浦賀和宏(うらが かずひろ、1978年12月8日-2020年2月25日)とは、日本の小説家。
1978年生まれ。『記憶の果て』で第5回メフィスト賞を受賞し1998年にデビュー。乾くるみ、積木鏡介との同時デビューで、「メフィスト賞はイロモノ」という評価を決定的なものにしたひとり。ちなみにデビュー当時は19歳であり、これは現在もメフィスト賞の最年少受賞記録である。
講談社ノベルスで、デビュー作の語り手である安藤直樹という人物をめぐる一連のシリーズ(通称「安藤直樹シリーズ」)を展開するが、あんまり売れず第7巻の『透明人間』でシリーズは中断。文庫もデビュー作の『記憶の果て』の文庫版が壊滅的に売れなかったらしく、『時の鳥籠』以降の講談社ノベルスでの作品は長らく文庫化されないままだった。ちなみに安藤シリーズは単純なミステリではなく、SFの要素がかなり強いなどジャンルミックスである上に、各巻の内容が複雑に絡まり合っており(たとえば『記憶の果て』の時点で『時の鳥籠』の物語について作中で既に触れられている)、各巻の物語自体は独立しているがシリーズを通読しないと全体像が見えてこないという厄介な構造をしている。
他社では単発作品の『彼女は存在しない』『こわれもの』『地球平面委員会』などを発表。『地球平面委員会』は少し後に出た『涼宮ハルヒの憂鬱』と似ているとごくごく一部でほんのちょっとだけ話題になったりもした。
その後、講談社ノベルスでは『松浦純菜の静かな世界』から「松浦純菜・八木剛士シリーズ」を開始。こちらは『究極の純愛小説を、君に』によれば編集者のお情けで順調に刊行を続け、第9作の『生まれ来る子供たちのために』で無事シリーズ完結を迎えた。
純菜シリーズ完結後はどうなるのかと思ったら、2009年の『萩原重化学工業連続殺人事件』で安藤直樹シリーズが6年振りにまさかの復活。「萩原重化学工業シリーズ」と銘打たれて翌年には第2作『女王暗殺』も出版されたが、結局これもそれきりでストップしてしまう。
作風は基本的に、凄惨かつ痛々しくトンデモである。またやたらとカニバリズムを好んで描き、作中にオタクが登場するとだいたい非常にネガティブに扱われる。登場人物の鬱屈した内面(たまに自虐ネタを含む)を赤裸々にぶっちゃける痛々しさと破滅的な展開は非常に読者を選ぶため、何も知らずに読むと痛い目を見ること請け合い。しかしその痛々しさが病みつきになってしまう読者が一定数存在しており、数少ない理解者である彼らが長らく浦賀作品の少ない売上を支えていた。
2010年に『女王暗殺』を出して以降はしばらく沈黙していたが、2012年頃から、『彼女は存在しない』の文庫版が書店の仕掛けで売れはじめ、20万部を超えるベストセラーになるという事態が発生。書店の店頭で平積みされ「○万部突破!」と書かれた帯のついた文庫を発見した浦賀読者の多くが自分の目を疑い狼狽した。
このヒットを受けて、2013年には3年ぶりに『彼女の血が溶けてゆく』『彼女のため生まれた』と新作を文庫書き下ろしで2冊刊行。また文庫化されていなかった単発作品の『眠りの牢獄』『こわれもの』が文庫化された。
そして2014年にはついに『記憶の果て』が上下巻に分冊され再文庫化。『時の鳥籠』『頭蓋骨の中の楽園』がやはり上下巻で初文庫化と、『彼女は存在しない』のヒットのおかげで再評価が進んでいる。ようやく時代が追いついた……のだろうか。
なお、復活後の最初の数作では前述の痛々しい作風はなりをひそめ、わりと普通のミステリーになっていたが、その後は徐々に本性を現しつつある。特に『究極の純愛小説を、君に』は松浦純菜シリーズ読者は必読。
そうして2013年の復活後はコンスタントに新作を発表し続けていたが、2020年2月25日、脳出血のため41歳の若さで死去。数日前までは元気にTwitterを更新しており、急死だったことが伺える。奇しくも生前最後に刊行された作品は「殺された浦賀和宏の遺作」という趣向の長編『デルタの悲劇』であった。また、本名が「八木剛」であったことが公表され、これまでの浦賀作品に頻繁に登場していた「柳沢剛士(『浦賀和宏殺人事件』)」「八木剛士(松浦純菜シリーズ)」「八木剛(『究極の純愛小説を、君に』『デルタの悲劇』)」などの名前が本名由来であったことに、浦賀読者の多くが奇妙な感慨を覚えることになった。没後の2020年5月、遺作となる長編『殺人都市川崎』がハルキ文庫から刊行。
◆は安藤直樹シリーズ、★は松浦純菜シリーズ、▼は萩原重化学工業シリーズ、▲は桑原銀次郎シリーズ。
赤太字は2023年11月現在、新品で入手可能なもの。
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最終更新:2025/01/09(木) 07:00
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