小林泰三 単語

6件

コバヤシヤスミ

3.0千文字の記事
  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • LINE

小林泰三こばやし やすみ)とは、日本小説家である。1962年生まれ、2020年

名前読みは「たいぞう」ではない。本屋ではたまに間違った棚に置かれている。また、全く同じ字で「たいぞう」と読む、『日本宝、最初はこんな色だった』などの著作がある美術史学者がいるが、もちろん別人。

概要

1962年京都生まれ。1995年、短編「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞しデビュー。元々奥さんが応募をし書こうとしていたが、書けないのでアンタが書けと応募締切の数日前に言われ、ぱっと書き上げ応募したらしい(本人談)。ちなみに本業は三洋電機研究者。

作品は短編集が中心で、長編はあまり多くない。SFホラークトゥルーミステリー、はては恋愛まで幅広いジャンルを書き分けるが、得意なジャンルSFホラーSFの設定を利用してホラーを、SFを利用してミステリーを、などジャンルを越えた設定もお手のもの。SF界隈ではデビュー当初から高い評価を得ており、野尻抱介譲治とともにハードSFの新たな旗手としてNHKトリオと呼ばれていた(らしい)。ミステリ方面でも『密室・殺人』『アリス殺し』などで高く評価されている。

デビュー作の『玩具修理者』や代表作の『ΑΩ』など、ホラー系の作品ではじゅるじゅるとした汁気の多い描写が立つ。また光文社文庫の書き下ろし作品などでは、やたらと極端な方向に突き進む人間たちを描くエスカレーションブラックコメディをよく書いており、とにかく絶望的に噛み合わない会話を書かせたら当代随一。

ホラー系は趣味と性格と底意地と読後感の悪い(褒め言葉)話が多いので、初めて彼の小説を読む人は、『を見る人』や『体の回転について』、『と地』などのSFから手を出すのもいいだろう(内容自体は結構ガチハードSFで、そっちも悪趣味な作品は入っているが)。

ホラー大丈夫という人は、『玩具修理者』『人細工』『に棲むもの』『工場』などで、じゅるじゅるとした描写とその裏にり巡らされた物語を存分に堪すべし。ミステリー好きの人は『アリス殺し』か『密室・殺人』、『殺人鬼にまつわる備忘録』あたりから読むのがオススメだが、ミステリーを書いてもやっぱりおよそマトモではないので(『密室・殺人』はプロ評論家・書評の間でも人によってオチの解釈がまるで違ったとか)、非常に邪悪なミステリーを読む覚悟をしてどうぞ。

1998年に短篇「を見る人」でSFマガジン読者賞を、2012年に『と地』で、2017年に『ウルトラマンF』で星雲賞日本長編部門を受賞している。また2012年には『大きなの小さな密室』がなぜか10万部ほどのヒットになった。現在は『アリス殺し』に始まる〈メルヘン殺し〉シリーズ世界翻訳されており、最大のヒット作になっているらしい。

2020年11月23日に、で闘病中であったところ、大阪府内の病院で死去した。[1]58歳。同年も4冊の新刊を出しており、闘病中という情報になっていなかったため、突然の若すぎる訃報は各方面に衝撃を与えた。訃報表した友の田中啓文Twitterでのやりとりによると、に体調不良を覚えてからあっという間の急死だったという。後、日本SF大賞功績賞が贈られ、SFマガジン2021年4月号では追悼特集が組まれた。

作品リスト

  1. 玩具修理1996年角川書店1999年角川ホラー文庫
  2. 細工1997年角川書店1999年角川ホラー文庫2023年角川ホラー文庫[改版])
  3. 密室・殺人1998年角川書店2001年角川ホラー文庫2014年、創元推理文庫
  4. 食屋敷1998年角川書店2000年角川ホラー文庫2023年角川ホラー文庫[改版])
  5. 奇憶 (2000年祥伝社文庫
    → 忌憶2007年角川ホラー文庫[書き下ろし2編追加・改題])
  6. ΑΩ2001年角川書店
    → ΑΩ 超想科学怪奇譚2004年角川ホラー文庫[改題]→2023年角川ホラー文庫[改版])
  7. を見る人2002年ハヤカワSFシリーズJコレクション2005年ハヤカワ文庫JA
  8. に棲むもの2003年角川ホラー文庫2024年角川ホラー文庫[改版])
  9. 擦る2003年ハヤカワ文庫JA
    → らしのいい密室2013年ハヤカワ文庫JA[収録作変更・改題])
  10. ネフィリム 吸血幻想2004年角川書店2007年角川ホラー文庫
  11. 工場2006年角川ホラー文庫
  12. モザイク事件帳 (2008年東京創元社
    → 大きなの小さな密室2011年、創元推理文庫[改題])
  13. 体の回転について2008年ハヤカワSFシリーズJコレクション2010年ハヤカワ文庫JA
  14. 臓物大展覧会2009年角川ホラー文庫
  15. セピア色の凄惨2010年光文社文庫
  16. 人造救世主シリーズ
    1. 人造救世主2010年角川ホラー文庫
    2. 人造救世主 ギニー・ピッグス2011年角川ホラー文庫
    3. 人造救世主 アドルフ・ローン2011年角川ホラー文庫
  17. 全・犯罪 (2010年、京創元社→2012年、創元推理文庫)
  18. と地2011年ハヤカワ文庫JA
  19. 惨劇アルバム2012年光文社文庫
  20. アリス殺し2013年東京創元社2019年、創元推理文庫
  21. 百舌鳥先生アトリエ2014年角川ホラー文庫
  22. 幸せスイッチ2015年光文社文庫
  23. 記憶破断者2015年幻冬舎
    → 殺人鬼にまつわる備忘録2018年幻冬舎文庫[改題])
  24. 世界2015年日経文芸文庫
  25. 安楽探偵2016年光文社文庫
  26. 失われた過去未来犯罪2016年KADOKAWA2019年角川文庫
  27. クララ殺し2016年東京創元社2020年、創元推理文庫
  28. ウルトラマンF2016年早川書房2018年ハヤカワ文庫JA
  29. 因業探偵礼都の事件簿2017年光文社文庫
  30. わざわざゾンビを殺す人間なんていない。2017年一迅社2021年二見ホラー×ミステリ文庫
  31. ドロシイ殺し2018年東京創元社2021年、創元推理文庫
  32. パラレルワールド2018年角川春樹事務所2019年ハル文庫
  33. 因業探偵リターンズ 新礼都の冒険2018年光文社文庫
  34. からの呼び2018年、創土社)
  35. 人外サーカス2018年KADOKAWA2021年角川ホラー文庫
  36. の都 京都四神異譚録2019年新潮文庫nex
  37. 代表取締役アイドル2020年文藝春秋2022年、文文庫
  38. の失敗 名作万華鏡 芥川龍之介2020年光文社文庫
  39. ティンカーベル殺し2020年東京創元社2022年、創元推理文庫
  40. 未来からの脱出2020年KADOKAWA2022年角川ホラー文庫
  41. 逡巡の二十と悔恨の二十年2021年角川ホラー文庫) - 未収録短編集
  42. 争奪 小林泰三SF傑作2024年、創元SF文庫
  43. 五人告白 小林泰三ミステリ傑作2024年、創元推理文庫

関連項目

脚注

  1. *作家・小林泰三先生ご逝去のお知らせexit
この記事を編集する
関連記事

親記事

子記事

  • なし

兄弟記事

掲示板

おすすめトレンド

ニコニ広告で宣伝された記事

記事と一緒に動画もおすすめ!
もっと見る

急上昇ワード改

最終更新:2024/12/23(月) 10:00

ほめられた記事

最終更新:2024/12/23(月) 10:00

ウォッチリストに追加しました!

すでにウォッチリストに
入っています。

OK

追加に失敗しました。

OK

追加にはログインが必要です。

           

ほめた!

すでにほめています。

すでにほめています。

ほめるを取消しました。

OK

ほめるに失敗しました。

OK

ほめるの取消しに失敗しました。

OK

ほめるにはログインが必要です。

タグ編集にはログインが必要です。

タグ編集には利用規約の同意が必要です。

TOP