野菜の力 精進の時代/棚橋俊夫
この本は新しくライフスタイル研究会のメンバーになった方から紹介いただいた。
最近よい本との出会いが多いが、またしても、心に響く一冊である。
「生きる」ということはどういうことか、生きることと食あるいは農はどのような関係にあるのかを教えてくれ、美しく生きようという意欲を持たせてくれる。
ひとつ前に読んだ尾久彰三さんの『観じる民藝』(書評)では、美を見つめる眼差しを養うためには日々の暮らしの中でモノを真っすぐに受け止める姿勢の大切さを考えさせられたが、この本では、さらにモノを美しく見せるためには、何よりもまず日々を生きる自分自身の姿勢そのものをいかに美しく保たれるかが大事だということを思い知らされた。
まったく読んでいて、自分の生活が恥ずかしくなる本である。
例えば、“私はこれまで「座す」ということに関してまるで夢を見ているような経験を二度しています”と述べたあとに紹介されるこんなエピソード。
1つは、私の英語の先生であるイギリス人とその友人、6名で座敷に通っていただいたときのこと。淡々と1つ残さずすべての料理を綺麗に召し上がっていただいた後で、私が食後の挨拶に顔を出すと、その六畳間はまるで由緒ある寺の本堂に導かれたかのような雰囲気でした。大柄な仏たちがきちっと座って、柔和な顔をしている。よく見ると彫りの深い青い目をした外国人なのですが、時空を越えて荘厳な異空間に入り込んだ気がしたのです。
棚橋俊夫『野菜の力 精進の時代』
食の姿勢が仏のように美しく観られるような生…