広瀬正(ひろせ ただし)とは、タイムマシンとT型フォードを日本で一番愛したSF作家である。
1924年、東京に生まれる。もともとはジャズ奏者で、1952年にジャズバンド「広瀬正とスカイトーンズ」を結成し活躍していたが、1960年にバンドは借金のため解散してしまう。
翌1961年、ミステリ短編「殺そうとした」が雑誌『宝石』に掲載され小説家デビュー。同年、SF同人誌『宇宙塵』に参加、ショートショート「もの」が星新一に絶賛され、以降は『宇宙塵』に時間ものの短編・ショートショートを中心に発表。1964年、東都書房の原稿募集に処女長編「マイナス・ゼロ」を持ち込むが没にされる。翌年、同作を『宇宙塵』に連載、好評を得るものの出版の目処は立たず、失意のためかこの後5年間作家活動を休止する。この間はクラシックカーのモデル製作を本業としていた。
1970年、河出書房新社から『マイナス・ゼロ』がようやく刊行され作家活動に復帰。直木賞候補にも挙がるが、司馬遼太郎ひとりが絶賛したのみで落選する。以降、パニック小説『ツィス』、パラレルワールド小説『エロス もうひとつの過去』と発表した長編は3期連続で直木賞候補となるも、選考委員で認めたのは最後まで司馬ひとりであった。
1972年、新作の取材のため移動中、赤坂の路上で突然の心臓発作に見舞われ急逝。47歳没。没後、『鏡の国のアリス』に星雲賞が贈られた。
代表作にして日本のタイムトラベル小説の金字塔『マイナス・ゼロ』を筆頭に、タイムマシンを題材にした時間SFを多数発表、「時に憑かれた作家」と呼ばれた。全作品の半数以上が時間ものであり、いかに時間SFにこだわりがあったかが窺える。葬儀の際、棺には《タイムマシン搭乗者 広瀬正》と書かれた紙が貼られていたという。
タイムパラドックスや並行世界といった題材を非常にロジカルに扱う作風で、ロバート・A・ハインラインの短編「時の門」を徹底的に解析した評論「『時の門』を開く」も有名。
また、極めて綿密な取材による緻密な時代考証とディテール描写にも定評があり、『マイナス・ゼロ』や『エロス』では昭和一桁代の東京の姿を徹底したディテールをもって鮮やかに描き出している。
タイトルをつけるのが上手くないとはよく言われており、著作の解説ですら突っ込まれている。誤解のないよう申し上げておけば、『エロス』はエロ小説ではない。
クラシックカーのモデル製作をしていたためか、T型フォードに対する思い入れも非常に強く、作中にしょっちゅうT型フォードが登場する。遺作となったのは、密室状態のT型フォード車内で死体が発見されるという本格ミステリの長編、その名も『T型フォード殺人事件』であった。
現在、著作は《広瀬正・小説全集》全6巻として集英社文庫で読める。
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2 ななしのよっしん
2017/02/02(木) 09:57:18 ID: e07Otp4cHo
「タイムマシンのつくり方」がいいです。短編集なので読みやすいと思います。
3 ななしのよっしん
2017/02/16(木) 18:39:24 ID: eWYQEgsLny
司馬遼太郎が直木賞で推したんだけど
「こんなタイムスリップなんて現実にあるだろうか」みたいな否定意見が出てきて
「こらあかんわ」とさじを投げた話が好き
4 ななしのよっしん
2018/11/17(土) 01:33:33 ID: lWyL5DuHfm
おっ、記事があるとは全く思ってなかったわ
マイナス・ゼロはいまならアニメでうまく映像化できると思うんだよなあ
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最終更新:2024/12/23(月) 10:00
最終更新:2024/12/23(月) 10:00
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