形の冒険 生命の形態と意識の進化を探る/ランスロット・L・ホワイト
形を思考すること。形を思考の対象にして、その形成がどのようになされるかに思考を集中させること。
この本の著者ランスロット・L・ホワイトが指摘しているのは、そのことです。
この場合の「形」とは、何も目に見える形ばかりを指しているのではありません。
目に見えにくいものも実は形を持っています。僕らはそれをつい日常見逃してしまいがちです。
でも、最近はソーシャルメディアの普及によって、「つながり」や「関係性」のような概念も普通の人が普通に捉えられるようになってきています。この概念というのも形です。
僕は「透明な形をデザインする」という表現をよく使いますが、人の動きを促すような作法やルールのような形もあります。
言葉は形ですし、思考や概念もまた形です。感情も、知識も、それぞれの形を持っています。
一方で、そうした形に対する思考がいま欠けていると感じます。
特に形を生み出すプロセスに対する思考は著しく欠けています。形を静止し固定したものとしてのみ扱い、思考や概念のような形がどのように生じてくるのか、感情や言葉という形がなぜ生まれるのかということを問わず、人の思考や感情を固定してあるもののように扱ってしまいがちです。
著者が指摘しているのもその点で、著者は結果としての「形態形成プロセス」に着目することが必要だと解きます。
基礎デザイン学を打ち立てた、向井周太郎さんは『デザインの原像―かたちの詩学2』のなかで、「形」ということばの「ち」を「いのち」や「いかづち(雷)」「をろ…