■ シドニー五輪以来スペインとモロッコに勝利して、2連勝でグループリーグ突破を決めた関塚ジャパン。3戦目のホンジュラス戦で、引き分け以上の結果を得ると、GLを首位で通過できる。2004年のアテネと五輪2008年の北京五輪はグループリーグ敗退に終わっているので、2000年のシドニー五輪以来のベスト8進出となった。
シドニーのときは、2年後に自国開催のW杯を控えており、W杯のアジア予選が免除されたので、トルシエ監督は若手を積極的にフル代表に抜てきした。したがって、U-23といっても、オーバーエイジのGK楢崎、DF森岡、MF三浦淳を加えると、ほとんどフル代表のようなメンバーで、「メダル獲得」が期待されたが、準々決勝でアメリカにPK戦で敗れて、ベスト4を逃した。
■ 低かった評価一方で、12年ぶりの決勝トーナメント進出を果たした関塚ジャパンの前評判は非常に低かった。注目を集めたのは、むしろ、世界チャンピオンの「なでしこジャパン」の方で、関塚ジャパンは、おまけのような扱いとなることが多かった。
確かに、2011年のW杯を制して、世界ランキングでも3位の「なでしこジャパン」と比べると、メダルの可能性が低いのは、間違いないところであるが、酷評されるほど、ひどいチームではなかった。そのため、世間との評価のズレに違和感を感じたサッカーファンは多かったと思う。
なでしこジャパンを持ち上げるために、関塚ジャパンを下げることにしたのか、スペインやモロッコやホンジュラスの試合を観て「力が劣る。」という評価を下したのか、取り上げやすいメディアスターがいなかったことが理由なのか、はっきりとは分からないが、とにかく、大会前の関塚ジャパンや関塚監督に対する評価は、正当ではなかったと思う。
■ 過剰なまでの悲観論決勝トーナメント進出という結果を受けて、2010年の南アフリカW杯の岡田ジャパンと比較する向きもあるが、2010年に入ってから、ホームで韓国に連敗し、セルビアにも0対3で敗れるなど、どん底に近い状態にあった岡田ジャパンとは、状況は異なる。
また、「戦い方が大きく変わった。」というわけでもない。FW永井の走力を生かしたサッカーは、2010年のアジア大会を制したときのサッカーで、2列目はハードワークができて、かつ、テクニックのある選手を優先し、ボランチや最終ラインも「高さのある選手」を重宝するなど、ベースとなる部分はアジア大会の頃からほとんど変わっていない。
欧州王者のスペインは別として、モロッコやホンジュラスの2チームは、確実に勝てる相手ではないが、かといって、全く歯が立たない相手というわけでもない。「過剰な悲観論」は一体なんだったのか?と、今でも疑問に思うところである。
■ 否定のための否定この悲観的なムードを作った原因の一つは、サッカー解説者などの評論家と言われる人たちだと思うが、大会前に必要以上にネガティブな意見を流した人は、反省も必要だろう。もちろん、評論家というのは、「予想屋」とは異なるので、予想を外したことを糾弾される必要はないと思うが、根拠の乏しい意見が多くて、うんざりすることが多かった。
もちろん、否定的な意見を言うことは、悪いことではない。むしろ、正当な理由や裏付けがあれば、積極的に意見を言うべきであり、評論家という人たちのウデの見せどころであるが、「否定のための否定」、「結論ありきの世論誘導」は、結局、自身の評論家としての評価を下げるだけである。
また、日本には、「辛口発言」を過剰にありがたがる傾向もあるが、これも、全く意味のないことである。積極的で、建設的な議論をすることは、日本サッカーの発展につながっていくと思うが、斜めに構えた状態で、時として、本心ではないことを言わざる得ない状況が、いくつかの勘違いを生み出してきた。
とにかく、今回、見通しを大きく誤った人は、誰かのためというよりは、自分自身のために、反省が必要だと思う。ここで、「相手のコンディションが悪かった。」、「運が良かっただけ。」、「相手が本気ではなかった。」、「選手が頑張っただけ。」などなど、いつものエクスキューズに終始しては、次の2014年も、その次の2016年も、同じ失敗を繰り返すだろう。
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