■ J1の第7節J1の第7節。2009年のJ2で3位以内に入って久々の昇格を果たした両チームのJ1での再戦。昨シーズンの対戦成績は湘南側から見て2勝1敗。第1クールはFW中村の決勝ゴールで湘南が1対0で勝利し、第2クールはC大阪のMF香川が2ゴールを挙げるも湘南が長居スタジアムで4対3の逆転勝ち。最後の第3クールはMF船山の活躍でC大阪が2対0で勝利している。
ホームのC大阪は1勝2敗3分け。第6節は横浜FMと対戦して0対0の引き分け。システムは<4-2-3-1>。GKキム・ジンヒョン。DF高橋、茂庭、上本、尾亦。MF羽田、アマラウ、乾、家長、香川。FWアドリアーノ。横浜FM戦で負傷したMFマルチネスが欠場し、MF家長が初スタメン。MF羽田とMFアマラウのダブルボランチで、MF乾・MF家長・MF香川が2列目に並ぶ形。
対する湘南は<4-1-2-3>。GK野澤。DF臼井、阪田、村松、小澤。MF田村、寺川、坂本。FW阿部、新居、中村。第6節のジュビロ磐田戦で負傷したDFジャーンは怪我のため欠場。MFアジエルはベンチからも外れた。長身のFW田原とFW中山はベンチスタートとなって、FW阿部・FW新居・FW中村の小型3トップ。DFジャーンの代役でスタメン出場のDF阪田は古巣との対決となった。
■ 劇的な試合試合はホームのC大阪が立ち上がりからMF家長を中心にボールをキープしチャンスを作る。前半22分には左サイドでボールを持ったFWアドリアーノがマークに付いたDF阪田を振り切ってシュートを放つがGK野澤がセーブ。先制点が遠かったC大阪だったが、前半32分に左コーナーキックを獲得。MF香川の蹴ったボールに対してゴール前で競ったDF上本がMF田村に倒され田という判定でC大阪がPKを獲得。MF香川が決めて1点を先制。1対0で前半を折り返す。
後半もC大阪ペースで進む。後半2分には左サイドを崩してMFアマラウが強烈な右足のシュートを放つが、湘南のDF阪田がゴール前でスーパークリア。それ以外でもMF乾や途中出場のFW播戸が惜しいシュートを放つが、GK野澤が再三のビッグセーブを見せて追加点を許さず。1対0のままで試合は進んでいく。
湘南は後半17分にFW中村とFW新居に代えて、FW田原とFW中山を投入。ツインタワーにボールを集めて同点を狙うと、さらに湘南は後半35分にMF寺川に代えてFW島村を投入。長身フォワードを3枚を前線に並べる布陣に変更すると、後半45分に右サイドから抜け出たFW島村が右足でシュート。これはC大阪のGKキム・ジンヒョンが防ぐが、クロスバーに直撃したこぼれ球をゴール前のFW田原が執念で押し込んでゴール。ロスタイムで湘南が1対1に追い付く。
しかし、C大阪はラストプレーでMF香川が左サイドでボールを持つと中にカットイン。湘南のディフェンスのマークが少しずれた隙に右足でミドルシュートを放つと、これがネットの左隅に突き刺さって勝ち越しゴール。MF香川は今シーズン5ゴール目。結局、これが決勝点となって2対1でC大阪が劇的な勝利。9位に浮上した。
■ 劇的なロスタイムゴール1対0とリードしていた終盤に追い付かれて、「勝ちゲーム」を取りこぼしかけたC大阪だったが、最後にMF香川が決めて2対1で劇的な勝利。今シーズン2勝目を挙げて勝ち点を「9」にまで伸ばした。「シュート数」、「決定機の数」でも湘南を大きく上回っていたC大阪だったが2点目が奪えずに苦しみ、ロスタイムにFW田原に同点ゴールを奪われるという最悪の流れだったが、MF香川の個人技が悪いムードを全て振り払った。
本当は、1対0のままで(あるいは追加点を取って2対0くらいで)確実に勝利をつかんでおかなければならなかった試合展開ではあったが、結果的には、勢いがつく試合展開になった。
C大阪は、昇格1年目ということで、まずは残留を目指して戦うことになるが、唯一、昨シーズンの順位で下に位置する湘南とのホームゲームは、絶対に勝ち点「3」が必要な試合だった。次節もホームゲームであるが上位に位置する名古屋グランパスとの対戦となる。湘南戦でドローに終わるようだとムード的にも厳しいものになっていただけに、大きなゴールとなった。
■ 初スタメンの家長C大阪はMFマルチネスが怪我のため欠場したため、MF家長が初スタメン。これまでと同じ<3-4-2-1>システムでMF家長をそのままMFマルチネスのポジションである左ボランチに入れることも十分に考えられたが、この日は<4-2-3-1>に変更。MF羽田をセンターバックからボランチに上げてMF家長を攻撃的MFで起用し、これが成功した。
これまでの試合では、ボールの供給源がMFマルチネスしかおらず、MF乾とMF香川にうまくボールが渡らない時間が長く続き、その結果、2人がボールをもらおうと下がり過ぎて1トップのFWアドリアーノが孤立する、という悪循環が生じていたが、MFマルチネス以上にキープが出来て、味方を使うことの出来るMF家長が入ってボール回しに落ち着きとスムーズさが出てきた。
ダブルボランチのMF羽田とMFアマラウのコンビはかなり守備的なボランチコンビとなるが、攻守にわたって十分なパフォーマンスを見せた。MF家長がよく動いてボールをキープしてくれるのでボール回しという面で要求される仕事の量は少なく、「守備面で確実に仕事を行えば大丈夫」という状況になったことも大きかった。ボランチのところで確実にこぼれ球を拾うことが出来たので分厚い攻撃が可能になった。
新外国人のMFアマラウはMFマルチネスと組む時は動きを制限されているかのような窮屈なプレーにとどまっていたが、相方がMF羽田に代わって持ち味の力強さを見せることも出来た。MFアマラウという選手は器用なタイプではないので継続してスタメンで起用するのであれば周囲の強力も必要となる。
■ 両サイドの選択この日、3バックから4バックに変更になったのは「相手の湘南が3トップだったから」というのが1つの理由のようで、次節に対戦する名古屋グランパスも3トップで湘南と全く同じ<4-1-2-3>なので、次節も同じシステムになることが予想される。
開幕から前線の3枚が孤立して厚みのある攻撃が出来ていなかったC大阪は、両サイドのバックアッパーとしてMF酒本、MF石神という選択肢も所持しているが、とりあえずとして開幕からMF高橋、MF尾亦で固定している。クルピ監督の固定メンバー化は賛否両論であるが、この日はDF高橋もDF尾亦もなかなかのパフォーマンスを見せた。特に湘南の左サイドからクロスに対して絞った時のDF高橋の守備が安定していて、パワープレーに出てきたときにしっかりとDF高橋がクロスを跳ね返すことが出来ていた。
攻撃のときに前に向かう意欲という意味ではDF酒本の方が上であるが、守備力を含めたトータルバランスでは今のところはDF高橋がDF酒本を上回っていると言える。本来、DF高橋はサイドを突破してクロスを上げるというタイプではなく、ゴール前に進出してゴールを奪う力のある得点能力のある選手であるが、C大阪ではその持ち味が発揮出来ていない。が、この日は左サイドからのMF香川のクロスにヘディングで合わせるシーンもあって、徐々にチームにフィットしている。
一方のDF尾亦は本職といえる左サイドバックでプレーし落ち着いたプレーを見せていた。3バックで左ウイングというポジションでプレーするとその消極性がマイナスに働くが、4バックの左サイドバックとして考えるとその慎重さやバランス感覚の良さがプラスに働くことになる。
前半にイエローを受けていたこともあって、後半16分にDF石神と交代。攻撃面でアピールしたかったDF石神が前に出過ぎて同点ゴールのきっかけとなるFW島村の突破を許すなど守備での安定感を欠いたので、現状ではどちらも決め手に欠ける印象が残る。DF石神の前に出る強さや左足のゴールに直結するプレーをクルピ監督がうまく生かせれば面白くなるが・・・。
■ 香川真司の劇的な決勝ゴール最後に劇的な勝ち越しゴールを決めたMF香川。ドローに終わっていれば負けに等しいドローとなっただけに、シーズンをトータルで考えても非常に重要なゴールを奪って見せた。この日はPKも合わせて2ゴール。これで7試合を終えて5ゴールと得点ランキングでもトップを走っていたガンバ大阪のFW平井に並んだ。
ただ、まだまだ調子は上がっていない。水曜日にナビスコカップの新潟戦が行われたという過密日程の影響もあったのか、この日の前半は特にコンディションが悪そうでキレもなかった。が、試合が進むにつれてパフォーマンスが上がっていった。ラストパスの精度が不足するシーンや判断ミスでボールを失うシーンもあって、もう一歩という感じもするが、ともかくJ1でも順調に結果が出ている。
最終メンバー発表までアピールの機会はJリーグの試合しかないが、岡田監督が無視できないくらいの結果を残していければ、逆転メンバー入りも十分にあり得る。
■ ゴールが生まれていない乾貴士一方でMF乾は、ここまでのリーグ戦でゴールなし。チャンスシーンは何度か訪れているが、シュートが枠を外れることが多く、7節を終えてJ1での初ゴールは生まれていない。昨シーズンは、調子が悪くても、結果が出なくてもスタメンを外れることはなかったが、今シーズンはMF家長、FW播戸、MF清武というライバルが加入し、MF乾といえどもポジションは安泰ではない。そろそろゴールという結果が欲しいところである。
確かに今シーズンのMF乾には気の毒な部分も多い。1トップを務めていて相性も良かったFWカイオが退団し、代わりに入ったFWアドリアーノは自分でフィニッシュまで持っていこうとするタイプのストライカーである。またコンビを組むMF香川にしても、MF乾がMF香川の良さを引き出すことはあっても、その逆でMF香川がMF乾の良さを引き出そうとするプレーは少ない。ツーシャドーの結果が対照的になっているが、それはMF香川にはMF乾がいる絶好のパートナーがいるが、MF乾にはいないという面にある、と考えられる。
■ 機能しなかった3トップ対する湘南はロスタイムに追いついたが、ラストプレーで失点を喫して1対2の敗戦。追いついたとき、「ドローでOKとすること」ことと「逆転で勝利を狙うこと」ことの2つの選択肢があって、湘南は果敢に2点目のゴールを狙いに行ったが、結局、この策がうまくいかなかった。
MFアジエルとDFジャーンを欠く中、粘り強く戦ったが、攻撃に迫力を欠いたのは否めない。3トップでFW新居を中央に置いて、サイドにFW中村とFW阿部を置く布陣は第6節の磐田戦ではある程度、機能していたが、この日は十分に機能しなかった。
センターフォワードのスタメンの選択肢としてはFW田原とFW新居の2つがあったが、C大阪としては高さがあってパワーのあるFW田原がスタメンで出てきた方が厄介だっただろう。
※ サイドからのクロスボール
→ 中央からの崩しやショートカウンターからゴールを奪うことの多いセレッソ大阪であるが、昨シーズンはサイド攻撃も武器になっていた。J2での成績ではあるが、1試合平均のクロスの本数が、右サイドのMF/DF酒本が6.34本/90分でJ2の全体で第4位、左サイドのMF/DF石神が5.20本/90分でJ2の全体で第11位。J2時代のような両サイドを使ったワイドな攻撃が可能となれば、中央からの崩しももっと有効になるはず。
<参考リンク> → 2009/12/19 MF佐々木勇人が全Jリーガーの中で№1だったある数値 (J2編)
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今の日本代表に必要な選手を考えると・・・。
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