東野圭吾(ひがしの けいご)とは、日本の小説家。主にミステリー小説で活動する。
概要
1958年大阪生まれ。子供の頃はとにかく読書が大嫌いだったが、高校生の頃に小峰元『アルキメデスは手を汚さない』を読んで推理小説にのめり込み、自分でも小説を書き始めるようになる。
デビュー作は1985年の江戸川乱歩賞受賞作『放課後』。それ以前にも二度乱歩賞に応募し、受賞の前年には『魔球』で最終候補になっている(のちに『魔球』も出版された)。
デビューからしばらくはあまり売れず「地味な実力派」みたいなポジションだったが、1998年の『秘密』で日本推理作家協会賞を受賞し、この作品を契機に一気にブレイク。2007年に『探偵ガリレオ』がドラマ化、さらに翌年『容疑者Xの献身』が映画化されるに至って売り上げは爆発的に伸び、現在では多くの作品が累計で100万部を超える、日本を代表する大ベストセラー作家の一人になっている。2023年には著作が100冊に達し、その累計発行部数が1億部を突破した。
賞(とくに直木賞)とは縁遠く、さまざまな賞の候補作に上がっては落ち上がっては落ちしていたため、推協賞を獲るまでは「無冠の帝王」的扱いを受けていた。2005年に『容疑者Xの献身』でついに直木賞を受賞したが、五度に渡って落とされ続けたのは、選考委員のひとりである渡辺淳一に嫌われていた(しかも非常にどうでもいい私怨で)せいであるというのが専らの噂。『容疑者Xの献身』はのちに英訳版がエドガー賞最終候補にもなった(桐野夏生『OUT』以来、日本人作家では史上2人目)。
2012年には『ナミヤ雑貨店の奇跡』で中央公論文芸賞を、2013年には『夢幻花』で柴田錬三郎賞を、2014年には『祈りの幕が下りる時』で吉川英治文学賞を受賞した。
作風
多作な作家で、これまで出版した小説は90冊を越える(さらにそのほかにエッセイがある)ので、ともすると本屋の棚の一つの段がまるまる東野圭吾で埋まっていたりする。現在も非常にコンスタントに作品を発表し続けており、インタビューによると、常にネタを考えて常時2,3個はストックをしているとか。
そうした作品のほとんどがノンシリーズで、シリーズものは探偵ガリレオシリーズ、加賀恭一郎シリーズなど少数だが、近年はシリーズものの刊行数がやや増えている。ジャンルも多彩で、一冊ごとに作風が違うと言ってもいいかも知れない。しいていえば、初期は本格ミステリ的な謎解きを中心とする作品が中心だったが、ブレイク後は社会派ミステリ的な重いテーマの作品が多い。また全体の特徴として三人称視点の小説がかなりを占める。
また、作家デビュー前はエンジニアをしていたため、ガリレオシリーズのように理系知識を活かした作品が多い。『パラレルワールド・ラブストーリー』『時生』などSF的な要素を中心に据えた作品は数多くあり、中には『パラドックス13』のようにほぼ完全にSFと言っていい作品もある。
その膨大な作品から代表作を挙げるとすれば、『容疑者Xの献身』『白夜行』『秘密』『手紙』『どちらかが彼女を殺した』『名探偵の掟』『時生』『新参者』などなど。ドラマ化・映画化された作品も数多い。
ちなみに直木賞を獲ったあたりから、著書の文庫に文庫解説をつけなくなった。また、『白夜行』のように分厚い作品でも文庫化の際に上下巻などの分冊はせず1冊本で出す方針だったようだが、2024年に出た『白鳥とコウモリ』の幻冬舎文庫版が初の上下巻での文庫化になった。
人物・その他
趣味はスノーボード。還暦を超えた現在もシーズンには原稿そっちのけで30日はゲレンデに通うというスノボ中毒者である。スノーボードにハマっていった過程はエッセイ集で読むことができ、スキー・スノーボードを題材にした小説もいくつかある。2018年からは自腹でスノーボードの国内大会「スノーボードマスターズ」(100名以上の選手がエントリーし、優勝者には200万円の賞金が出るガチ大会)を主催している。
日本だけでなく世界的にも人気があり、特に中国では「中国国内の作家は読まないけど東野圭吾は読む」という読者が大勢いると言われるほど圧倒的な人気を誇る(一番売れてるのは『ナミヤ雑貨店の奇蹟』らしい)。中国のミステリー作家たちは東野圭吾(特に『白夜行』や『容疑者Xの献身』)に影響を受けたことを公言した作品を続々と発表しているとかなんとか。
文学賞や新人賞の選考委員の類いはほとんどやっておらず、日本推理作家協会の持ち回りと思われる日本推理作家協会賞と江戸川乱歩賞を短期間務めた程度。2014年からは直木賞の選考委員に就任したが、「執筆に専念するため」「明らかに自分よりも実力があると思える方々の作品を評価するのは、難しく、気恥ずかしい」と言って2019年に僅か5年で退任した(直木賞は選考委員に任期がないので、10年以上務めるのが普通)。
ちなみに宮部みゆきと同じく、自作の電子書籍化を一切認めておらず、電子書籍では読めない作家だった。2020年4月、新型コロナウイルスによる外出自粛の状況を受けて、『容疑者Xの献身』『白夜行』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』など7作品を初めて電子書籍化したが、あくまで「特別解禁」とのことで、これ限りの可能性が高いとか。またある時期(2008年頃?)から自作の文庫に文庫解説をつけないようになった。
作品リスト
小説
◆は加賀恭一郎シリーズ、◇はガリレオシリーズ。マークは記事のある作品。
- 放課後 (1985年、講談社→1988年、講談社文庫)
- 卒業 雪月花殺人ゲーム (1986年、講談社→1989年、講談社文庫)
→ 卒業 (2009年、講談社文庫[改題]) ◆
- 白馬山荘殺人事件 (1986年、カッパ・ノベルス→1990年、光文社文庫→2020年、光文社文庫[新装版])
- 学生街の殺人 (1987年、講談社→1990年、講談社文庫)
- 11文字の殺人 (1987年、カッパ・ノベルス→1990年、光文社文庫→2020年、光文社文庫[新装版])
- 魔球 (1988年、講談社→1991年、講談社文庫)
- 香子の夢 コンパニオン殺人事件 (1988年、ノン・ノベル)
→ ウインクで乾杯 (1992年、祥伝社文庫[改題])
- 浪花少年探偵団 (1988年、講談社→1991年、講談社文庫→2011年、講談社文庫[新装版])
- 十字屋敷のピエロ (1989年、講談社ノベルス→1992年、講談社文庫→2024年、講談社文庫[新装版])
- 眠りの森 (1989年、講談社→1992年、講談社文庫) ◆
- 鳥人計画 (1989年、新潮社→1994年、新潮文庫→2003年、角川文庫)
- 殺人現場は雲の上 (1989年、ジョイ・ノベルス→1992年、光文社文庫→2020年、光文社文庫[新装版])
- ブルータスの心臓 (1989年、カッパ・ノベルス)
→ ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー (1993年、光文社文庫[改題])
→ ブルータスの心臓 (2020年、光文社文庫[再改題・新装版])
- 依頼人の娘 (1990年、ノン・ノベル)
→ 探偵倶楽部 (1994年、祥伝社文庫[改題]→2005年、角川文庫)
- 宿命 (1990年、講談社ノベルス→1993年、講談社文庫)
- 犯人のいない殺人の夜 (1990年、光文社→1994年、光文社文庫→2020年、光文社文庫[新装版])
- 仮面山荘殺人事件 (1990年、トクマノベルズ→1995年、講談社文庫→2024年、講談社文庫[新装版])
- 変身 (1991年、講談社→1993年、講談社ノベルス→1994年、講談社文庫)
- 回廊亭の殺人 (1991年、カッパ・ノベルス)
→ 回廊亭殺人事件 (1994年、光文社文庫[改題]→2020年、光文社文庫[新装版])
- 交通警察の夜 (1992年、実業之日本社)
→ 天使の耳 (1995年、講談社文庫[改題])
- ある閉ざされた雪の山荘で (1992年、講談社ノベルス→1996年、講談社文庫)
- 美しき凶器 (1992年、カッパ・ノベルス→1997年、光文社文庫→2020年、光文社文庫[新装版])
- 同級生 (1993年、祥伝社→1996年、講談社文庫)
- 分身 (1993年、集英社→1996年、集英社文庫)
- 浪花少年探偵団2 (1993年、講談社)
→ しのぶセンセにさよなら 浪花少年探偵団・独立編 (1996年、講談社文庫[改題]→2011年、講談社文庫[新装版])
- 怪しい人びと (1994年、光文社→1998年、光文社文庫→2020年、光文社文庫[新装版])
- むかし僕が死んだ家 (1994年、双葉社→1997年、講談社文庫)
- 虹を操る少年 (1994年、実業之日本社→1997年、講談社文庫)
- パラレルワールド・ラブストーリー (1995年、中央公論社→1997年、C★NOVELS→1998年、講談社文庫)
- 怪笑小説 (1995年、集英社→1998年、集英社文庫)
- 天空の蜂 (1995年、講談社→1997年、講談社ノベルス→1998年、講談社文庫→2015年、講談社[新装版])
- 名探偵の掟 (1996年、講談社→1998年、講談社ノベルス→1999年、講談社文庫)
- どちらかが彼女を殺した (1996年、講談社ノベルス→1999年、講談社文庫→2023年、講談社文庫[新装版]) ◆
- 毒笑小説 (1996年、集英社→1999年、集英社文庫)
- 悪意 (1996年、双葉社→2000年、講談社ノベルス→2001年、講談社文庫) ◆
- 名探偵の呪縛 (1996年、講談社文庫)
- 探偵ガリレオ (1998年、文藝春秋→2002年、文春文庫) ◇
- 秘密 (1998年、文藝春秋→2001年、文春文庫)
- 私が彼を殺した (1999年、講談社ノベルス→2002年、講談社文庫→2023年、講談社文庫[新装版]) ◆
- 白夜行 (1999年、集英社→2002年、集英社文庫)
- 嘘をもうひとつだけ (2000年、講談社→2003年、講談社文庫) ◆
- 予知夢 (2000年、文藝春秋→2003年、文春文庫) ◇
- 片想い (2001年、文藝春秋→2004年、文春文庫)
- 超・殺人事件 推理作家の苦悩 (2001年、新潮社→2004年、新潮文庫→2020年、角川文庫)
- レイクサイド (2002年、実業之日本社→2006年、文春文庫)
- トキオ (2002年、講談社)
→ 時生 (2005年、講談社文庫[改題]→2021年、講談社文庫[新装版])
- ゲームの名は誘拐 (2002年、光文社→2005年、光文社文庫)
- 手紙 (2003年、毎日新聞社→2006年、文春文庫)
- おれは非情勤 (2003年、集英社文庫)
- 殺人の門 (2003年、角川書店→2006年、角川文庫)
- 幻夜 (2004年、集英社→2007年、集英社文庫)
- さまよう刃 (2004年、朝日新聞社→2008年、角川文庫)
- 黒笑小説 (2005年、集英社→2008年、集英社文庫)
- 容疑者Xの献身 (2005年、文藝春秋→2008年、文春文庫) ◇
- 赤い指 (2006年、講談社→2009年、講談社文庫) ◆
- 使命と魂のリミット (2006年、新潮社→2010年、角川文庫)
- 夜明けの街で (2007年、角川書店→2010年、角川文庫)
- ダイイング・アイ (2007年、光文社→2011年、光文社文庫)
- 流星の絆 (2008年、講談社→2011年、講談社文庫)
- ガリレオの苦悩 (2008年、文藝春秋→2011年、文春文庫) ◇
- 聖女の救済 (2008年、文藝春秋→2012年、文春文庫) ◇
- パラドックス13 (2009年、毎日新聞社→2014年、講談社文庫)
- 新参者 (2009年、講談社→2013年、講談社文庫) ◆
- カッコウの卵は誰のもの (2010年、光文社→2013年、光文社文庫)
- プラチナデータ (2010年、幻冬舎→2012年、幻冬舎文庫)
- 白銀ジャック (2010年、実業之日本社文庫→2011年、実業之日本社[愛蔵版]→2023年、実業之日本社文庫[新装版])
- あの頃の誰か (2011年、光文社文庫)
- 麒麟の翼 (2011年、講談社→2014年、講談社文庫) ◆
- 真夏の方程式 (2011年、文藝春秋→2013年、文春文庫) ◇
- マスカレード・ホテル (2011年、集英社→2014年、集英社文庫)
- 歪笑小説 (2012年、集英社文庫)
- ナミヤ雑貨店の奇蹟 (2012年、角川書店→2014年、角川文庫→2017年、角川つばさ文庫)
- 虚像の道化師 ガリレオ7 (2012年、文藝春秋) ◇
→ 虚像の道化師 (2015年、文春文庫[1])
- 禁断の魔術 ガリレオ8 (2012年、文藝春秋) ◇
→ 禁断の魔術 (2015年、文春文庫[2])
- 夢幻花 (2013年、PHP研究所→2016年、PHP文芸文庫)
- 祈りの幕が下りる時 (2013年、講談社→2016年、講談社文庫) ◆
- 疾風ロンド (2013年、実業之日本社文庫→2020年、実業之日本社ジュニア文庫→2023年、実業之日本社文庫[新装版])
- 虚ろな十字架 (2014年、光文社→2017年、光文社文庫)
- マスカレード・イブ (2014年、集英社文庫)
- ラプラスの魔女 (2015年、KADOKAWA→2018年、角川文庫)
- 人魚の眠る家 (2015年、幻冬舎→2018年、幻冬舎文庫)
- 危険なビーナス (2016年、講談社→2019年、講談社文庫)
- 恋のゴンドラ (2016年、実業之日本社→2019年、実業之日本社文庫)
- 雪煙チェイス (2016年、実業之日本社文庫→2023年、実業之日本社文庫[新装版])
- 素敵な日本人 (2017年、光文社→2020年、光文社文庫)
- マスカレード・ナイト (2017年、集英社→2020年、集英社文庫)
- 魔力の胎動 (2018年、KADOKAWA→2021年、角川文庫)
- 沈黙のパレード (2018年、文藝春秋→2021年、文春文庫) ◇
- 希望の糸 (2019年、講談社→2022年、講談社文庫) ◆
- クスノキの番人 (2020年、実業之日本社→2023年、実業之日本社文庫)
- ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 (2020年、光文社→2023年、光文社文庫)
- 白鳥とコウモリ (2021年、幻冬舎→2024年、幻冬舎文庫[上下巻])
- 透明な螺旋 (2021年、文藝春秋→2024年、文春文庫) ◇
- マスカレード・ゲーム (2022年、集英社)
- 魔女と過ごした七日間 (2023年、KADOKAWA)
- あなたが誰かを殺した (2023年、講談社) ◆
- ブラック・ショーマンと覚醒する女たち (2024年、光文社)
- クスノキの女神 (2024年、実業之日本社)
- 架空犯 (2024年、幻冬舎)
エッセイ
- あの頃ぼくらはアホでした (1995年、集英社→1998年、集英社文庫)
- ちゃれんじ? (2004年、実業之日本社→2007年、角川文庫)
- さいえんす? (2005年、角川文庫)
- 夢はトリノをかけめぐる (2006年、光文社→2009年、光文社文庫) - トリノオリンピックの観戦記
- たぶん最後の御挨拶 (2007年、文藝春秋)
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
脚注
- *単行本の4編に、単行本版『禁断の魔術』から「透視す」「曲球る」「念波る」の3編も加えた7編を収録したオリジナル編集
- *単行本で短編だった「猛射つ」を大幅加筆して長編化したバージョン