小栗虫太郎 単語

56件

オグリムシタロウ

3.8千文字の記事
  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • LINE

ニコニコ大百科黒死館殺人事件の記事があるのに小栗虫太郎 (おぐりむしたろう)の記事が出来なかったので、そろそろ記事作成の噂が立ち始めた頃、大百科編集者は、小栗虫太郎の記事作成を放棄しなければならなくなった。とうのは、九十年の昔から渋としていて、『狂人解放治療 (ドグラ・マグラ)』以来の奇書われる『黒死館殺人事件』の文体を模倣しなければならなかったからであった。その、通称三大奇書と呼ばれる『死館』には、いつか必ずこういう読み(にく)い記事が作られずにはいまいと噂されていた。論そういう記事を作成するについては、日本探偵小説 (ミステリー)史にただ一つしかないとわれる太郎の文体が、明らかに重大な理由の一つとなっているのだった。その難解を極めた衒学趣味 (ダントリー)京極夏彦等で見慣れた今日でさえも、を埋める文字の量とドイツ語のルビからくる奇異 (ふしぎ)な感覚――まるで自分が何を読んでいるのかもわからぬような感じは、いつになっても変らないのである。けれども、令和六年記事作成当初に、本項作成者をしてこの記事の点睛に竜宮を描かせたほどの綺びやかな文体は、その後分量の増えるとともに薄らいでしまった。今日では、記事も編集者も、そういう渋な文体の模倣ではなくなっているのだ。ちょうど天然の変色が、荒れ寂びれた斑を作りながら石面を蝕んでゆくように、いつとはなく、この記事を包みはじめた狭のようなものがあった。そうして、やがては記事全体を難読な長文の塊としか見せなくなったのであるが、その妖気のようなものとうのは、実をうと、記事の内部に積り重なっていった文字の数々にあったので、論あの太郎文体を模したとわれる、記事の分量ではなかったのだ。事実記事作成以来三度にわたって、怪奇な文章の連鎖を思わせる意味不明長文があり、それに加えて、本項作成者以外の文章の中に、門外不出の衒学四重奏団 ストリングカルテットを形成している四人の編集者がいて、その人達が、初版の頃から四年もの永い間、編集画面から外へは一歩も出ずにいるとったら……、そういう伝え聞きの尾にひれが附いて、それがこの記事の本体の前で、色をした蒸気の壁のように立ちはだかってしまうのだった。まったく、編集者も記事も腐朽しきっていて、それが大きな がんのような形で覗かれたのかもしれない。それであるからして、そういったニコニコ大百科重すべき記事を、編集学の見地から見たとすれば、あるいは奇妙な形をしたきのこのように見えもするだろうし、また、故人小栗虫太郎先生の神秘的な性格から推して、現在の異様な記事内容を考えると、今度は不気味クソ記事のようにも思われてくるのだった。論それ等のどの一つも、臆測が生んだ視にすぎないのであろうが、その中にただ一つだけ、今にも秘密の調和を破るものがありそうな、妙に不安定な空気のあることだけは確かだった。その悪疫のような空気は、令和某年に第二の編集事件が起った折から きざしはじめたもので、それが、十月ほど前に編集者が奇怪な自演を遂げてからというものは――後継編集者がいないのと、また一つには支柱を失ったという観念も手伝ったのであろう――いっそう大きな裂になったかのように思われてきた。そして、もし人間の心の中に悪魔が住んでいるものだとしたら、その裂の中から、残った人達を編集の底に引き摺り込んででもゆきそうな――思いもつかぬ自壊作用が起りそうな怖れを、世の人達はしだいに濃く感じはじめてきた。けれども、予測に反して、小栗虫太郎の記事の掲示板には沼気ほどの泡一つ立たなかったのだが、恐らくそれとうのも、その瘴気 しょうきのような空気が、未だ飽和点に達しなかったからであろうか。否、その時すでに掲示板では、静穏な記事とは反対に、暗の地下流に注ぐ大きな瀑布が始まっていたのだ。そして、その間に積していったものが、突如凄じく吹きしくと化して、編集者の一人一人に編集権を停めてゆこうとした。しかも、その事件には驚くべき深さと神秘とがあって、ニコニコ大百科はそれがために、狡智きわまるサイバー攻撃以外にも、すでにニコニコ世界から去っている人々とも闘わねばならなかったのである。ところで、記事の開幕に当って、編集者は自身の手許に集められている、死館についての驚くべき調資料のことを記さねばならない。それは、中世楽器福音書写本、それに古代時計に関する太郎の偏奇な趣味が端緒となったものであるが、その――恐らく外部からは手を尽し得る限りと思われる集成には、読者が思わず嘆を発し、然となったのも理ではなかった。しかも、その痩身的な努力をみても、すでに太郎自身が、底の とどろきを傾けていた一人だったことは、明らかであると思う。


小栗虫太郎おぐり むしたろう)とは、日本小説家

日本探偵小説三大奇書のひとつ、黒死館殺人事件作者として知られる。

概要

1901年3月14日東京生まれ。中学校卒業後、数年の会社勤めを経て、1922年に亡遺産を元手に印刷所を設立。その頃から特に発表のあてもないまま探偵小説を書き始める。1926年に印刷所が閉鎖になってからは、董類を売って食いつないだ。

1933年、甲賀三郎推薦を得て「犯罪」を雑誌「新青年」に持ち込む。折しも横溝正史結核で予定していた原稿が書けなくなったため、その代理原稿として同作が「新青年7月号に掲載され作家デビュー舞台が外日本人が全く登場しないという内容やその文体から、翻訳だと誤解されたり、大家の変名だと思われたりしたそうな。

1934年、『黒死館殺人事件』を「新青年4月号から12月号に連載。1935年新潮社から単行本化された。1936年には第4回直木賞補になっている(具体的にどの作品で補になったのかは不明だが、「二十世紀鉄仮面」ではないかと推定されている)。

その後、戦時体制下で探偵小説への締め付けが厳しくなったこともあり、『人外』などの秘冒険小説が作品の中心となる。1941年には陸軍報道班員としてマレーに赴任したが、軍国主義には迎合することなく、ヒトラー嫌いでも有名であった。

終戦後、長編『悪霊』の執筆に取りかかったが、その矢先に45歳で急死。死因については長らくメチルアルコールと言われていたが、遺族によれば溢血だったとのこと。横溝小栗の急死を受けて、「犯罪」での埋めの礼として『悪霊』が連載される予定だった雑誌「ロック」に『蝶々殺人事件』を連載している。

後はしばらく、『黒死館殺人事件』の難解さが探偵小説マニアの間で語りとなる程度で世間的には忘れられた作家になっていたが、1968年社が戦前の伝奇小説の再評価を論んだ「大ロマン復活シリーズの1冊として『人外』を刊行。これ以降、網羅的な作品集が刊行されるなど再評価が進み、『黒死館殺人事件』が『ドグラ・マグラ』『虚無への供物』とともに「三大奇書」と規定されたこともあって、戦前探偵小説を代表する作家ひとりとしての知名度を獲得するに至っている。

作風など

本記事冒頭の長文は『黒死館殺人事件』の書き出し部分の改変であるが、難読漢字とルビを駆使した渋極まる文体で、探偵小説としては現実には到底実行不可能トンデモトリックを繰り出し、いったいどこから集したのかわからない膨大な知識(相当量のウソ知識を含む)に基づいた衒学趣味読者を煙に巻くその作は、生前から賛否両論の極みにあった。たとえばこれは坂口安吾の評。

その次に、日本探偵小説は衒学すぎるところがある。ヴァンダインの悪かと思うが、死んだ小栗虫太郎氏などゝなると、探偵小説本来の素材貧困で、それを衒学でごまかす、こういう衒学は知性のあべこべのもので、実際は文化貧困を表明しているものなのである。世間一般にあることだが、独学者に限って語学の知識をひけらかしたがるが、語学などは全然学問でも知識でもなく、語学を通して読まれたテキストの内容だけが学問なのだが、一般に探偵小説界は、まだ知識の語学時代に見うけられる。

――坂口安吾推理小説について」

かしこの特異な文体と作が熱な支持者を生んだのもまた事実で、戦地に『黒死館殺人事件』1冊を持ち込んだ兵士もいたとか。60年代末からの再評価も、澁澤龍彦などの支持者の力によるところが大きい。実際、この文体だからこそあのトンデモトリックの数々を「そうはならんやろ」ではなく「そうかな……そうかも……」と受け入れられるような気もする。読み通すのも難儀な作ではあるが、日本ミステリー史を学ぶ上では避けて通れない作家であることも間違いない。
ちなみに全作品がこんな作というわけではなく、探偵小説以外では易な文体で書かれた作品もある。

入門には『黒死館殺人事件』に「犯罪」など短編4編を併録した創元推理文庫の『日本探偵小説全集6 小栗虫太郎集』あたりがオススメ。もうちょっと普通に面白い人外』あたりでも可。青空文庫で作品の一部(『黒死館殺人事件』を含む)が開されているので、そちらで試し読みしてみるのもいいだろう。

関連動画

関連リンク

関連項目

この記事を編集する
関連記事

親記事

子記事

  • なし

兄弟記事

掲示板

おすすめトレンド

ニコニ広告で宣伝された記事

記事と一緒に動画もおすすめ!
小春六花[単語]

提供: NoirAuslese

もっと見る

急上昇ワード改

最終更新:2025/01/09(木) 08:00

ほめられた記事

最終更新:2025/01/09(木) 07:00

ウォッチリストに追加しました!

すでにウォッチリストに
入っています。

OK

追加に失敗しました。

OK

追加にはログインが必要です。

           

ほめた!

すでにほめています。

すでにほめています。

ほめるを取消しました。

OK

ほめるに失敗しました。

OK

ほめるの取消しに失敗しました。

OK

ほめるにはログインが必要です。

タグ編集にはログインが必要です。

タグ編集には利用規約の同意が必要です。

TOP