■ 第14節J1の第14節。1勝8敗4分けで勝ち点「7」で17位と降格圏に位置するジュビロ磐田がホームのヤマハスタジアムでセレッソ大阪と対戦した。C大阪は6勝2敗5分けで勝ち点「23」を稼いでおり、6位と上位を狙えるポジションにいる。磐田は9節を終えた時点で森下監督が解任されて、10節から13節までは長澤監督がチームを指揮して、13節の大分戦の後、ロンドン五輪代表を率いた関塚氏が新監督に就任した。
ホームの磐田は「4-2-3-1」。GK川口。DF駒野、チョ・ビョングク、伊野波、宮崎。MFチョン・ウヨン、藤田、小林裕、松浦、山田大。FW前田。森下監督のときは「3-1-4-2」を採用することが多かったが、関塚監督はオーソドックスな「4-2-3-1」を採用して、日本代表のFW前田が1トップで、MF松浦がトップ下に入る。FW金園やMF山崎はベンチスタートとなった。
対するアウェーのC大阪は「4-2-3-1」。GKキム・ジンヒョン。DF酒本、藤本、山下、丸橋。MF山口螢、扇原、エジノ、シンプリシオ、南野。FW柿谷。先日、手術を行ったDF茂庭は全治2ヶ月と発表されているので、DF山下がCBでスタメンとなった。中断前は2トップを採用することが多かったが「4-2-3-1」を採用して、MFエジノが右サイドハーフに入って、MFシンプリシオがトップ下で起用された。
■ 2対2のドロー試合の前半はホームの磐田ペースとなる。関塚監督の初戦ということもあって、選手たちのモチベーションが高まっており、満員のスタジアムの声援を背にアグレッシブなサッカーで試合の主導権を握っていく。対するC大阪は新しい布陣が機能せず、なかなかシュートチャンスを作ることができない。前半は磐田が優勢で試合が進んでいくが、ともにゴールを奪うことは出来ず、0対0で終了する。
後半も磐田がペースを握っていたが、後半13分に左サイドでボールを受けたC大阪のMF南野が強引にシュートを放つと、これがDF駒野の足に当たってコースが変わってゴールイン。期待の18歳のMF南野のJ1初ゴールでアウェーのC大阪が先制する。しかし、直後の後半15分にMF山田大のトリッキーなパスを受けたFW前田が左足で決めて1対1の同点に追い付く。FW前田は今シーズン3ゴール目となった。
さらに、その1分後にも磐田がゴール前のシーンを作ると、混戦からMF山田大が押し込んであっという間に2対1と逆転に成功する。MF山田大は今シーズン6ゴール目となった。しかし、後半26分にC大阪はDF酒本のクロスからFW柿谷が頭で中央に折り返して、ゴール前の混戦からMFエジノが左足で豪快に蹴り込んで2対2の同点に追い付く。MFエジノは2試合連続ゴールで、今シーズン2ゴール目となった。
結局、試合は2対2で終了して、磐田は関塚監督の初戦を飾ることはできなかった。同じ勝ち点「7」で並んでいた大分も引き分けだったので、17位という順位は変わらなかった。一方のC大阪はリーグ戦は8試合負けなしで6試合連続複数得点となったが、3連勝とはならなかった。15節は磐田はホームで新潟と対戦して、C大阪もホームで横浜FMと対戦する予定になっている。
■ 関塚監督の初陣関塚監督を迎え入れた磐田は約1ヶ月ほどの準備期間があった。日本代表に召集されていたFW前田とDF伊野波は不在の時期が長くて、練習に参加する時間はあまり無かったが、チームとしてはいいトレーニングができたようで、序盤はボールを支配して攻め込んだ。アンラッキーな形で先制ゴールを許したことが試合を困難なものにしたが、噛み合ってなかった頃と比べると、雰囲気は良くなっている。
森下監督のときと比べるとメンバーやシステムが大きく変わっているが、その後を任された長澤監督の時とは、あまり変わっていない。戦い方もオーソドックスと言えるが、磐田の場合、攻撃的なポジションも、守備的なポジションも、タレントは揃っているので、気持ちの問題が大きかった。結果は引き分けだったが、実績のある関塚監督がやって来て、いい方向に向かっていることを示す内容だったと言える。
後半13分に先制ゴールを許したときは、3月や4月や5月の悪い流れが続いているのかと思われたが、すぐに同点ゴールを奪って、一気に逆転まで持っていった。輝いたのは、1ゴール1アシストのMF山田大で、特に、FW前田の同点ゴールにつながったトリッキーなアシストはサッカーセンスの高さを感じさせるプレーだった。彼も東アジア選手権での日本代表入りが期待されているが、大きなアピールとなった。
MF山田大に関しては、中断前もいいプレーを続けていた。13試合で5ゴールと結果も出しており、質の高いプレーを見せていたが、彼クラスの選手になると、(個人のパフォーマンスや成績も大事ではあるが、)それ以上にチームを勝利に導く活躍が期待されるので、十分とはいえない前半戦だったが、まだ、リーグ戦は20試合も残っているので、今後は、試合を決定付けるような活躍が望まれる。
■ 新布陣は機能せず・・・一方のC大阪は磐田の勢いに圧倒された時間帯が長かった。監督が交代となった最初の試合というのは、こういう流れになりやすいが、リフレッシュして、モチベーションもマックス付近まで高まっていた磐田の圧力に押し込まれて、受け身となった。ただ、そういう難しい展開になった中で、先制ゴールを奪って、さらには、同点ゴールを奪って、勝ち点「1」を持って帰ることができたのは良かったと言える。
C大阪も新しい布陣を試しているがあまり機能しなかった。右サイドハーフにMFエジノを起用して、さらには、トップ下にMFシンプリシオを起用して、FW柿谷を1トップの位置に置いたが、3人とも、効果的な働きはできなかった。同点ゴールはFW柿谷のパスからMFエジノが決めているので、最低限の活躍は見せたが、FW柿谷も、MFエジノのボールを受ける回数は少なくて、相手の脅威とはならなかった。
MFシンプリシオについては、試合から消える時間帯が長かった。セリエAのときは2列目でもプレーしているので、ボランチでも、2列目でもプレーできる選手だと思うが、C大阪の2列目でプレーするときは、攻撃に絡めないことが多い。MFシンプリシオとMF扇原とMF山口螢の3人を同時起用するためには、誰かを異なるポジションで起用する必要があるが、MFシンプリシオを2列目に上げるのは、有効ではないと思う。
■ J1初ゴールとなった南野先制ゴールを挙げたのは、左サイドハーフのMF南野だったが、これがJ1初ゴールとなった。ナビスコカップでは3ゴールを挙げているが、リーグ戦ではなかなかゴールが生まれなくて、MF枝村とのポジション争いに敗れる形でベンチスタートも増えていたが、ナビスコカップの浦和戦に続いて2試合連続ゴールとなった。相手の足に当たってコースが変わっているので、ラッキーなところもあるが、嬉しいゴールとなった。
MF南野については、プロ1年目の18歳なので、過度な期待は禁物であるが、正直なところ、もう少しできる選手だと思っていたので、「意外とJ1の壁に苦しんでいる。」という印象である。もちろん、もっとも得意とするフォワードやトップ下のポジションでは起用されておらず、左サイドハーフでプレーする機会がほとんどなので、そのあたりは考慮する必要があるが、J1の舞台では力を出しきれていない。
ボックス付近で力を発揮するタイプなので、慣れていないサイドハーフのポジションでも、それなりのプレーを見せていることは評価できるが、当然、もっと上のレベルを期待している人がほとんどだと思うので、初ゴールをきっかけにしてほしいところである。どんな形であれ、J1初ゴールが決まって肩の荷が下りたと思うので、これからの爆発に期待したいところである。
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