三津田信三(みつだ しんぞう)とは、日本の推理作家、ホラー作家である。
同朋舎での編集者業を経て(同朋舎での同僚に作家の柴田よしきがいる)、2001年に三津田信三自身が語り手となるメタフィクションホラー『ホラー作家の棲む家』で講談社ノベルスから作家デビュー。
2006年に刊行した刀城言耶シリーズの第1作『厭魅の如き憑くもの』が本格ミステリプロパーの間で高い評価を集め、それ以降はコンスタントに作品を発表、特に刀城言耶シリーズはミステリ界隈で新刊が出るごとに話題になり、各種ランキングの上位常連になっている。2010年、『水魑の如き沈むもの』で第10回本格ミステリ大賞を受賞。2016年には『のぞきめ』が映画化された。「本格ミステリ・ベスト10 2017年版」の企画《本格ミステリベスト・オブ・ベスト1997-2016》では『首無の如き祟るもの』が1位に選出されている。
本格ミステリとホラーを融合させた作風がその最大の特徴。代表作である刀城言耶シリーズは、戦後すぐの時代、田舎の閉鎖的な共同体を舞台に、おどろおどろしい伝承を背景にした連続殺人が起こる――と書けばまるっきり横溝正史だが、三津田信三作品では合理的に説明のつく本格ミステリ的な謎と、合理的に説明のつかない怪異が平然と共存し、怪異と思われた現象が合理的に解決されることもあれば、合理的に謎を解いた先に得体の知れない怪異が姿を現すということもある。すなわち、最後まで読まないと本格ミステリとして落ちるのかホラーとして落ちるのか解らないというのが刀城言耶シリーズの最大の特徴。また探偵役である刀城言耶の、次々と推理を提示してはそれを自ら否定していくという、名探偵らしからぬ七転八倒のひとり多重解決も読みどころ。本人曰く、あまり細かいことを決めずに書きながら真相を考えているらしい。
刀城言耶シリーズ以外の作品は基本的にはホラー寄りだが、長編の多くは大なり小なりホラーの中にもミステリ的な謎解きや仕掛けが含まれる。死相学探偵シリーズはややライトなミステリ寄りでホラー色は他に比べると薄め。作家三部作はのちの刀城言耶シリーズに通じる本格ミステリ×ホラーのホラー寄りで、非常に怖い。ノンシリーズの短編集は、作者自身が語り手になる実話怪談風の作品が中心(作家三部作とは関係ないようだ)。
初めて読む人は、刀城言耶シリーズから入り、作家三部作に戻るというルートが無難だろう。それ以外の作品はお好みで。刀城言耶シリーズの厚さに尻込みする人は、ライトで読みやすい死相学探偵や、『赫眼』『ついてくるもの』あたりの短篇集で様子を見るのもいいだろう。少なくとも『シェルター』や『スラッシャー』から入るのはオススメしない。あと作家三部作は刊行順に、少なくとも『蛇棺葬』と『百蛇堂』は2冊でセットなので必ず順番通りに読もう。
怪奇小説やホラー映画への深い造詣は作品にもしばしば反映され、作中でマニアックなホラー談義が繰り広げられることも少なくない。奈良県杏羅(あんら)町や神々櫛(かがぐし)村などの地名や、一部の登場人物などの固有名詞がシリーズをまたいで登場し、またある作品内の事件がさりげなく別の作品でも言及されるといった作品間のリンクも多く、ほぼ全作品が同一の世界観の中にあるのも特徴。奈良→杏羅(NARA→ANRA)、武蔵小金井→武蔵名護池(KOGANEI→NAGOIKE)のように、登場する架空の地名は現実の地名のアナグラムであることが多いので、元ネタを推測してみるのもいいかもしれない。
▶もっと見る
掲示板
急上昇ワード改
最終更新:2024/12/23(月) 10:00
最終更新:2024/12/23(月) 10:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。