「想像できないことを想像する」
という言葉をぼくは思い浮かべる。一時期、この言葉につかれるようになり、その実現に夢中になっていたことがある――。
SFだったら、それが可能なのではないか?
だめだろうか?
山田正紀(やまだ まさき)とは、日本のSF作家、ミステリ作家である。
同人誌「宇宙塵」への参加を経て、1974年、早川書房のS-Fマガジン4月号に「神狩り」が300枚一挙掲載されて衝撃のデビューを飾る。翌年、同作で第6回星雲賞日本短編部門を受賞。
以降、ハイペースで本格SFの力作を発表していき、星新一・小松左京・筒井康隆ら「第一世代」に次ぐ日本SF「第二世代」の筆頭作家としての地位を確かなものとしていく。1978年『地球・精神分析記録』で、1980年『宝石泥棒』でそれぞれ星雲賞日本長編部門を受賞。1982年、『最後の敵』で第3回日本SF大賞を受賞。
その一方、初期から『崑崙遊撃隊』『謀殺のチェス・ゲーム』『火神を盗め』といった冒険小説も並行して発表、後の80年代の冒険小説ブームの先鞭を付けた作家でもある。1977年には『火神を盗め』で第78回直木賞候補となったが、「面白すぎる」という理由(?)で落選した。
1980年代以降は『神獣聖戦』『闇の太守』『機械獣ヴァイブ』『妖虫戦線』『機神兵団』などのシリーズものをいくつも手掛けつつ(そして未完での中断も多く残しつつ)、1988年の『人喰いの時代』以降は探偵小説(本格ミステリ)にも進出。探偵小説デビューの時期から、新本格作家のひとりに数える向きもある。
ミステリ方面では『ブラックスワン』や『女囮捜査官』シリーズなどが一部では評価されていたものの、SF作家の余技と見なされたり、当時のノベルスブームに合わせた造本などで軽視されていた節もあった。1997年の大作『妖鳥』からミステリ界でも注目が高まり、2002年、『ミステリ・オペラ 宿命城殺人事件』で第2回本格ミステリ大賞と第55回日本推理作家協会賞をダブル受賞。ミステリ作家としての地位も確かなものとした。
21世紀になってからは、80~90年代に未完で中断していたシリーズを全面改稿して完結させたり、押井守の映画『イノセンス』のノベライズを書いたり、山田風太郎『甲賀忍法帖』の――正確にはそのコミカライズ『バジリスク~甲賀忍法帖~』の続編『桜花忍法帖 バジリスク新章』を書いてアニメ化されて前作のファンの大不評を買ってしまったりしつつ、現在に至るまでSFを中心にバリバリ活躍中。
SF・冒険小説・ミステリの他にも、ホラー、サスペンス、伝奇、アクションなどさまざまなジャンルの作品がある。短編「銀の弾丸」は(高木彬光『邪教の神』に次ぐ)日本で2番目のクトゥルー小説らしい。
SF作家としては、デビュー作『神狩り』から現在に至るまで、宗教・哲学・言語学・文学・歴史学などの文系学問の知識をSF的なアイデアと融合させて壮大なイマジネーションを展開する作品を最も得意とし、「文系本格SF」というジャンルの第一人者である。
記事冒頭に引用した〝抱負〟にある「想像できないことを想像する」という言葉は、そのまま山田SFの目指すものを端的に示した言葉と言ってよく、破綻を恐れずに想像力の限界に挑むような壮大なアイデアを展開する作風は〝豪腕〟という言葉が似合う。
その膨大な作品の中から誰もが認める代表作を選ぶなら、SFでは『神狩り』『宝石泥棒』、冒険小説では『崑崙遊撃隊』『火神を盗め』、ミステリでは『人喰いの時代』『ミステリ・オペラ』になるだろうか。誰もが知っているようなベストセラー作家ではないため、現在は新品では入手できない作品が多い。ちょくちょく再刊もされるが、今から読むなら一部の作品以外は基本は古書で探すつもりで構えた方がいいだろう。
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最終更新:2024/12/23(月) 10:00
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