物学(ものまね)が咲かせる花
イタリアのデザイナー、アキッレ・カスティリオーニは物を扱う人びとの身振りを模倣することで、その知恵を感じ取りました。
ごくまるで現代の人類学者の言葉のような95年の「学生たちへの助言」にも「人々の当たり前な身振りや慣習順応的態度、人が気にもとめないようなフォルムを批評的な目を持って観察することを」学びなさい、とあるように、世界を前に、分析し、いつでも批評的精神で物を見よ、目の前に提示された現実を鵜呑みにせず、ごくありきたりになってしまっている物のあり方をもう一度批判的に見直し、そうでない物事の在り方を探すための足掛かりにしろということなのだ。
多木陽介『アキッレ・カスティリオーニ 自由の探求としてのデザイン』
人の動きを模倣するという意味では、日本にもそうした伝統をもった芸能があります。
みなさん、何かわかりますか?
能です。能楽師は古くから伝えられる型に忠実であることを第一に考え、芝居のように演じる人物になりきって表現するということはしないそうです。能には、200番以上ある曲のひとつひとつに決まった型があり、能楽師はその型を幼少の頃から繰り返し練習して身につけていくといいます。