ふてほどとは、以下を指す言葉である。
TBSテレビの金曜ドラマ枠にて2024年1月26日から同年3月29日まで放映されたテレビドラマ『不適切にもほどがある!』の公式略称。タイトルの読み「ふてきせつにもほどがある」から4文字を抜き出したものである。
自然発生した略称というより、同番組の公式Xアカウントから放映開始約一か月前の2023年12月27日に投稿された投稿により番組公式ハッシュタグとして告知されたものである。特にドラマ放映期間中などに、番組の感想などを投稿する際のハッシュタグや略称として機能していた。
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https://twitter.com/futeki_tbs/status/1739935007953867080
この言葉が注目されたのは、2024年12月2日に発表された「現代用語の基礎知識選 2024ユーキャン新語・流行語大賞」から。大谷翔平がシーズン50本塁打&50盗塁を達成したことで使用された「50-50」や、MVのダンスも話題になったCreepy Nutsの人気楽曲「Bling-Bang-Bang-Born」、その他「裏金問題」「新紙幣」など、今年話題になった単語が多く挙げられた。しかしそれらを押しのけて大賞になったのがこの「ふてほど」である。しかし、これを耳にした者からは「何それ」「聞いたことない」という声が相次ぐ。参考までに、以下のニコニコ生放送のタイムシフト再生を見てみよう。
再生時間43:05にてこの「ふてほど」がベスト10に入ったことが発表されているが、大量の「?」コメントが流れている。他には「は?」「なにそれ」「知りません」「初耳」「はじめてききました」「聞いたことないんだけど」「え?」といった、この言葉を認知していない視聴者のコメントが並ぶ。(勿論「サダヲくる!?」などといった、『不適切にもほどがある!』を知っていたと思しき人からのコメントも少数ながら皆無ではなかったが。)
授賞式に参加した主演の阿部サダヲ氏も「正直『ふてほど』と自分たちでは言ったことないんですけど一度も」とコメントしており、キャストもこの略称を口に出すほどには親しんでいなかった模様。
「ふてほど」を年間大賞として選出したことについての文章は以下の通り。
大手自動車メーカーの認証不正、パーティー券収入の収支報告書不記載など、2024年は不適切事案が目白押しであった。
一方、昨今強化されているのがコンプライアンス。企業は顧客・株主への社会的責任はもちろん、従業員一人ひとりにもハラスメントだ、働き方改革だと配慮が求められる。
集団優先、滅私奉公で経済成長時代を生きた昭和世代にとってはまさにタイムスリップしたかのような激変である。
この、昭和の時代に置いて行かれた感を笑い飛ばしてくれたのが金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』。昭和の主人公が令和の社会で堂々と昭和のルール、人の道の原理原則を貫いて令和のルールに疑問符を投げかけながらも、対話することで物事を解決していく道を探る。時代がいつであれ、不適切なことは不適切なのだと教えてくれる。
10月に行われた衆議院選挙、自民党の選挙公約が「ルールを守る」。国権の最高機関で法律を制定するセンセイ方の公約がこれ。
不適切にもほどがありませんか?
この選評全体414文字中、ドラマ自体に触れている「この、昭和の時代に」から「教えてくれる」までの文章は154文字と、半分に満たない。残りの「世相批判」的な部分の方が多い。なお、世相批判のために選ばれたと思しき流行語大賞は今年が初ではない。2014年大賞の「ダメよ〜ダメダメ」がそれで、こちらは454文字中、多く見積もってもそのものに触れた部分は約60文字しかなく、それも説明と言えるのかも怪しいものである(参考)。
この「ふてほど」が大賞に選出されたのは選考委員らの満場一致ではあったらしい。[1]発表の際に選考委員の一人であるやくみつる氏は、この言葉は「新語・流行語大賞とは逆説的な親和性がある」と語った。[2]
上記の通り、このユーキャン新語・流行語大賞はニコニコ生放送でも生中継をしていた。
そして、そのニコニコ生放送(上掲のタイムシフト放送では、再生時間43:27)にて投稿されたコメントが「不適切報道?」であった。発表されて二十数秒足らずのうちであるので、批判や皮肉として書かれたのではなく、本当に「ふてほど」が『不適切にもほどがある!』の略であることを知らなかった視聴者が、自分なりの推測を素で書いたのではないかと思われる。
上記投稿のようにこのコメントがX(Twitter)で紹介され話題になり、妙に納得する者が続出。そして「ふてほど」をオールドメディアの偏向報道を揶揄する「不適切報道」の略語として定着させようと、ネット民が大拡散。翌日には「ふてほど」と「不適切報道」がトレンド入りする事態となり、名実共に今年の流行語になってしまうのであった……。
そのせいでネットの書き込みを参照して学習するAIが汚染されてしまい「ふてほどは何の略?」という質問に『「ふてほど」は「不適切報道」の略称です。』と答えてしまうようになってしまった、という報告まであがっていた。
なお、『不適切にもほどがある!』という作品の名誉のために記すと、このドラマの評判がひどく悪かったなどということは決してない。むしろ2024年1月開始のドラマの中では視聴率ランキングでは上位の方であったし、視聴者からの反応も良かった。
例えばこの時期のドラマについて扱った記事では、以下のように評されている。
回を追うごとに視聴率が右肩下がりとなるドラマも多かった中、『不適切にもほどがある!』は「面白い!」との口コミが広がったせいもあってか、第5話と第6話で自己最高となる8.3%まで上昇。最終回も7.9%と健闘した。
【2024年冬ドラマ視聴率ランキング】『さよならマエストロ』独走、ワースト1位のラブストーリーは?(2024/04/01 19:00)|サイゾーウーマン
大ヒット「ふてほど」は4位
期待以上だった「冬ドラマ」第4位は、『不適切にもほどがある!』だ。
視聴率、TVerのお気に入り数ともに民放1位を記録し、大きな話題となっているが、ヒットメーカーの宮藤官九郎が脚本とあって、元々の注目度が高かったこともあり4位に。
また、動画配信サービス「U-NEXT」でも同ドラマは配信されているが、視聴したユーザーが付ける評価点は星5点の満点が付いている(2024年12月5日現在)。
だが「聞いたことが無い」という反応が多かったところからすると、「ドラマ自体を観たことが無い多くの人にまで、話題になっていることが漏れ聞こえる」というわけではなかったということかもしれない。また「このドラマは知っていたがこの略称は聞いたことがなかった」という声も挙がっていた。
「ユーキャン新語・流行語大賞」が「ふてほど」を年間大賞に選んだことには様々な意見が出るだろうが、この選出に際してそのドラマの関係者に何か非があったわけでもない。あまり「ふてほど=不適切報道の略」といった方向性でいじり続けると、ドラマ関係者やドラマのファンの気持ちを傷つける可能性があるかもしれない。
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最終更新:2024/12/22(日) 02:00
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