道尾秀介とは (ミチオシュウスケとは) [単語記事]

道尾秀介（みちおしゅうすけ）とは、日本の小説家。主にミステリーを書いている。

概要

1975年生まれ。玉川大学農学部卒。ペンネームの「道尾」は敬愛する都筑道夫から。「秀介」は本名。

2004年、第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞した『背の眼』でデビュー。第2作『向日葵の咲かない夏』がその内容から賛否両論を巻き起こす。2009年には文庫版がなぜか100万部を超えるベストセラーになった。

2006年の第4作『シャドウ』が本格ミステリ大賞を受賞、「このミス」で3位にランクイン。以降、年2～4冊のペースで作品を発表し人気作家になる。2009年『カラスの親指』で日本推理作家協会賞受賞、2010年には『龍神の雨』で大藪春彦賞、『光媒の花』で山本周五郎賞を受賞。

直木賞は第140回に『カラスの親指』で候補入りしてから、『鬼の跫音』『球体の蛇』『光媒の花』『月と蟹』で戦後初の5期連続候補入りという記録を作り、5回目の『月と蟹』で受賞した。吉川英治文学新人賞（『カラスの親指』と『龍神の雨』で候補入りしたが落選）を除けば、ミステリー系の作家がデビューから直木賞までの間に獲れる賞はほぼ獲っている。

初期は二重三重のミスリードを駆使してどんでん返しを仕込んだミステリーに定評があり、「小説でなければ書けないものを書きたい」と本人も言っていたが、『球体の蛇』以降はそういったトリックやサプライズを排除した一般文芸寄りの作品が多くなった。そしてミステリ業界での注目度はかなり下がってしまった。
本文の終わりにある写真を読み解く連作の『いけない』以降はまたトリッキーな趣向の作品が増えており、全6編の短編を読む順番で読後感が変わる『N』、本文中のQRコードから聞ける音が真相に絡む『きこえる』など、なんかちょっと清涼院流水的な発想で小説の読み方のバリエーションを拡張するような試みをしている。
『向日葵の咲かない夏』『シャドウ』『龍神の雨』『月と蟹』など、小学生ぐらいの少年が語り手となる作品が多いのも特徴。その作品の傾向ゆえか、人気のわりに作品が映像化されないが、2012年には『背の眼』がBS日テレで単発ドラマ化、『カラスの親指』が映画化された。

シリーズものはデビュー作の『背の眼』に登場した真備庄介が探偵役を務めるシリーズ（他に『骸の爪』『花と流れ星』）ぐらいで、他の作品は個々に独立しているが、初期作品では「ミチオ」という名前の人物が立場を変えて作中によく登場する。

一時期、『片眼の猿』『ソロモンの犬』『ラットマン』『カラスの親指』『鬼の跫音』『龍神の雨』と十二支がタイトルに含まれる作品が続き（猿→「申」、犬→「戌」、ラット→「子」、カラス→「酉」、鬼→「丑寅（鬼門）」、龍→「辰」）、『球体の蛇』（巳）も含めてファンの間では「十二支シリーズ」と呼ばれているが、作者いわくそういうタイトルが続いたのは偶然で、特に狙ったわけではないとのことである。

初めて読む人には長編なら『カラスの親指』、短編集なら『鬼の跫音』あたりをオススメしたい。変な作品が好きな人はいきなり『向日葵の咲かない夏』からでも可。非ミステリーなら『光媒の花』『月と蟹』あたりからどうぞ。

作品リスト

	タイトル	単行本	文庫	シリーズ	備考
1	背の眼	幻冬舎（2004年）	幻冬舎文庫（2007年、上下巻）	真備	第5回ホラーサスペンス大賞特別賞漫画化・ドラマ化
2	向日葵の咲かない夏	新潮社（2005年）	新潮文庫（2008年）		第6回本格ミステリ大賞候補このミス（2007）17位本格ミステリベスト10（2007）9位
3	骸の爪	幻冬舎（2006年）	幻冬舎文庫（2009年）	真備	本格ミステリベスト10（2007）7位
4	シャドウ	東京創元社（2006年）	創元推理文庫（2009年）		第7回本格ミステリ大賞受賞このミス（2007）3位週刊文春ベスト10（2006）10位本格ミステリベスト10（2007）6位
5	片眼の猿	新潮社（2007年）	新潮文庫（2009年）	(十二支)	このミス（2008）19位本格ミステリベスト10（2008）20位ミステリが読みたい！（2008）13位
6	ソロモンの犬	文藝春秋（2007年）	文春文庫（2010年）	(十二支)	玄侑宗久『竹林精舎』は本作の続編 (原作者公認の二次創作) 本格ミステリベスト10（2008）13位
7	ラットマン	光文社（2008年）	光文社文庫（2010年）	(十二支)	第21回山本周五郎賞候補このミス（2009）10位週刊文春ベスト10（2008）4位本格ミステリベスト10（2009）2位ミステリが読みたい！（2009）5位
8	カラスの親指 by rule of CROW’s thumb	講談社（2008年）	講談社文庫（2011年）	(十二支)	第62回日本推理作家協会賞受賞第140回直木賞候補第30回吉川英治文学新人賞候補このミス（2009）6位週刊文春ベスト10（2008）10位本格ミステリベスト10（2009）16位ミステリが読みたい！（2009）4位映画化
9	鬼の跫音	角川書店（2009年）	角川文庫（2011年）	(十二支)	短編集第141回直木賞候補第22回山本周五郎賞候補このミス（2010）15位ミステリが読みたい！（2010）8位
10	龍神の雨	新潮社（2009年）	新潮文庫（2012年）	(十二支)	第12回大藪春彦賞受賞第31回吉川英治文学新人賞候補このミス（2010）9位週刊文春ベスト10（2009）8位本格ミステリベスト10（2010）14位
11	花と流れ星	幻冬舎（2009年）	幻冬舎文庫（2012年）	真備	短編集「流れ星のつくり方」が第59回日本推理作家協会賞短編部門候補
12	球体の蛇	角川書店（2009年）	角川文庫（2012年）	(十二支)	第142回直木賞候補
13	光媒の花	集英社（2010年）	集英社文庫（2012年）	花	連作短編集第23回山本周五郎賞受賞第143回直木賞候補週刊文春ベスト10（2010）16位ミステリが読みたい！（2011）15位
14	プロムナード	ポプラ社（2010年）	ポプラ文庫（2013年）文春文庫（2014年）		エッセイ
15	月の恋人～Moon Lovers～	新潮社（2010年）	新潮文庫（2013年）		同名テレビドラマの原作として書かれた作品
16	月と蟹	文藝春秋（2010年）	文春文庫（2013年）		第144回直木賞受賞
17	カササギたちの四季	光文社（2011年）	光文社文庫（2014年）		連作短編集ミステリが読みたい！（2012）18位
18	水の柩	講談社（2011年）	講談社文庫（2014年）
19	光	光文社（2012年）	光文社文庫（2015年）		連作短編集
20	ノエル -a story of stories-	新潮社（2012年）	新潮文庫（2015年）		連作短編集
21	笑うハーレキン	中央公論新社（2013年）	中公文庫（2016年）
22	鏡の花	集英社（2013年）	集英社文庫（2016年）	花	連作短編集
23	貘の檻	新潮社（2014年）	新潮文庫（2016年）		このミス（2015）11位週刊文春ベスト10（2014）17位本格ミステリベスト10（2015）18位ミステリが読みたい！（2015）19位
24	透明カメレオン	KADOKAWA （2015年）	角川文庫（2018年）
25	スタフ	文藝春秋（2016年）	文春文庫（2019年）		ミステリが読みたい！（2017）14位
26	サーモン・キャッチャー the Novel	光文社（2016年）	光文社文庫（2022年）		ケラリーノ・サンドロヴィッチとのコラボレーション企画
27	満月の泥枕	毎日新聞出版（2017年）	光文社文庫（2020年）
28	風神の手	朝日新聞出版（2018年）	朝日文庫（2021年）
29	スケルトン・キー	KADOKAWA （2018年）	角川文庫（2021年）		このミス（2019）13位ミステリが読みたい！（2019）19位
30	いけない	文藝春秋（2019年）	文春文庫（2022年）		連作中編集週刊文春ベスト10（2019）6位ミステリが読みたい！（2020）7位
31	カエルの小指 a murder of crows	講談社（2019年）	講談社文庫（2022年）
32	雷神	新潮社（2021年）	新潮文庫（2024年）		このミス（2022）10位週刊文春ベスト10（2021）13位ミステリが読みたい！（2022）14位
33	N	集英社（2021年）			連作短編集全6編を好きな順番で読める趣向このミス（2023）20位
34	いけないⅡ	文藝春秋（2022年）			連作中編集週刊文春ベスト10（2022）20位本格ミステリベスト10（2023）20位
35	フォトミステリー	ワニブックス（2023年）			ショートショート集
36	きこえる	講談社（2023年）			短編集本文中のQRコードで音を聞く趣向