■ U-16日本代表チーム豊田市で行われている、U-16の世界大会。第8回となる今回の参加チームは、U-16日本代表、U-16韓国代表、U-16USA代表、U-16UAE代表、U-16オーストラリア代表、名古屋グランパスU-16の6チーム。
今回の日本代表チームは、実際には、ベストメンバーではない。同時期に、U-16の北海道国際ユース大会にも出場しているので、このチームは、西日本のチームに所属する選手だけで構成されている。J1では、東高西低が続いているが、若年層では、むしろ、西高東低である。ガンバユース、サンフレッチェユース、ジュビロユースが、先日行われたU-18の日本クラブユース大会で、ベスト4に残っている。
日本代表は、前日のオーストラリア戦で3対0と勝利を飾っており、この試合に勝つと、決勝戦に進むことが出来る。
豊田市運動公園球技場前の垂れ幕日本は、<4-4-2>。GK嘉味田(神戸Y)。DF大崎(広島Y)、内田(G大阪Y)、寺岡(神戸Y)、小川(磐田Y)。MF井上(京都Y)、上村(磐田Y)、扇原(C大阪Y)、宇佐美(G大阪Y)。2トップは、永井(C大阪Y)と木村(神戸Y)。
召集されているのは、91年1月1日以降に生まれた選手であり、早生まれの選手は高校2年生になる。最年少は、宇佐美ら中学3年生である。この年代の選手たちが、2011年のU-20W杯の主力選手となる予定である。
■ 効果的な得点試合は、中盤の技量で優る日本が優勢。前半4分に、左サイドからのクロスをFW永井がヘディングで決めて先制。後半2分にも、MF宇佐美のセットプレーから、FW木村が頭で決めて追加点。
その後、後半16分に、USAがチャド・バルソンのゴールで1点を返すが、後半29分に、日本は、MF宇佐美が個人技で突破し、永井(?)からのワンツーパスを受けて、フリーでシュート。これが決まって、3対1と突き放した。
USAに1点を返された後の時間帯は、やや劣勢になった日本だったが、効果的な時間帯に得点を奪って、3対1で勝利し、日曜日に豊田スタジアムで行われるUAEとの決勝戦に駒を進めた。
■ 和やかな雰囲気さて、会場の豊田市運動公園球技場は、とても国際試合を行っているというような雰囲気はなく、のどかな雰囲気で行われた。TOYOTAのお膝元の豊田市は、名古屋からは一時間近く。電車を利用するときは、交通の便のいいところではない。豊田市運動公園球技場の周りも、ほとんど何もないところであった。
試合が行われた球技場は、正直、どこにでもありそうなスペックの球技場であり、ピッチとスタンドの境界もない。したがって、第一試合のUAEと韓国の試合を、日本代表の選手も、すぐそばで、一緒になって、観戦している。Jリーグの試合では、まったく考えられない。観衆は、300人くらいだったかもしれないが、雰囲気はよかった。
試合を観戦するU16の代表選手達■ オールラウンドな能力が光るFW永井龍ただ、やはり、試合になると、選手たちは、真剣そのもの。国際試合を行っているという緊張感が伝わってくる。試合前に、公衆トイレで騒いでいた日本代表の選手たちも、日の丸を背負う自覚が、プレーに表れる。
さて、この試合のMOMを選ぶとしたら、FW永井(C大阪Y)だろう。それは、何も、永井君のご家族が、隣の席に座っていたことを考慮したリップサービスを含むものではなく、前線でボールを受けてタメを作る仕事と、ゴール前でシュートを放つ仕事の両方を、高いレベルでこなしていた。
175cm62Kgと、決して大きくはないが、体の使い方がうまく、ポストプレーも正確で、相手DFを背負ったときのプレーもボールを失わなかった。後半の半ばに入ると、USAのDFに何度も倒されていたが、それは、彼が効果的な仕事をし続けていたからであろう。
■ チームの心臓として働く上村岬キャプテンマークをつけていたのが、MF上村岬(磐田Y)。背番号11で、ジュビロ磐田所属のMFで、なおかつ、岬という名前から、岬太郎を連想させるが、現実の上村は、それほど、華やかなプレーをするわけではないが、このチームの心臓であることは、試合を見れば明らかであった。
豊富な運動量で中盤を駆け巡って相手の攻撃の目をつんで、さらには、低い位置でボールを受けて、ビルドアップの中心になっていた。感心するのは、相手にプレスをかけられても、決してあわてることなく、正確に味方につなぐことのできる点である。
彼は、先週の日曜日に行われていた、U-18の日本クラブユース選手権の決勝戦に出場している。167cm61Kgと、ややスケール感に欠ける印象もあるので、どれだけ、スケールアップできるかが、課題であろう。
■ 内田達也の可能性事前に、予備知識があったのは、実は、2人だけで、その1人が、DF内田達也(G大阪Y)である。彼も、U-18の日本クラブユース選手権の決勝戦に出場している選手であり、高校1年生ながら、将来のG大阪を背負って立つDFという評判の選手である。
実際にそのプレーを見て、試合後は、「その評判に偽りなし」という感想を持った。とにかく、USA代表チームが、CBの内田のところを集中的に狙って攻撃しているかのような錯覚を覚えるくらい、クロスボールもクサビのパスも、すべて内田がカットして、USAの攻撃を阻止した。
タイプとしては、ストッパータイプいうよりは、ラインコントロールをしながら、危険なエリアを監視するスイーパータイプなのかもしれない。したがって、同じG大阪ユース出身の宮本恒靖を彷彿とさせた。クレバーさが光った。
しかしながら、彼は、まだ、高校1年生。今は、177cm60Kgという体格だが、仮に、あと5cm身長が伸びたとしたら、空中戦でも、地上戦でも問題なしの、とんでもない、CBになりそうである。それほどのポテンシャルを秘めている。
試合前の表情■ さて、宇佐美貴史についてこの試合のお目当てが、G大阪Y所属の中学3年生のMF宇佐美貴史であったことは、隠しようがない。中学3年生で、最強Gユースのレギュラーであり、先日の日本クラブユースの決勝で、ゴールを決めたスーパープレーヤーである。
彼がいったい、どんなプレーをするのか、噂どおりの選手なのか、否か。飛び級でユースチームでレギュラーを張るだけの逸材なのか。日本サッカー界の未来なのか。興味は尽きないところであった。
そして、そのプレー振りだが、実は、前半は、期待外れだった。彼のスターティングポジションは、右の攻撃的MFだが、いかんせん、彼にボールが渡る回数が少なく、むしろ、守備面での活躍が目立ったくらいである。ボールを持ったときは確かにいいプレーをするし、実際、3度ほど、あわやのシーンを作ったが、もっと自由に動いて、ずっとボールを保持して、攻撃の全権を握る王様のような選手を想像していただけに、やや物足りなかった。
■ 怪物の真価ただ、後半に見せたプレーは、やはり怪物だった。
後半の開始2分に、セットプレーのキッカーとしてパーフェクトなクロスを上げて、FW木村のゴールをアシストすると、そこからは、宇佐美のショータイムが始まった。USAのDFのマークがゆるくなったのか、宇佐美の運動量が増したからなのか、理由はよくわからなかったし、おそらく、偶然の要素が大きかったと思うが、それにしても、USAのDFをあざ笑うかのようなドリブル突破と決定的なキラーパスを連発し、日本の攻撃のほとんどのチャンスシーンを演出した。
後半29分には、右サイドから中央に切れ込んで、FW永井(?)からのワンツーパスを受けて、駄目押しのシュートを決めたが、圧巻だったのは、その少し前のプレー。
同じく、右サイドから中央に切れ込んだ宇佐美は、USAのDF3人に囲まれながらも、ボールを保持。UAEのコーチが、「strong!!!」と叫んだ、その次の瞬間、浮き球のパスで、USAのDF3人のマークを外してフリーとなって、決定的なシュートを放った。そのシュートは、わずかにゴール左にそれたが、ミッシェル・プラティ二を思い起こさせるファンタスティックなプレーは、この試合のハイライトとなった。
以下で、彼のプレーを細かく見ていく。
■ 宇佐美のドリブル彼のドリブルは、超一級品である。相手DFの間を割って入っていって、なおかつシュートにまで結びつけることができる。相手がきっちりとDFの組織を作っていても、まったく関係なし。こういうプレーの出来る日本人選手は、全盛期の本山雅志以外には思いつかない。
スピードがないわけではないが、圧倒的というわけでもない。天性のボールコントロール技術と、トップスピードに入るまでの速さが、そのドリブルを可能にするのだろう。
また、この試合は、右サイドにいるケースが多かったため、サイドラインで相手DFと1対1になるケースもあったが、そのときの打開力も抜群。相手DF二人に囲まれながらも、突破してペナルティエリア内に進入する場面も、2度ほど見られた。
■ 宇佐美のパスパスセンスも備えていることは、間違いないだろう。彼がボールを持つとまず、相手DFはドリブル突破を警戒するのだが、その瞬間、何とも言えない絶妙のタイミングで、味方FWにキラーパスが繰り出されて、決定的なチャンスを生み出すことが何度かあった。まさしく、センスと表現するしかないパスである。
ただ、それ以上に特記したいのが、クロスボールの質の高さである。これは事前に想像していたものではなかったので、意外な驚きとなった。この試合の宇佐美は、FKもCKもほとんどすべてのキッカーを任されていて、直接ゴールを狙えるようなFKは残念ながらなかったが、サイドからのセットプレーで中央にあわせるボールは、すべて質の高いボールが入ってきて、そのほとんどが、味方の頭にどんぴしゃであって、シュートに結びついた。FW木村の2点目のゴールも、木村の頭にぴたりとあった。
ドリブルが得意で、パスも出せる選手であることは認識していたが、セットプレーのキッカーとしても、高い能力を持っていることを印象つけた。
■ 宇佐美の運動量とディフェンス力残念ながら、運動量という意味では、試合に出ていた選手の中では、最低ランクであった。特に、前半は、ほとんど動きがなく、物足りないものであった。
だが、後半の最後まで、まったく、ドリブルのキレが落ちなかったことを考えると、本来持っているスタミナは、相当のものだと想像出来る。要は、意識の問題で、今後、運動量を増やしていくことは可能で、まだまだ、改善できるだろう。
また、ディフェンスに関しても、それほど、高い意識を持っているとは、思われなかった。チームの一員としての最低限の仕事はこなしているが、現状は、それだけである。
とはいっても、まだ、中学3年生であり、課題があっても当たり前であり、何ら、問題視する必要はないだろう。むしろ、この試合のポジション(右の攻撃的MF)が彼のベストポジションだとは思わないし、守備の負担を軽く出来るような位置で起用すれば、もっと、攻撃面で仕事が出来るだろう。だが、そのあたりは、将来を考えて、あえて、守備力も求められるポジションで起用しているというのが、実際のところだろう。
■ 宇佐美の将来性、そして可能性今の宇佐美をデフォルメで表現すると、「5分に1回だけボールに触って、10分に1回の割合で決定的な仕事をする選手。」という感じであろう。ボールを持ったときのプレーは、確かに物凄いとしか言いようがないが、肝心の試合に参加している時間帯が少なく、この日も、特に前半は、不十分であった。また、前半と後半でプレーが劇的に変化したように、安定して高レベルのプレーを続けるだけの力は無いようである。
ただ、間違いなく可能性のある選手ではある。これは、断言できる。ボクは、彼については、「将来の日本サッカー界を背負って立つだけの可能性をもつ逸材」というよりは、「将来の日本サッカー界を背負って立ってもらわなければ困るだけの逸材」であると認識する。それだけ、スペシャルな選手であると考える。
確かに、まだ、中学生であり、過剰な期待は禁物であるが、やはり、期待せずにはいられない。彼をワールドクラスのアタッカーに育て上げることは、これからのガンバ大阪と日本サッカーの大きな使命であると思う。
「スターシステム」と呼ばれて、若い選手をことさら持ち上げようとすることは基本的には毛嫌いされているが、問題なのは、持ち上げるだけ持ち上げて、結果が振るわないとスポイルしてしまいがちな姿勢であって、有望な選手を取り上げて期待をかけて見守っていくこと自体は、別に、間違っていない。
教育の現場では、「特別扱い」することは問題視されるが、サッカーにおいては、特別な才能をもった選手に対して、「特別扱い」することは、まったく問題ではないだろう。
数年前、バルセロナのカンテラのFWメッシが、この大会を経験し、世界のトップクラスにまで巣立っていったように、数年後、「そういえば、あの宇佐美もこの大会に出場していたらしいよ。」と言えるようになってほしい。
12日の日曜日、日本最高のスタジアムのひとつである、豊田スタジアムに、宇佐美が登場する。彼のプレーは、絶対に見る人の期待を裏切らないだろう。宇佐美貴史を体感したいのなら、ぜひ、豊田スタジアムに・・・。
後半に向けて円陣を組む選手---U-16日本代表:採点&コメント---
GK:嘉味田隼 1992.01.17 182/74 神戸Y 6.5
→ とにかく、声がでか過ぎ。フィールド上の選手全員の名前を呼んで、ポジショニングの指示をしてくれるので、選手名を覚えるには、非常にありがたい。声がかれないか心配。
DF:大崎淳矢 1991.04.02 172/62 広島Y 6.0
→ このチームは、サイドバックが頻繁にオーバーラップするわけではないので、攻守でそれほど目立つことは無かったが、プレスに来たUSAの選手を足技で簡単にいなすシーンを見る限り、テクニックもありそう。
DF:寺岡真弘 1991.11.13 178/70 神戸Y 6.0
→ 高さでやられることも無く、フィードでもミスはなかった。リーダーシップもありそう。
DF:内田達也 1992.02.08 177/60 ガンバ大阪Y 7.0
→ 文句なしの逸材。
DF:小川大貴 1991.10.16 171/65 磐田Y 5.5
→ この選手も、U-18の日本クラブユース大会の決勝に出場している選手。左OMFの扇原とのコンビは、それ程見られず、攻撃では、なかなかいい部分は見せられなかった。
MF:井上寛太 1991.04.12 174/64 京都サンガU-18 6.5
→ 総合力の高いセントラルハーフ。上村と並んで、攻守両面で貢献。
MF:上村岬 1991.10.28 167/61 磐田Y 7.0
→ チームの心臓。ミスが無く、正確につなげる。
MF:宇佐美貴史 1992.05.06 174/53 ガンバ大阪Y 7.0
→ スーパー中学生。
MF:扇原貴宏 1991.10.05 181/65 セレッソ大阪U-18 5.5
→ 左利きの背番号10。長身で、元ブラジル代表のリバウドのようなボール扱いを見せる。強さが出てくれば、大化けするかも。もう一度みたい選手。
FW:木村一貴 1991.07.08 181/70 神戸Y 6.5
→ フィジカルが強く、空中戦でのバランス感覚もいい。スピードもありそう。
FW:永井龍 1991.05.23 175/62 セレッソ大阪U-18 7.5
→ MOM。すべてのプレーがハイレベル。
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宇佐美貴史のプレーを是非生で見てみたいです。
まだまだ、これから、宇佐美も、杉本、も原口も、先羽らこれからや、君達、さわぎすぎ
>>> ガンバ好きさん
どうも、コメントありがとうございます。
なるほど、ブレーキングですか。面白い考え方ですね。何故、あんなに簡単に、3人・4人の間を抜けていくことが出来るのか、少し、謎が解けました。
原口拓人君に関しては、名前くらいしか分かりません・・・。これから、注目してみます。
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よろしくお願い致します。
コメント欄をお借りしてのご案内をお許し下さい。
※検索サイト・ランキングサイト等より訪問しております為、
重複してのご案内になりましたらお詫び申し上げます。
練習でのプレーを見ていて思う宇佐美くんの凄いところは下半身の強さですね。
スピードだけなら彼よりも早い選手は何名かいるのですが、他の選手に比べて抜群にブレーキングが良いです。
F1でも速いドライバーはブレーキの使い方によってコーナー前後でのライン取りやその後の加速といった違いをもたらすように、宇佐美くんのドリブルは止められそうになっても別のコースを選択することでゴールまで結びつけられるタイプのドリブルです。
宇佐美くん以外では、スピードアタッカー系の原口拓人くんに要・注目です。
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