■ 優勝は目前1シーズン制に移行してからは初めてとなるリーグ戦の2連覇が目前に迫った鹿島アントラーズ。最終節の相手は、すでにJ2降格が決定しているコンサドーレ札幌。鹿島は勝てば文句なしの2連覇となる。
ホームの札幌は<4-5-1>。GK 佐藤。DF池内、西澤、西嶋、坪内。MF西、上里、藤田、西谷、砂川。FWダヴィ。DF池内、DF西澤、MF西谷は今シーズン限りでの退団が決定している。
アウェーの鹿島は<4-4-2>。GK曽ヶ端。DF内田、岩政、伊野波、新井場。MF中後、青木、本山、野沢。FWマルキーニョス、興梠。MF中田浩二とMF小笠原満男の2人はスタンドで決戦を見守る。
■ 野沢のスーパーミドル序盤は札幌が積極的に攻めた。右サイドMF藤田のドリブルとクロスが効果的で、得点ランキング2位のFWダヴィにボールを集めようと懸命に戦う。しかし、鹿島の最終ラインを破るまでには至らず、ゴールは奪えない。
すると、鹿島は、前半35分に中盤でボールを保持したMF野沢が素晴らしい弾道のスーパーミドルを決めて先制する。MF野沢は今シーズン3ゴール目。前半は1対0で終了。
後半も札幌が見事なファイティングスピリットを見せて王者に互角に勝負を挑むが、頼みのFWダヴィが鹿島のDF岩政とDF伊野波のコンビにうまく封じられてしまう。結局、1対0で鹿島が勝利し、2連覇を達成。12個目のタイトルとなった。
■ 王者を苦しめたコンサドーレリーグ戦の最終戦というのは、少し他の試合とは雰囲気が異なる。Jリーグの場合、11月30日が来シーズン以降の契約を更新するのかしないのかを選手に通達する期限であり、最終節の前にチームを退団する選手のリストが発表されることが多い。昨シーズンの横浜FCもそうであったが、チームを去る選手やスタッフのために一丸となって、普段以上の力を発揮することが多い。
この試合の札幌も、三浦監督や池内、ダヴィといった選手が札幌でのラストゲームとなることが確実の情勢であり、フィールド上の選手たちは、いつも以上に激しく戦った。その結果として、1位と18位の対戦という雰囲気は無く、札幌は最後まで王者を苦しめた。
■ 上里と藤田中でも、札幌のMF上里の左足のキックには驚かされた。パワフルでかつ精度の高い左足のキックは異質のものであり、セットプレーでもビッグチャンスを作った。
また、右サイドのMF藤田も立ち上がりから積極的にアタックを仕掛けて、何度もサイドを突破した。今シーズンは期待されながらも不本意なシーズンに終わったMF藤田が、最終戦でようやく潜在能力が一級品であることを示した。
来シーズン、札幌はチームを支えたMF西谷とFWダヴィが退団し、新しいチームに生まれ変わることになる。その中心となるのが、ともに22歳のMF上里とMF藤田である。
■ つかんだタイトル一方の鹿島は1対0で勝利し、12個目のタイトルを獲得した。今シーズンのJ1は稀に見る大混戦となり、終盤まで6チームを超えるクラブがタイトルの可能性を残したが、最後は鹿島がライバルクラブを振り切った。
シーズンの中盤でMF小笠原とMF中田が離脱し、さらにMFダニーロも終盤に欠けるなど、昨シーズンと比べると怪我人が多かったが、その都度、MF中後、MF増田、DF伊野波といった若手が穴埋め以上の存在となった。
昨シーズンの怒涛の9連勝ほどのインパクトはなかったが、もっとも優勝に値するチームが鹿島アントラーズだった。それは間違いはない。
■ 辛抱出来る強さ鹿島は精神的な面で他のクラブと比べると大人だった。これだけ日本代表クラスの選手が揃うと、エゴが強すぎて、不協和音のようなものが発生しがちであるが、このチームは皆無である。
また、フィールド上では、うまくいかない展開になっても、したたかな試合運びが出来る強さがあった。それは、昨シーズンの2冠がもたらしたものの1つであるが、流れが悪くなっても崩れることなく、簡単にリズムを相手に手渡さなかった。
Jリーグの大半のチームは、自分たちに主導権がある展開を望み、自分達に流れがある展開を求める。ただ、その気持ちが強すぎるため、イーブンの状態でも自分たちが不利であり、劣勢であるかのように錯覚してしまう。しかしながら、鹿島だけはそうではなかった。イーブンの状態でも決して慌てず、変化が起こるまで辛抱することが出来る。
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