■ 最後のダービー3月10日の三ツ沢球技場で行われた横浜ダービー。そのときは、横浜FCが前半7分にDF早川のゴールで先制し、そのまま、逃げ切った。新参チームにJ1初勝利を献上し、そのプライドを傷つけられた横浜Fマリノスは屈辱を晴らそうと、なりふり構わず、このダービーマッチにかけてきた。
【横浜FC×横浜FM】 ダービー第二章 (2007/03/10)横浜FMは、<4-4-2>。バルセロナ戦でいいプレーを見せたMFマルケスをスタメンで起用し、山瀬幸宏をベンチスタートとした。DFラインは、田中隼磨・中澤・松田・小宮山。中盤は、河合・吉田・山瀬功治・マルケス。2トップは、大島と坂田。
横浜FCも、<4-4-2>。FWカズ、FW久保が欠場し、新外国人のMFオ・ボムソクとMFマルコス・パウロがスタメン出場。難波と平本の2トップ。
■ 痛恨のキャッチミス試合は、開始から、タレント力で優る横浜FMが押し気味に進めるが、MFマルケスやMF山瀬功治が決定機に決められずに、嫌なムードが流れ始める。
しかしながら、前半30分、横浜FMの右からのクロスボールをGK菅野がキャッチし損ねて、弾んだボールがFW大島の元へ。空中のボールを大島が頭でネットに流し込んで、横浜FMが先制する。イージーなボールであったが信じられないような菅野のキャッチミスで先制点が入った。
■ ゴールラッシュ先制をして、勢いに乗り始めた横浜FMは、前半44分、坂田がドリブルから追加点。2対0で前半を折り返した。
後半に入ると、横浜FMはMFマルケスに山瀬幸宏を投入。すると攻守のバランスが良くなって、横浜FCを圧倒。後半6分、左サイドの小宮山からのクロスをMF山瀬功治が決めて、3点目。これで、完全に勝敗は決した。その後も手を緩めることなく5点を追加。8対1の圧勝した。
■ リベンジを果たした横浜FM3月10日の屈辱を胸に、横浜FMは、フィールド上でも、フィールド外でも横浜FCを圧倒した。
・格の違うエフシーとの試合をダービーと見なしてもいいのか?
・横浜には、トリコロールしか必要はない。
・エフシーが横浜を名乗ることが出来るのは、J2だけである。
・J1最下位を独走するエフシーの壮大な送別会である。
・これは最後のダービーである。
と、「ハマトラ(=横浜FMサポのためのスタジアム内のフリーペーパー)」には、かなり過激なフレーズが並んでいたが、文字通り、絶対に負けられない試合で、横浜FMは、選手・フロント・サポーターのすべてが一体となって、リベンジを果たした。
■ トレーニングの成果を見せた横浜FMこの試合の横浜FMは、中盤の選手からポスト役のFW大島にくさびのパスを当てて、その大島に対して、坂田や山瀬、吉田ら、3人目の選手が素早くフォローしてチャンスを作る動きが徹底されていて、面白いようにチャンスを作った。動き出しが早く、この攻撃パターンを、中断期間に、相当にトレーニングをしてきたなという印象をもった。
横浜FCのセンターバックは、大島のポストを封じることが出来ず、さらには、ダブルボランチを組んだMFオ・ボムソクとMFマルコス・パウロという2人の新外国人選手も、横浜FMの中盤の選手をフリーにし過ぎた。
■ 消極的なプレー横浜FCは最下位に低迷しており、残留のためには、もう引き分けすら避けたいくらいの状況であるが、立ち上がりから、非常に消極的だった。特に、GKの菅野は、試合開始から、ゴールキックの度に時間稼ぎとも取れるような、スローな動作を繰り返していて、「絶対に勝つ!」というチームとしての意気込みが感じられなかった。
したっがって、「絶対に勝たなければならない戦い」と認識して、全力で戦ってきた横浜FMの攻撃を食い止められるはずも無く、無残に失点を重ねた。
1失点目は、明らかなミスであり、これで完全にプランが狂ったのは間違いなく、このミスが無ければ、もっと拮抗した試合になっていたかもしれないが、横浜FCは相変わらず受身の姿勢であり、中断前と、何も変わらなかった。しっかりとしたトレーニングをしてきたことが伺える横浜FMとは対照的だった。
横浜FCは、切り替えて次の試合に臨むしかないだろう。ただ、それは、簡単ではないだろう。オシム監督が語ったように、最終スコアほど両チームの差はなかったが、残念ながら、この試合の横浜FCは、勝てる可能性は少なかった。
■ 横浜FCのとるべき道は?率直に言うと、クラブの規模、タレント力、サポーターの数量等、いずれの面でも、横浜FCは、J1のレベルではないだろう。この試合の観衆は、約53000人だったが、そのほとんどが横浜FMのサポーターであり、横浜FCのサポーターは、スタンドのごく一部の一角だけで、数にすると、約3000人ほど。アウェー扱いの試合であったが、同じ横浜をホームとするチームとの対戦としては、あまりにもさびしい惨状だった。
ボクは、横浜FCは、もっと吹っ切れるべきだと思う。別に、J2に落ちたとしても、また、来年、J2でやり直せばいいのではないだろう。何も失うものはない。何が何でもJ1にすがり付こうとして、極端に守備的なサッカーをして勝ち点を稼ぐことも1つのやり方であるが、そこから得られるものは少ない。
横浜FCには、もっと感動を与えて欲しい。現状では、横浜FCのサポーターの中に、「J1でこれだけ低迷するのなら、J1に昇格しなければ良かった。」と考えている人がいても不思議ではない。
■ インターセプトが光った松田さて、前半に先制点を奪うまではやや苦戦したが、その後の横浜FMのゴールラッシュは見事だった。全体的に選手の動きは良かったが、特に良かったのが、DF松田、DF田中隼磨、MF河合の3人。
開幕から構想外扱いになっていたが、ようやくスタメンに復帰した松田は、DFリーダーとして見事なパフォーマンスを見せた。後半22分に余裕の交代でベンチに下がったが、持ち味の対人の強さに加えて、インターセプトが鮮やかに決まって、逆カウンターのチャンスを作った。
■ 田中隼磨の特性ヒーローは大島だったが、もっとも貢献度が高かったのは、右サイドの田中隼磨であった。前半は、左サイドにマルケスがいたことで左サイドが攻撃の主体になっていたが、後半にマルケスが下がると、今度は、右サイドからの攻撃が主体となった。その状況で、吉田とのコンビで、相手の左サイドをズタズタにした。
もちろん、サイドバックとして、水準以上の突破力もあるが、光るのは、試合を読む能力。Jリーグには、猪突猛進型で味方に使われるタイプのサイドバックが多い中、サイドから試合をコントロールできる彼の特性は際立つ。明らかに、後半、試合をコントロールしていたのは、田中隼磨だった。
■ 代えの利かない河合この試合でも、中盤の底でMF河合が奮闘。カバーエリアの範囲の広さと、ミスの無いつなぎを見せて、ほぼパーフェクトな出来だった。
後半27分に、MF上野と交代で退いたが、その後、横浜FMの守備のダイナミズムが失われて失点を喫したように、すでに、必要不可欠な存在で、代えの利かない選手になっている。
■ マルケスの使いどころ大量得点を呼び込む1つの契機になったのは、ハーフタイムの選手交代。早野監督は、MFマルケスに代えてMF山瀬幸宏を投入し、中盤の流動性が増して、攻撃のバランスが良くなった。
前半の横浜は、左サイドのMFマルケスがたくさんボールに触ってゲームメークをしていたが、マルケスのラストパスの精度が高くなく、ドリブルのキレも全盛期のものではなかった。マルケスの技術は間違いなくチーム№1であるが、まだ、完全にフィットしていない状態である。
現状では、山瀬幸宏を入れた方が機能するのは、間違いないだろう。ただ、マルケスの能力も捨てがたい。今後の使い分けに注目したい。
■ ダービーの意味を知るこの試合の横浜FMのスタメンの中には、消滅した当時の横浜フリューゲルスに在籍したFW大島とMF吉田がいて、さらには、FW坂田とMF田中隼磨もフリューゲルスのユースチームに所属した経験をもつ。
いうまでも無く、横浜FMの「F」は、フリューゲルスを指すものであり、歴史的な経緯を見ても、横浜FCがフリューゲルスの系統を継いだチームであるのは間違いない。したがって、「ダービーの本当の意味」を知っている選手が多かったのは、横浜FMだったのだろう。それが、最終スコアにも表れたといっても過言ではない。
「東京ダービー」、「大阪ダービー」、「神奈川ダービー」、「静岡ダービー」、「千葉ダービー」などなど、Jリーグにも、たくさんのダービーが生まれているが、両チームの間で、’吸収合併’という苦い歴史をもつことを考えると、やはり、「横浜ダービー」は、日本サッカー界にとって、それ以外とは、異なる意味合いをもつ。
華やかな裏で、どうしても、もの悲しさも覚えてしまうのが、「横浜ダービー」なのかもしれない。
---横浜FM:採点---
GK:榎本 7.0
→ 飛び出すタイミングが抜群だった。ハイボールへの対応も問題なし。
DF:田中 7.5
→ 個人的に選ぶ、MOM。サイドで、インテリジェンス溢れるプレーを披露。
DF:中澤 6.0
→ 彼にしては、普通の出来。特にミスも無かったが、このくらい出来て当然のため採点は低め。
DF:松田 6.5
→ 歯車が狂い掛けた時間帯にチームを鼓舞するなど、リーダーとしての高い資質を感じた。
DF:小宮山 5.5
→ 前半は、マルケスとのコンビネーションが悪く、ミスが多かった。後半は、持ち直した。
MF;河合 7.0
→ ほぼ完璧なプレー。代表で1ボランチをするならば河合でどう?
MF:吉田 6.5
→ 足をつりながらの奮闘。右サイドを田中とのコンビで切り裂く。
MF:マルケス 5.0
→ 全盛期と比べると・・・。このポジションで起用するアイディアは悪くないが。
MF:山瀬功 6・0
→ 2得点は見事。ただ、それ以外では、ミスもあった。彼にしては、アベレージ以下のプレー。
FW:大島 7.5
→ ポストプレーが秀逸。4ゴールは圧巻。
FW:坂田 6.0
→ 1G1Aも、出来は良くなかった。もっと出来る選手。
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