1969年三重県生まれ。京大ミステリ研出身。先輩である綾辻行人と法月綸太郎、ペンネームの命名者である島田荘司の推薦で、京大在学中の1991年に『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』でデビュー。代表作は『翼ある闇』『夏と冬の奏鳴曲』『鴉』『螢』『神様ゲーム』『隻眼の少女』『さよなら神様』など。
作品内に散りばめられる小ネタやパロディ、論理的で端正な謎解きと色んな意味で超弩級のトンデモトリックが平然と同居する作風、独特の世界観と強烈なキャラクター、そして最後の最後に作品世界を丸ごと崩壊させる結末でカルト的人気を誇る新本格の異才。既存のミステリの枠組みに対して、最大限の敬意を示しつつそれをぶち壊す挑戦的な問題作を書き続けている。そのため高く評価する人も多いが、受け付けない人も多く、初期作品のトンデモ部分は今でも(主に揶揄する文脈で)ネタにされることがある。『翼ある闇』のアレとか。
主なシリーズキャラクターには不可謬の銘探偵にして鬼畜探偵・メルカトル鮎とその相方である売れない推理作家の美袋三条、モラトリアム青年・如月烏有、私立探偵・木更津悠也とその相棒の推理作家・香月実朝がいる。5人とも同じ世界観上に存在する人物で、主人公だったり脇役だったり、共演したりしなかったり。その他のキャラクターでは、全知全能なので犯人を最初に教えてくれる神様(小学生)や、自分では推理さえしない貴族探偵などがいる。近年は特に、推理小説における「探偵」とはそもそも何なのか、という問題を追及するような作品が多い。
作品で展開される試みが偏執的にマニアックな作風なので、ミステリマニアの間では本格マニアだけが読んでいる作家と思われがちだが、その作風や登場キャラクターの強いインパクトから、いわゆる狭義の本格ミステリマニアではない麻耶ファンも多い。特に一部のメルカトルや木更津のファンの間では、諸岡卓真の『翼ある闇』論(『現代本格ミステリの研究』に収録)が「諸岡論文(M岡論文)」と呼ばれて(ミステリ研究論文としてではなく)キャラ読解テキストとして扱われているとかなんとか。
2005年の『神様ゲーム』以降なかなか新刊が出ずファンをやきもきさせたが、2010年に久々の新刊『貴族探偵』と『隻眼の少女』を続けて刊行。『隻眼の少女』で第64回日本推理作家協会賞と第11回本格ミステリ大賞を受賞した。
それ以降はわりとコンスタントに新刊を出しており、「このミステリーがすごい!」等の年末のミステリランキングでは近年は上位の常連になっている。2015年、『さよなら神様』で第15回本格ミステリ大賞を2度目の受賞。2017年には『貴族探偵』がなんと月9でドラマ化され、視聴率的にはパッとしなかったものの、秀逸な原作改変により麻耶ファンや本格ミステリファンからは好評を得た。
2022年から本格ミステリ作家クラブの第6代会長に就任。
著作は長編が多いが、本人は長編より短編の方が好きらしい。そのためか、近年は短編連作が中心。短編の代表作は「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」(『メルカトルと美袋のための殺人』収録)、「こうもり」(『貴族探偵』収録)、「答えのない絵本」(『メルカトルかく語りき』収録)、「バレンタイン昔語り」(『さよなら神様』収録)あたりだろう。
京大ミステリ研の後輩にあたる清涼院流水は大学時代、たいへんな麻耶雄嵩オタクとして有名だったそうである。綾辻行人・有栖川有栖・法月綸太郎ら新本格第一世代がオールドスタイルな本格ミステリのルネッサンスを目指したのに対し、「ミステリのお約束を意識しつつそれを壊していく」麻耶雄嵩が、清涼院に限らず後続のメフィスト賞系などの作家陣に与えた影響は非常に大きく、メフィスト賞以降の新本格のイメージができあがるきっかけになった作家と言えるだろう。
作品名 | このミス | 週刊文春 | 本格ベスト10 | ミス読み |
---|---|---|---|---|
翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 | 1992年版12位 | 圏外 | --- | --- |
夏と冬の奏鳴曲 | 1994年版17位 | 圏外 | --- | --- |
痾 | 圏外 | 圏外 | --- | --- |
あいにくの雨で | 圏外 | 圏外 | 圏外 | --- |
メルカトルと美袋のための殺人 | 圏外 | 圏外 | 1998年版5位 | --- |
鴉 | 1998年版16位 | 圏外 | 1998年版1位 | --- |
木製の王子 | 2001年版12位 | 圏外 | 2001年版4位 | --- |
名探偵 木更津悠也 | 圏外 | 圏外 | 2005年版16位 | --- |
螢 | 2005年版11位 | 圏外 | 2005年版3位 | --- |
神様ゲーム | 2006年版5位 | 圏外 | 2006年版5位 | --- |
貴族探偵 | 2011年版20位 | 2010年13位 | 2011年版6位 | 2011年版13位 |
隻眼の少女 | 2011年版4位 | 2010年4位 | 2011年版1位 | 2011年版7位 |
メルカトルかく語りき | 2012年版7位 | 2011年8位 | 2012年版2位 | 2012年版2位 |
貴族探偵対女探偵 | 2014年版13位 | 圏外 | 2014年版1位 | 圏外 |
さよなら神様 | 2015年版2位 | 2014年3位 | 2015年版1位 | 2015年版2位 |
化石少女 | 圏外 | 圏外 | 2016年版16位 | 圏外 |
あぶない叔父さん | 圏外 | 圏外 | 2016年版25位 | 2016年版14位 |
友達以上探偵未満 | 圏外 | 圏外 | 2019年版11位 | 2019年版13位 |
メルカトル悪人狩り | 2022年版20位 | 圏外 | 2022年版19位 | 2022年版19位 |
化石少女と七つの冒険 | 圏外 | 圏外 | 2024年版6位 | 2024年版12位 |
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掲示板
14 ななしのよっしん
2020/03/27(金) 00:34:15 ID: Bde+8HRFmd
>>7
神様ゲームは普通のミステリと違って読者が犯人を当てられるものじゃないと思う
あまり書くとネタバレになるから言えないけど麻耶雄嵩作品はミステリの構造を破壊するようなテーマが多いから
15 ななしのよっしん
2020/12/28(月) 01:29:54 ID: 1UtBaiAEHt
こんだけ尖ってて、本人は「長編は無駄に世界観でちゃうから、自作だと短篇の方が好き」「現役日本人の面白そうな新作と多分さほどでもない英米古典、どちらかを読もうってなったらとりあえず古典を選ぶ」っていう保守本流っぷりなのが、作家ってすげーなあと思う
16 ななしのよっしん
2023/06/20(火) 00:22:52 ID: Q5TqOGvwL4
ダンスダンスダンス辺りの村上春樹の延長のような気分で
犀川とか京極堂とかあの辺とセットで
初期の何冊くらいはむかし読んだような
犯人は家政婦のアナスタシアだよ
なんか学者に話を聞いてみて
斜め上の首切断トリックが成立することを証明してみたけど
実際は合鍵でどうにかしたとかで単なる考えすぎだったよ
犯人はうゆーさんだよ
それで邪悪な感じの編集長はどうするんだこれ
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最終更新:2024/12/23(月) 10:00
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