■ ルヴァン杯の決勝戦ルヴァン杯は決勝戦を迎えた。対戦カードは「新・黄金カード」とも言われている浦和レッズ vs ガンバ大阪。会場は埼玉スタジアム2002なのでほぼ浦和のホームゲームとなる。意外にも浦和は長い間、タイトルから遠ざかっていて、ルヴァン杯を制することができると2007年のACL以来のタイトル獲得となる。一方のG大阪は3年連続の決勝進出で勝つとクラブとしての区切りとなる10個目のタイトル獲得となる。
浦和は「3-4-2-1」。GK西川。DF森脇、遠藤航、槙野。MF柏木、阿部勇、関根貴、宇賀神、武藤雄、高木俊。FW興梠。日本代表の一員としてオーストラリアに遠征していたGK西川とDF槙野とMF柏木の3人はともにスタメン出場となった。GK西川とDF槙野はオーストラリア戦(A)でフル出場を果たした。好調のMF駒井はベンチスタート。「ガンバ・キラー」と言われているFWズラタンもベンチスタートとなった。
対するG大阪は「4-2-3-1」。GK東口。DF米倉、丹羽大、金正也、藤春。MF今野、井出口、倉田、遠藤、大森。FWアデミウソン。日本代表入りが期待されているFW長沢駿はベンチスタート。FWアデミウソンの1トップで、トップ下にはMF遠藤が起用された。10月13日(木)の練習中に怪我をしたFWパトリックはベンチ外となった。右前十字靭帯損傷と右外側半月板損傷という大怪我で全治8か月とも言われている。
■ PK戦を制した浦和がタイトル獲得試合の序盤はG大阪ペースとなる。ちょうど2週間前に行われた試合では0対4で完敗を喫したG大阪だったがさすがに対策を練って来た。守備力の高いMF今野とMF井手口をWボランチで起用するやり方が機能。立ち上がりからFWアデミウソンの個人技を中心に相手を脅かすと前半17分に個人技から抜け出したFWアデミウソンが独走。最後はキーパーとの1対1を確実に決めてG大阪が先制に成功する。
1対0で迎えた後半31分に浦和はMF高木俊に代えてMF李忠成を投入。すると直後のCKでMF柏木のキックを途中投入されたばかりのMF李忠成が頭で決めて浦和が1対1の同点に追いついた。試合は1対1のままで延長戦に突入する。延長戦の後半14分にG大阪は途中出場のMF藤本淳の絶妙なスルーパスから同じく途中出場のFW呉屋が抜け出して1対1の絶好機を得るがライン上でDF森脇がクリアをして勝ち越しならず。
どちらも譲らずPK戦に突入する。迎えたPK戦は日本代表のキーパー2人に注目が集まったがG大阪の4人目のFW呉屋のキックをGK西川がセーブ。対する浦和は5人連続で成功。最後に登場した5人目のキッカーのDF遠藤航のシュートが決まった瞬間に浦和のルヴァン杯制覇が決定。クラブとしては約10年ぶりのタイトル獲得となった。MVPには後半32分に値千金の同点ゴールを決めたMF李忠成が選出された。
■ 約10年ぶりのタイトル獲得2012年にペトロヴィッチ監督が就任してからは国内大会の多くで優勝争いに絡んでいるが、あと一歩のところでタイトルには届かないケースがほとんど。準優勝に終わることが多くて「シルバーコレクター」と言われる機会が多くなっていたが、国内タイトルでは2006年のリーグタイトル以来、国際大会を含めると2007年のACL制覇以来となるタイトルを獲得した。多くのサポーターが待ち望んでいた結果になった。
序盤はG大阪が優勢。FWアデミウソンの個人技から先制ゴールを奪われたが、後半はずっと浦和がペースを握る展開になった。終わってみるとG大阪のシュートは7本で、浦和は倍以上の17本。チャンスの数は浦和が大きく上回ったが、なかなかゴールをこじ開けることができなかった。GK東口も好調だったので「このまま1対0で終わるのか…。」と思われた後半32分にMF李忠成の同点ゴールが生まれた。
PK戦は日本代表のGK西川とGK東口の対決となったが、5本とも止められなかったGK東口に対してGK西川は4本目のFW呉屋のPKをセーブした。両キーパーとも「真ん中に蹴ること」を予想して動かないケースもあったが、FW呉屋のPKを止めたシーンはGK西川の足が残っていた。日本代表ではGK西川が1番手で、GK東口が2番手という状況が続いているが、大一番でGK西川が存在感を発揮した。
■ 一体感が感じられるチームになったガンバ大阪選手やサポーターから「ミシャ」の愛称で親しまれているペトロヴィッチ監督にとっても嬉しいタイトル獲得となった。2011年まで広島を率いていたが後任の森保監督が広島を率いるようになってから2012年と2013年と2015年にリーグタイトルを獲得している。一方のペトロヴィッチ監督はタイトルに届きそうで届かないシーズンが続いた。複雑な思いはあったと思うが、ようやく初タイトルを手にすることができた。
J1のリーグ戦も年間順位で首位に立っており、2ndステージも首位に立っており、さらには天皇杯も残っている。今の勢いを考えると三冠というのも十分に狙える。どんなことでも最初のヤマを乗り越えるのはかなり大変で苦労することが多いが、ヤマを乗り越えてしまうと次のヤマやその次のヤマは意外とあっさり乗り越えることが出来る。苦労して勝ち取ったタイトルは浦和にとっては大きな意味を持つ。
もっとも強かったブッフバルト監督時代と比べると絶対的な強さは感じられないが、当時と比べると今のチームの方がチームとしての一体感は強いように感じられる。浦和というと個性的な選手が多くて「個の力」が集まって結果を残して来たチームだと思うが、ペトロヴィッチ監督になってからは一体感がある。低迷していた時期はクラブ内のいざこざが多かったが、近年は内紛的なものは一切聞こえてこない。
メンバーを見ると主力のほとんどは他クラブで大活躍して浦和に引き抜かれた選手なので「寄せ集め」のような印象になってもおかしくないがMF阿部勇にしても、DF槙野にしても、DF森脇にしても、MF柏木にしても、FW興梠にしても、GK西川にしても、全く違和感なくチームに溶け込んでいる。このチームが「憎たらしいほど強い。」と言われるようになると何だかんだでJリーグはもっと盛り上がるだろう。
■ 2週間前の完敗から立て直したG大阪だったが・・・。一方のG大阪はPK戦で敗れたがグッドルーザーだったと言える。正直なところ、2週間前の試合は完敗だった。「FWアデミウソンの一発レッドでの退場がなかったとしてもショッキングな点差になっていた。」と思えるほどの差があったが、見事に対策を立ててあわやのところまで浦和を追い詰めた。PK戦に関しては運・不運もあるので仕方がないが、戦いぶりは見事だったと言える。さすがと言える試合を見せた。
守備力のあるMF今野とMF井手口をWボランチで起用して、FWアデミウソンを最前線に置くやり方がものの見事にはまった。FWアデミウソンについては「圧巻のプレーを見せた。」と言うしかない。前半17分の独走からのゴールは言うまでもなく素晴らしかったが、これ以外でも独力で浦和の守備陣を切り裂いていった。J1屈指と言われる浦和の最終ラインをあれほど見事に突破できる選手はJリーグにはなかなかいない。
若手が存在感を発揮したこともG大阪にとってはポジティブな要素だった。今年のニューヒーロー賞を受賞したMF井手口は素晴らしい出足で攻守に躍動した。手倉森JAPANでも存在感を発揮したが、こういう大きな舞台であれだけのプレーができるのは相当である。「ボール奪取力」に関してはすでに日本人のボランチの中でもトップクラスで、ボールを奪った後に前に出ていく迫力がある点も大きな魅力と言える。
途中出場したFW呉屋は残念ながらPKを外してしまった。登場した10人のキッカーの中で失敗したのはFW呉屋のみ。辛い経験をすることになったが流れの中では惜しい場面をいくつか作った。攻撃的なポジションは層が厚いので簡単にはプレー時間を獲得することは出来ないが大事な試合で延長戦があることを承知の上で3枚目のカードとして投入するほど評価も高まっている。悔しい経験をバネにしてほしい。
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