薄い金色というような独特な色合いの、滑らかな姿態をした川魚。この美しさからか「鮎子」とか女の子の名前に使われる事もあるが、元々鮎という字はナマズを指した。それが日本ではヒゲの連想から、鮎になった経歴がある。
鮭と同じように川で生まれ、海に下り、育ったら川を遡って産卵する。ちなみに一年魚である。
小さい内はプランクトンや虫なんかを食べているが、川を遡る頃には石なんかにこびりついた苔類なんかを食べるようになる。この苔が良いのか、アユからは果物みたいな香りがするのである。メロン、スイカ、きゅうりとかそんな感じの青っぽい匂いであるので、嫌う人もいる。ちなみに、川が綺麗なところのアユはより良い香りがする(雨が降らずに苔が腐ったり、水がにごると香りが悪くなる)。アユが大量遡上するシーズンには川全体でアユの香りがする。
大体5月くらいから川を遡り始める。川に行くと岩や石に削ったような後が見られるようになるが、これが所謂「アユの食み跡である」。橋の上なんかから見ていると、苔を食べるために石に身体を擦り付ける際、アユが翻ってぴかっと光るわけだが、これが多くなるとなんかフラッシュを焚いたみたいにそこらじゅうがピカピカしだす。
そうなると、アユ釣り師のおっちゃんたちはもうソワソワ。竿を出して磨いたり、ウエットスーツを干したりと準備に余念がなくなる。釣具屋の配置がアユ物一色に塗り換わるのも風物詩。
その頃、川にのこのこ現れると殺気立った漁協のおっちゃんたちを見る事が出来る。バス竿なんか持って歩こうものなら怒鳴りつけられかねない。なんとなれば、漁協にとってアユは特別。毎年毎年大量放流して、釣り師や投網師から漁業券代を徴収し、簗で獲って観光客や市場に出荷して、漁師(漁協)の生活を支えてくれる神聖なお魚なんである。つーか、内水面漁協なんてほとんどアユで食ってる。おっちゃんたちは密猟や川を荒らす行為を監視し、カワウをおっぱらい、アユの無事な成育と遡上を祈るのである。
6月辺りになると、アユ釣りの解禁が始まる。熱心な人になるとテントを張って深夜販売ならぬ深夜解禁を待つアキバのゲーマー顔負けのおっちゃんもいる(内水面の夜釣りは禁止)。
普通、アユは友釣りといって、アユが縄張りを主張するお魚である事を利用する釣りで釣る。糸の先におとりアユをセット。この周りに掛針を流し、おとりをアユの縄張りに送り込む。するとアユは怒って「何しとんじゃぁ!われ!!」と、おとりアユに体当たりをかましてくる。すると掛針にアユが掛ってしまう。まぁ、考えた人天才じゃね?という釣法である。この友釣りを始めたのは和歌山県の日置川であるとされている。
言葉にすれば簡単だが、これが難しく、アユのいる場所を見極め、おとりアユを自然に、しかもすばやく縄張りエリアに侵入させるのには技術がいる。ついでに言うと、アユの竿は大体10m前後と長く、取り回しが難しい。結構な激流に立ちこんで釣ることも多く、なかなかハードな釣りである。
川の両側に所狭しと鮎師が立って物凄く長い竿を並べている姿は夏の風物詩だが、近年は鮎師の数が減ってしまって少し寂しくなっている。その原因は簡単に言えば昔ほど釣れなくなったからで、これはアユの遡上が減っている事。更に放流鮎に冷水病という皮膚病みたいなのが蔓延して大量に死んでしまう事。更に少なくなったアユどもが仲良く苔を分け合うようになって、縄張りを作らないようになった事などが原因だという。
そもそも鮎釣りは用具が高く(竿なんて安くても10万円近い)川の良いポジに進入するには四駆がいるなど、始めるのにハードルが高い釣りなんである。魚券もアユのは特別で、ひときわ高い。
でも、やってみれば奥が深くて面白いので、釣りが好きなんならやってみれば良い。
鮎釣りの楽しみの一つは、アユがおいしい魚だと言う事。川魚特有の泥臭さがなく、淡白な上品な味で大変おいしい。苔しか食べない時期のワタはほろ苦くて美味い。塩焼きが基本だが、てんぷらやフライなんかにしてもいける。川魚だからナマはNG。ただ、小さい魚なんで食い出が無い。大きいのは大味でおいしくないし。また、大量に釣れる事もあるので毎週食っていると流石に飽きる。その時は冷凍してお中元お歳暮にしたり、正月に食ったりする。
料亭とかで提供されるアユはほとんどが養殖ものであり、天然ものはなかなか手に入らない。放流物も多い。遡上物は味がピュアで本当に一味違い、味わいたければ天然鮎の産地に行くか自分で釣るなどの手間を惜しまない必要がある。
最近は日本の河川の水質が良くなって、多摩川なんかでも獲れるようになっている。ただ、それこそ無差別に放流しているせいで、川ごとのアユの特色が無くなってしまったという話もあり、環境水準を測るために鮎を放流する場合も多い。
ちなみに、ブラックバスのアングラーとは敵対していると思われるが、アユは流水域を好む魚に対し、ブラックバスは止水域を好む淡水魚(それでダム湖に多い)であり、厳密には棲息エリアが異なっている。ブラックバスは鮎を捕食するのが目の敵にされている理由だが、そもそも鮎は養殖が比較的簡単なので、稚魚放流だけでも一河川あたり数万~数十万匹という世界であり、釣られる鮎より海や川で捕食、瀬切れによって干からびる鮎の方が圧倒的に多い。
関連記事にもあるようにドラガン・ストイコビッチは鮎、とりわけ塩焼きが大好物で、名古屋グランパスの練習場がある飛騨古川でいつも鮎解禁シーズンを心待ちにしていたという(自分で釣ったりはしなかった)。また頑張って流れに逆流する鮎を見習えと選手らを鼓舞したこともある。
掲示板
33 ななしのよっしん
2023/11/03(金) 20:42:27 ID: O5wXrjplMZ
カニや料亭で食ったら数万円する魚が毎年数回は食卓に並ぶ港町に住んでるけどアユは全く食ったことがないなぁ
そんなにうまいんだろうか?
34 ななしのよっしん
2023/11/03(金) 20:49:14 ID: pvbkLnDv2R
東北道のSAで串焼きを食ったけど、油気がない淡白な白身魚の塩焼き、頭から全部食えるのは珍しいかな、以上の感想ではなかった
なんか超うまそうなイメージで食うと、うんまあこんなもんか、てなると思う
まあSAで1000円くらいだったし、超いい店で食えばまた違うのかね
35 ななしのよっしん
2024/11/16(土) 18:10:13 ID: d/Ho0hx6Bo
この記事見て初めて知ったんだが、海から川を遡ってきた鮎に縄張り意識なんてないやろ…ぜったいウソだ
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最終更新:2024/12/23(月) 10:00
最終更新:2024/12/23(月) 09:00
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