■ ベンチ枠の数 J2の試合を観ていて、気になるのは、アウェー戦になると、ベンチ枠を埋めきれていないチームがいくつかあることである。J1も、J2も、7人までベンチ入りが認められていて、試合中に3人まで選手交代を行うことができる。J1では、枠を余らせているケースはほとんど無いが、J2になるとベンチ入りメンバーが「5人」であったり、「6人」であるケースが少なくない。(※ J2では2010年からベンチ枠が「5」から「7」に拡大された。それまでは「5枠」だった。)
「5枠」であるか、「7枠」であるか、違いは大きい。ほとんど全てのケースで、控えのキーパーは1人だけなので、「5枠」になると、フィールドプレーヤーは4人となる。そうなると、怪我等のことを考えて、いろいろなポジションができるユーティリティーな選手が重宝されるので、交代の選択肢は限られてくる。しかしながら、「7枠」であれば、いろいろなタイプをベンチに置くことができるので、交代のバリエーションは広がっていく。
拮抗した試合になった場合、ベンチに誰がいて、どのタイミングで、誰を入れてくるのか、監督の心の中を推理しながら試合を観ることもサッカー観戦の楽しみ方の1つと言える。なので、「5枠」→「7枠」の変更というのは、賢明な判断であり、ベンチ枠が増えたことで、若手選手(特に、攻撃的なポジションの選手)のモチベーションアップにつながったと思うが、先のとおり、活用できていないチームもいくつかある。
■ 5チームはフル活用しないことがほとんど 33節を終えた段階で、J2の各チームの試合ごとの「ベンチスタートになった選手の人数」をカウントしてみると、表1のようになった。ホーム戦で「7枠」を埋められなかったのは、27節の鳥取(vs 熊本)だけで、残りはすべてアウェー戦となるが、長崎と札幌と愛媛FCと熊本と群馬の5チームはフル活用しないのが当たり前になっている。特に、群馬の場合は「5名」がほとんどで、水戸戦や栃木SC戦など関東圏の試合でも、5名しかベンチに入っていないので、徹底している。
もちろん、この中には、遠征先で怪我人が発生して、代わりの選手を呼ぶ時間的な余裕が無かったケースもあると思う。また、怪我人が続出して、動ける選手がいなくなって、どうしようもないケースもあると思うし、チームを引き締めるために、敢えて上限まで使わなかったケースもあると思う。したがって、他にも理由はいくつか考えられるが、大部分は金銭的な問題で、「旅費と宿泊費を節約するため」というのが、ほとんどだと思う。
表1. ベンチスタートになった選手の人数 (33節終了時点) ・・・ 通常は7人
順位 | | 4人 | 5人 | 6人 | 上限に達しなかった試合数 |
1 | ガンバ大阪 | | | | 0 |
2 | ヴィッセル神戸 | | | | 0 |
3 | 徳島ヴォルティス | | | 1 | 1 |
4 | V・ファーレン長崎 | | | 11 | 11 |
5 | ジェフユナイテッド千葉 | | | | 0 |
6 | 京都サンガF.C. | | | | 0 |
7 | 松本山雅FC | | | | 0 |
8 | コンサドーレ札幌 | | 5 | 8 | 13 |
9 | ファジアーノ岡山 | | | | 0 |
10 | モンテディオ山形 | | | | 0 |
11 | 東京ヴェルディ | | | | 0 |
12 | 水戸ホーリーホック | | | | 0 |
13 | アビスパ福岡 | | | | 0 |
14 | 栃木SC | | | | 0 |
15 | 横浜FC | | | | 0 |
16 | 愛媛FC | | | 12 | 12 |
17 | ギラヴァンツ北九州 | | | | 0 |
18 | カターレ富山 | | | 2 | 2 |
19 | ロアッソ熊本 | | | 13 | 13 |
20 | ザスパクサツ群馬 | 1 | 11 | 2 | 14 |
21 | ガイナーレ鳥取 | | 1 | 3 | 4 |
22 | FC岐阜 | | | 2 | 2 |
■ 節約のためというのは適当か?シーズン開幕前に、J2に降格して収入ダウンが予想される札幌が「遠征に帯同する選手やコーチを減らして、さらには、ユニフォームやスパイクなども選手が運ぶなどの策を講じて、年間600万円を節約する。」という話がマスコミで報道された。J2の場合、アウェー戦は年間で21試合あるので、単純に計算すると、1人あたり10万円程度で、1試合では30万程度を節約できることになる。
これについては、「涙ぐましい努力をしている。」とも言える。長崎や札幌や愛媛FCや熊本や群馬の方針を支持する人もいると思うが、個人的には、お金を節約することが主目的で、アウェー戦のベンチ枠を余らせることは、良くないことだと思う。怪我人が発生するなど、どうしようもないケースは仕方がないが、このやり方をデフォルトにするのは、J2の多くのクラブが資金難で苦しんでいることを踏まえても、違和感を感じる。
もちろん、ベンチメンバーの「5人と7人」や「6人と7人」の違いが、どの程度、試合に影響を与えるのかに関しては、推測することしかできないが、普通に考えると、交代の選択肢が狭まって、アウェー戦で勝ち点を得る確率は減少する。節約という要素以外では、プラスに考えられることはほとんど無くて、少なくとも、試合の中では、上限まで使っていないことがプラスに作用することは全く無い。
仮に、「節約できる金額が年間6,000万円」というのであれば、『しょうがないかなあ・・・。』という気もするが、もっとも移動が大変で、お金がかかると思われる札幌でも、1試合あたりで30万の節約にしかならないのが、現状である。勝ち点を得る確率を自ら下げてまでやるべきことなのかというとかなり疑問で、さらには、ベンチに入れる可能性が低くなるので、他クラブから選手を勧誘するときも、不利に働くのではないかと思う。
当然、無駄な部分や削ることができる部分については、積極的に節減に努めるべきだと思うが、「旅費や宿泊費を節約するためにベンチ枠をいっぱいまで使わない。」というのは、結果を出すことが何よりも求められるプロの世界では、手を付けてはいけない領域だと思うし、こういったことがいくつかのクラブで当たり前のように行われていることに対しては、大きな違和感を感じる。
上限まで枠を使っていたら、もっと勝ち点を伸ばせたかどうかは、誰にも分からないが、その一方で、アウェー戦に帯同する人数を減らしたならば、明確に数字として、どれだけ節約できたか、示すことができる。なので、こういう方針で動いているのだと思うが、個人的には、これらのクラブは、数字上では節約できているように見えるが、実際には、かなり損をしているように思えてならない。賢明なアイディアとは思えない。
関連エントリー 2013/05/17
J2の舞台で活躍する選手たち 2013/07/03
U-20選抜チームのJ3参戦について感じること 2013/08/05
ベトナム代表のFWレ・コン・ビンへの期待 2013/08/17
CBの逸材・岩波拓也はブラジルW杯に間に合うか? 2013/08/26
日本人でもっともポストプレーが上手な選手は誰か?について考える。 2013/08/28
現役の日本人選手で最高のファンタジスタは誰か? 2013/09/01
退屈な試合が目立つ真夏のJリーグ 2013/09/15
サポーターは、なぜ、2ステージ制に反対するのか?
- 関連記事
-