鈴木が徹底してリスク管理を行っており、他の選手は、後ろ髪を引かれることなく、積極的にプレーすることが可能となるが、反町ジャパンには、彼らの仕事をこなせる選手が見当たらない。
昨シーズンまでは、そのリスク管理を行うのは、ジェフ千葉においては阿部と坂本の仕事だった。この2人が抜けてさあどうするかが、今シーズンのテーマになるが、この試合を見る限り、下村東美の存在がその不安を拭い去りそうだ。
■ 気になる両サイドの裏のスペース千葉の攻撃は良くなってきたが、不安は守備陣。特に、両サイドの裏のスペースをつかれてピンチになるケースが多い。
千葉は、昨シーズンの途中から、右に水野、左に山岸を配置するようになってから、明らかに両サイドがそれまでよりも高い位置を取るようになっているが、攻撃のときは威力を発揮する一方で、守備陣では、不安要素となっている。
今年で言うと、水本の守るサイド(左)は水本がケアをしていて問題は少ないが、ジョルジェビッチの守るサイド(右)は、危険なエリアとなっている。ジョルジェビッチは、遠くを見られる選手で、フィード力のある選手だが、スピードに難があり、スピード系の選手とマッチアップしたときに、不安がある。
■ フィットし始めた新居ゴールこそなかったが、FW新居の出来はよかった。本来の仕事場は、ゴール前だが、この試合では、低い位置まで下がってきて、中盤と前線のつなぎ役になって、攻撃を流動化させた。
鳥栖時代はチームの王様だったので、ストライカーとしておいしい場面を見つけて仕事をすれば十分だったが、実績のないジェフでは、いろいろな仕事をこなして、チームの信頼を勝ち取っていかなければならない。新しい挑戦が、新居を一回り大きくするかもしれない。
■ 新しいキャプテン佐藤勇人さて、阿部の移籍で新キャプテンに就任した佐藤勇人の奮闘振りを、見過ごすことは出来ない。昨シーズンは、アマル・オシム監督に1ボランチとしての起用されることもあるなど、持ち味の攻め上がりを抑えてプレーしていた印象があったが、今シーズンは、慣れたダブルボランチの一角としてプレーしていて、攻守にアグレッシブでハイレベルなプレーを見せている。
もともと、優等生タイプの佐藤寿人とは違ってかなりの問題児だったようだが、キャプテンに就任してかなり充実した時間を過ごせているようだ。
■ 目を引く本山のプレー野沢の離脱で、本山・ダニーロ・中後・増田の4人で組んだ鹿島の中盤では、本山の活躍が目を引いた。鹿島のほとんどのチャンスを演出した本山は、千葉の選手がマークしずらいポジションに入り込んできて、千葉を混乱させた。
以前のように、何人もの相手DFをかわしてゴールに向かうシーンは少なくなったが、判断が的確で、プレーの実効性は変わっていない。
■ ダニーロは多分フィットしないこの試合でも、ダニーロは効果的な仕事は出来なかった。とにかく、試合に参加している時間が少なくて、ほとんどの時間帯で消えてしまっている。
大柄でボール扱いも非凡なものを感じるが、率直に言うと、鹿島が今のような流動性を重視したサッカーをする限りは、ダニーロがチームにフィットすることはないと思う。多分、ダニーロがチームのリズムに乗ってかみ合っているなと感じる試合は、相当に、鹿島が質の低い攻撃をしている場合に限定されるのではないかと思う。今のJリーグでは、すべてにおいてスピードが要求されるが、ダニーロはこの部分でかなり劣っているように思われる。
■ いいコンビになりそうな柳沢とマルキーニョス鹿島の2トップのマルキーニョスと柳沢は、ともに技術もあって献身的なプレーもできる選手。シーズン前から、相性がよさそうだなという予感があったがそのとおりで、なかなかいいコンビネーションを見せた。
ただ、キャラクターが重なる選手なので、裏にスペースの少ないチーム相手になったときに、攻撃が行き詰らないかという不安要素は残っている。
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