■ Jリーグのレフェリー今シーズンのJリーグは、接触プレーが起こっても、プレーを流すことが多くなっている。これは数年前から取り組んできたことであるが、特に、今シーズンは、流す傾向が顕著になっている。接触プレーで自分たちの選手が倒されて、笛が鳴らなかったとき、レフェリーにブーイングが浴びせられることもあるが、「ノーマルなコンタクトだった。」というケースも多い。サポーターも意識を変える必要があるだろう。
Jリーグの試合だけを観ていると、傾向に気が付きにくいが、日本代表の試合や海外リーグの試合やACLの試合を並行して観ていると、Jリーグの笛の特徴というのも分かってくる。「海外」といっても様々で、各国や各リーグで違っていて、さらには、レフェリーによっても基準が異なるので、簡単には比較できないが、Jリーグの基準が欧州リーグの基準に近づきつつあるのは、間違いないところである。
誤解されやすいのは、ACLのレフェリングである。「Jリーグのレフェリーは簡単に笛を吹くが、ACLはそうではない。」と言う人もいるが、これは誤りで、ACLの方が簡単に接触プレーで笛が吹かれるので、注意が必要である。露骨にシミュレーションをしてくる選手もいて、過去に、日本のチームも泣かされてきている。アジアのステージのレフェリングというのは、他とは違った独特なものがある。
■ レフェリーを評価する土壌ときおり、Jリーグの創生期の試合をフルで視聴することがあるが、荒れる試合が多くて、「あれっ!?」と思う頻度が高い。イエローカードが乱発される試合が多くて、レフェリーによって試合が壊される試合もある。ここ最近は、西村レフェリーを筆頭にして、国際舞台でも評価を受けるレフェリーが増えているが、日本人レフェリーの技術というのは、20年前と比べると、確実に上がってきていると言えるだろう。
そんな中で、1つ残念に感じるのは、レフェリーを評価する土壌が出来あがっていないことで、取り上げられるのは、重大なミスを犯したときだけである。もちろん、これはレフェリーという職業の宿命と言えるが、酷いときになると、正しいジャッジを下しているにもかかわらず、「自分たちのチームに不利な判定を下した。」という理由でサポーターや選手が責められることがある。
微妙なジャッジに対して、「大きな声を出してレフェリーにプレッシャーをかける。」というのも、1つの手段であり、ホームチームも持つ特権の1つと言えるが、「何でもかんでもブーイングを浴びせる。」というスタジアムが多いと感じる。最近では、ビッグスワンとベアスタを訪問して、どちらも試合中の雰囲気は良かったが、レフェリーに対する反応に関しては、「成熟している。」という域には達していなかった。
■ 味方に引き込む雰囲気作りサッカーでも、バスケットでも、「いいディフェンスとファールは紙一重」と言われるが、レフェリーのジャッジについても同じことが言えると思う。彼らはスペシャリストなので、一般人では見抜けないようなシーンを正しくジャッジすることに快感を覚えていると思うが、会心のジャッジを下したときにブーイングの声が上がってくると、がっかりすると想像できる。
全く責任や立場は異なるが、たまに草野球の審判を任されるときがあって、「どう考えてもアウト。」というシーンにも関わらず、「セーフ」と強く主張してくる人もいる。こういうケースでは、「この人はあまり野球のことを分かっていない。」と感じるだけで、クレームを付けられても、プレッシャーに感じることはない。むしろ、逆効果である。
単なる草野球の審判でも、そういう気持ちになるので、Jリーグの試合で笛を吹くようなレフェリーは、もっとその気持ちが強いと思う。若いレフェリーになると、そこまでの余裕はないかもしれないが、ベテランのレフェリーになると、スタジアムの反応を楽しみながら試合をコントロールしていると思うが、成熟したスタジアムとそうでないスタジアムでは、レフェリーに与える印象も違ってくると考えられる。
もちろん、レフェリーは冷静にジャッジを下さなければならないが、人間なので、常に冷徹にジャッジを下すのは無理である。長いシーズンを戦う中で、判定に救われることもあるし、判定に泣かされることもあって、終わってみると、その割合は「五分五分」に近づくと思うが、雰囲気作りの上手なところは味方される確率が少しだけ高くなって、うまくないところはその確率が少し低くなるのではないかと考える。
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