■ 第4クール大阪の長居スタジアム。世界陸上2007のため、今シーズンのほとんどのホームゲームを、長居第二や地方スタジアムでこなしてきたC大阪にとっては、待望の帰還である。
C大阪は、4連勝中。今シーズン最高の5位にまで順位を上げており、3位のベガルタ仙台との勝ち点差は、「4」に迫ってきた。ムードは最高潮で、2ヵ月半ぶりに長居スタジアムに帰ってきたC大阪を、14537人のサポーターが迎えた。
大阪府には、ガンバ大阪とセレッソ大阪の2つのプロサッカーチームが存在するが、吹田市をホームとするガンバ大阪に対して、セレッソ大阪は、文字通り、大阪市をホームタウンとしている。
長居スタジアムは、大阪の中心にスタジアムを構える。だから、潜在的なサポーターの数は、ガンバと比べても、セレッソの方が多いのではないだろうかと想像できる。
地下鉄の御堂筋線に乗って、「梅田」、「心斎橋」、「なんば」、「天王寺」といった大阪の中心地を通り過ぎて、「長居」の駅に着くと、すぐそこに、長居スタジアムが出現する。大阪駅からは30分。アクセスは、抜群である。
久々の長居スタジアムで、チームも好調とあって、スタジアムは、予想以上の入りとなった。収容人数が5万人に近い長居スタジアムのような巨大スタジアムであっても、15000人の観衆が訪れると、何かと不便が生じるものである。事前に混雑が予想できていれば、もっと早く家を出たのにと後悔する。
C大阪は、右サイドバックの柳沢とCBの江添が出場停止。したがって、右サイドバックに丹羽が回って、左サイドバックにはゼ・カルロスが入る。GK吉田。DF丹羽・羽田・前田・カルロスの4バック。中盤は、ジェルマーノ・アレー・濱田・香川。小松と古橋の2トップ。五輪代表のFW森島はベンチ外。
対する愛媛FCは、<4-2-2-2>。GK佐藤。DF関根・金守・近藤・星野。中盤は、新井・宮原・大山・江後。内村とジョジマールの2トップ。
■ 小松の活躍でC大阪が勝利試合は、開始から、愛媛FCが積極的に攻めに出る。前半3分に、右サイドに流れたFW内村のクロスをFWジョジマールが中央で合わせて先制する。
出鼻をくじかれたC大阪は、愛媛FCの激しいプレッシャーを避けるために、一時的に、187cmの小松の頭に目掛けて、ロングボールを蹴ってこぼれ球を狙うスタイルに変更。これが功を奏して、愛媛FCの勢いを受け止めることに成功。反撃を開始する。
前半28分に、右サイドからFW小松のグラウンダーのクロスボールを愛媛FC金守がクリアしきれずに、オウンゴールとなって、1対1の同点に追いつく。さらに、前半34分には、DFゼ・カルロスのクロスボールを、FW小松がフリーで合わせて勝ち越しに成功する。
C大阪は、後半6分にも、左サイドから切れ込んだFW小松が角度のないエリアから強引に流し込んで3点目。後半14分にも、左サイドから仕掛けたMF香川の高速クロスをFW古橋がダイレクトで合わせて4点目を挙げる。
愛媛FCは、後半35分に、カウンターからFWジョジマールのパスを受けたFW内村が冷静に決めて1点を返すが、反撃はそれだけ。
結局、C大阪が4対2で勝利し、5連勝を飾った。
■ 覚醒するストライカー試合は、両チームとも攻守の切り替えが早く、スピーディーな好ゲームとなったが、C大阪が、自力の差を見せ付けた。
フォワードの小松塁は、2ゴール。さらには、同点に追いつく相手のオウンゴールを誘うクロスボールも上げており、計3得点に絡んだ。
小松は、187cmの長身選手にしては、稀なスピードを備えており、小松のスピードに乗ったドリブルに対して、愛媛FCのセンターバックはまったく対応できなかった。
これで今シーズンは、11ゴール。チームでは古橋と並んでトップである。22試合で11ゴールという数字は、チームのエースストライカーとなったことの証である。デカモリシと2トップを組むこともあるが、基本は、小松と古橋の2トップである。躍進を続けるデカモリシの前には、小松という大きな壁が存在する。
何故、彼がコンスタントにゴールを決められるのかを考えてみると、ゴール前でも落ち着いていることが挙げられる。昨シーズン、ヴィッセル神戸に所属したFW近藤がJ2で10得点を挙げてブレークしたが、それと同等以上の活躍を見せているといえる。日本代表入りも、視野に入れるべき素材である。
■ ジェルマーノの貢献度来日して、4試合目となったC大阪のジェルマーノは、早くもチームに適合して、中心選手になっている。
アレーが高い身体能力を武器に本能的なサッカーをするのに対して、万能型のジェルマーノは、アレーに出来ない部分をうまく補って攻守にわたって貢献度の高いプレーを見せている。アレーとジェルマーノのダブルボランチは、非常にいい関係が築けているといえるだろう。
ジェルマーノの改善すべき点としては、やや球離れが遅く、ダイレクトでつなげればチャンスになれそうな場面でもパス出しを躊躇するシーンが多いことであるが、チームメートに対する理解度が進んでいけば、彼ほどの能力があれば、すぐに解決できる問題だろう。切羽詰った段階で獲得したジェルマーノだったが、ジェルマーノが、J1へのラストピースになるかもしれない。いい選手を手に入れた。
■ ゼ・カルロスの使い方C大阪は、柳沢と江添が出場停止。したがって、本来は左サイドバックの丹羽が右サイドバックに回って、ゼ・カルロスが、久々に先発出場。その、ゼ・カルロスのクロスから、勝ち越しのゴールが生まれた。
ゼ・カルロスの魅力は攻撃力であり、左足から繰り出されるクロスの精度は高く、ビルドアップでも貢献できる。ただ、守備に関しては、不安いっぱいで、この試合でも、愛媛FCの右サイドアタッカーの大山を自由にさせすぎた。
左の攻撃的MFには香川が入っているが、左サイドの守備が安定しないと、香川に守備の負担がかかってしまって、チームの攻撃力が著しく低下することになる。前半の25分あたりまでは、まさしくこういう状態だった。
ゼ・カルロスの並外れた攻撃力は魅力であるが、出場停止の右サイドバックの柳沢が帰ってくれば、これまでどおりに、丹羽を左サイドバックに戻して、まずは守備を安定させて戦っていくことがベターだろう。ただ、どうしても、得点が欲しい場面では、ゼ・カルロスを左サイドバックに入れれば、攻撃力が上がるということは確認できたという意味では、収穫だった。
■ キレキレの香川C大阪は、左の攻撃的MFの香川が、切れ味鋭いドリブル突破とタイミングのいいパスを見せて、小松と並んで攻撃の主役となった。シュート数は、小松に次いでチーム2位の5本。ゴールこそなかったが、まさしくキレキレの状態だった。
愛媛FCのDFが、縦を切るとドリブルで中に切れ込んで積極的にシュートを放ち、相手DF2人に挟まれると、すぐさまフリーの味方をシンプルに使って、攻撃のリズムを壊さない。ドリブラーだが、単に足元でボールを保持したがるタイプでもなく、ボールがないときは、積極的にスペースに飛び出して、スペースでボールを受けようとする。
18歳で、これだけのプレーを見せるプレーヤーは、いったい誰以来になるのだろうか?
18歳のときにJリーグベスト11に選ばれている小野伸二は別格だが、中田英寿も中村俊輔も、18歳の時点では、時折、才能の片鱗を見せるものの、コンスタントな活躍は見せられなかった。香川の継続性は、驚くばかりである。
問題は、アジアユースの一次予選が、10月末から始まることである。これまでは、セレッソ大阪での活動を優先して、U-18代表での合宿にはほとんど参加していないが、間違いなく、チームの中心選手である。「一次予選くらい、香川がいなくても大丈夫。」と言い切れればいいのだが、今のU-18代表は、U-18ウクライナ、U-18静岡、U-18アメリカ、U-18フランス、U-18ブラジル、U-18東北に対して6連敗中。かつてないほどの危機を迎えている。
10月末から11月はじめというと、J1昇格をかけて佳境の時期である。セレッソ大阪と日本サッカー協会の盛大な綱引きが行われることだろう。
■ 破綻した愛媛FCの守備陣愛媛FCは、前半の立ち上がりに先制し、最高の形で試合に入っていくことに成功したが、その後は、サイドでの攻防で香川や濱田に主導権を奪われて、失点を重ねた。
愛媛FCは、フィールド上のすべての選手がハードワークを見せる好チームで、守備の組織に関してはC大阪を上回っているが、基本となる、1対1の攻防で実力差を見せられて、1対1で守りきれなくなると、組織的な守備が破綻して、最後は、なす術がなかった。
■ ジョジマールと内村の2トップ愛媛FCは、ジョジマールと内村が初めて2トップを組んだ。スピードがあって身体能力の高いジョジマールと、セカンドストライカータイプの内村のコンビは、潜在能力も高く、この試合の2点は、ともに相方のアシストをゴールに結びつけた形であり、2トップだけで崩したゴールだった。
特に、甲府から獲得したFWジョジマールは、日に日に、成長を見せており、大化けする可能性を秘めている。
■ モリシの復帰を待っている。C大阪は、FW柿谷曜一朗、MF香川真司、FW森島康仁といった若いタレントが出現し、魅力溢れるチーム構成になっている。今シーズン終了後に、J1に昇格できるかどうかは、まだまだ見えてこないが、このチームに、明るい未来が待っていることは間違いない。
この試合では、古橋も、小松も、香川も、素晴らしかった。後半の試合内容は、非常に良かった。サポーターも満足したことだろう。しかしながら、この試合には、何かが1つ足りなかった。
それは、「モリシ」の存在である。
現在、「モリシ」は、原因不明の病気で長期離脱中。復帰の目処も立っていない。選手生命を絶たれかねない非常に苦しい状況であるといえる。予断は許さない。
でも、セレッソサポーターは、「モリシ」の帰りを信じて待っている。長居スタジアム。ここでは、「背番号8」のレプリカを着た人が、やっぱり、一番多かった。
C大阪:採点GK:吉田 6.0
→ ファインセーブあり。イージーミスもなかった。
DF:丹羽 6.0
→ 右サイドでも、そつなくプレー。
DF:羽田 5.5
→ 久々の先発。立ち上がりは混乱したが、徐々に落ち着く。
DF:前田 6.0
→ 落ち着いた対応。セットプレーでも的になった。
DF:ゼ・カルロス 5.5
→ 高精度のクロスでアシスト。守備は、不安定。
MF:ジェルマーノ 6.5
→ 広範囲に動いて、ボールを受けて展開した。
MF:アレー 6.0
→ 彼が中盤でボールを拾い出すと、セレッソペースになる。
MF:濱田 5.5
→ 中盤でバランスをとった。
MF:香川 7.0
→ 積極的に仕掛けた。ドリブル突破から、ポストに当てたミドルは圧巻。
FW:古橋 6.5
→ ダメ押しの1ゴール。ポストでは、強さも発揮。
FW:小松 7.5
→ 3点に絡んだエース。
サブ:酒本 6.0
→ 積極的にプレーしたが、結果が欲しかった。
サブ;苔口 5.0
→ チャンスは確実に決めないと、次のチャンスは来なくなる。
愛媛FC:採点GK:佐藤 5.0
→ ファインセーブもあったが、ポジショニングのミスもあった。
DF:関根 5.0
→ 香川とのマッチアップで苦戦し、徐々に攻撃に参加できなくなった。
DF:金守 4.5
→ 痛恨のオウンゴール。最後は、集中が切れた。
DF:近藤 4.0
→ 小松に翻弄された。
DF:星野 5.5
→ 左からの攻撃は、封じた。
MF:新井 5.0
→ 立ち上がりは勢いがあったが、徐々に消極的になった。
MF:宮原 5.5
→ リズムを変えようと奔走した。
MF:大山 6.0
→ ゼ・カルロスを翻弄したが、守備面では関根をサポートできず。
MF:江後 5.0
→ ほとんど仕事が出来なかった。
FW:ジョジマール 6.0
→ 1ゴール1アシスト。能力は高いが、チームメートとかみ合わないことも。
FW:内村 6.0
→ 鮮やかな抜け出しからゴール。
サブ:青野 5.5
→ 青野投入で、5バック気味になった。
サブ:赤井 採点なし。
→ 効果的な仕事は出来ず。
サブ:神丸 採点なし。
→ コメントなし。
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Jリーグ クラブ別大総括(4) 愛媛FC編
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