■ J1の開幕戦J1の開幕戦。フィッカデンティ監督が就任したサガン鳥栖はホームのベストアメニティスタジアムでアビスパ福岡と対戦した。両チームはJ2時代に何度も対戦しており通算成績は14勝8敗6分け。福岡が大きく勝ち越しているが、近年はずっと鳥栖がJ1で福岡がJ2だったこともあって対戦するのは2010年以来。実に5年5か月ぶりのダービーとなった。このときは福岡のMF永里が決勝ゴールを挙げて1対0で勝利している。
ホームの鳥栖は「4-4-2」。GK林彰。DF藤田優、キム・ミンヒョク、谷口博、吉田豊。MF高橋義、崔誠根、金民友、鎌田。FW豊田、岡田翔。FC東京時代と同様で中盤をダイヤモンド型にする「4-4-2」を採用。背番号が14番に戻ったMF高橋義がアンカーに入って、MF崔誠根とMF金民友がサイドで起用された。エースストライカーのFW豊田は「5年連続15ゴール以上」というJリーグ記録更新に期待がかかる。
対する福岡は「3-4-2-1」。GKイ・ボムヨン。DFキム・ヒョヌン、濱田、實藤。MF末吉、鈴木惇、中村北、亀川、城後、金森。FWウェリントン。J1昇格に大きく貢献したGK中村航の後釜として期待されるキーパーのGKイ・ボムヨンは2014年のブラジルW杯のときに韓国代表に選ばれている。194センチ/90キロという破格のサイズを誇る。U-23アジア選手権の優勝メンバーのMF亀川は今オフに福岡に完全移籍した。
■ 2対1で勝利したサガン鳥栖が白星発進試合は前半8分にホームの鳥栖が先制する。左サイドでスローインを獲得すると左SBのDF吉田豊がニアサイドに蹴ったボールをエースのFW豊田が頭で合わせて幸先よく先制に成功する。開幕戦に強いFW豊田は4年連続となる開幕弾となった。思うようなサッカーができない福岡は前半29分あたりでシステム変更を実施。MF金森のポジションを高めにする「3-4-1-2」にシフトチェンジすると流れが良くなった。
1対0で迎えた後半3分にはMF城後がヘディングシュートを放つなど後半は立ち上がりから福岡がペースを握る。五輪代表のMF亀川もミドルシュートで相手ゴールを脅かすが、後半6分に鳥栖が相手のセットプレーからカウンター。MF金民友のスルーパスから完全に抜け出したFW岡田翔が落ち着いてキーパーとの1対1を決めて貴重な2点目を挙げる。スタメンに抜擢されたFW岡田翔はJ1通算で2ゴール目となった。
2点ビハインドとなった福岡は後半22分にFW坂田とFW平井を投入。すると後半26分にMF末吉の右CKからFWウェリントンが豪快に決めて1点差に迫る。さらに後半46分にはFWウェリントンが抜け出してキーパーと1対1に近い決定機を得るがループシュートは枠を捉えることができない。結局、2対1で鳥栖が逃げ切って白星発進となった。福岡は相手を上回る12本のシュートを放ったが決定機を逃すシーンが目立った。
■ 5年5か月ぶりの九州ダービーこの2チームはかなり複雑な関係を持つ。街の規模としては「日本有数の大都市である福岡市」と「地方の小都市である鳥栖市」は比較することすら出来ないほどの大きな差があるがサッカーに話を限定させると事情は変わってくる。通算成績では福岡が大きく勝ち越しているが鳥栖はJ2に参戦した当初は下位に低迷することが多かったので通算成績はあまり参考にならず。J1での実績ではむしろ鳥栖が上回りつつある。
熊本や北九州や長崎などここ何年かで「九州地方」をホームタウンとするチームが増えており、九州勢同士の対戦を全て「九州ダービー」と呼ぶ流れが出来上がりつつあるが、正真正銘の九州ダービーはこのカードのみ。ほとんどの場合、「街の規模」と「チームの総合力」はキレイに比例するが、鳥栖と福岡に関しては当てはまらない。近年、鳥栖がJ1で好成績を残していることも複雑さに拍車をかけている。
2010年以来の直接対決となったのでサポーターは盛り上がっておりスタジアムは19,762人の大観衆で埋まったが、前半は「熱気」がマイナスに作用した。主に鳥栖のFW豊田と福岡のMF鈴木惇が小競り合いの中心になったが前半24分と前半40分に両チームの選手がエキサイトして試合の流れが止まる場面があった。試合の序盤から不穏な空気はあったが見苦しいシーンが何度かあったのは確かである。
MF鈴木惇の「簡単に倒れすぎているのでは?」というFW豊田へのクレームが引き金になったが、最初の小競り合いが起こった前半24分の場面では明らかに相手選手に上から押さえつけられているのでFW豊田が怒るのは無理もない。冷静なタイプのFW豊田がこれほどエキサイトするのは珍しいが、2度目の小競り合いが起こった前半40分のシーンでは「喧嘩両成敗」で両者にイエローカードが出ても不思議はなかった。
FW豊田は最初の小競り合いのときにイエローカードを受けているので仮に2度目の小競り合いのときにイエローカードが出ていたら退場処分になった。ここではFW豊田に向かってぶつかりに行ったMF鈴木惇に全面的に非があるのは確かであるが、リプレーを見る限りはFW豊田もぶつかりそうになった瞬間にアクションを起こしているので全くの無実とは言えない。せっかくの舞台が台無しになりかねない危うい場面だった。
■ フィッカデンティ監督の初戦前半は荒れた試合になったがハーフタイムを境にして選手たちは冷静さを取り戻した。前半があのような流れになると後半も引きずってもっと荒れる展開になるのはパターンなのでその点では良かった。後半は福岡が盛り返して最後まで分からない展開になったが福岡が攻め込んでいた時間帯に生まれた後半6分のFW岡田翔の2点目のゴールが非常に大きかった。プレッシャーのかかる大チャンスを冷静に決めた。
開幕戦を白星で飾った鳥栖は好発進となったがフィッカデンティ監督の「4-4-2」の機能性はまずまずだった。FC東京のときも「4-4-2」を採用していたが最近ではこのシステムはあまり用いられなくなっており、それゆえに動き等を選手達が理解するまでにある程度の時間は必要となるが最初の試合にしては完成度は高かった。アンカーのMF高橋義を中心にボールもスムーズに回っており、攻撃においても悪くなかった。
「4-4-2」は中盤の両サイドの動きが重要になってくる。FC東京のときはMF羽生とMF米本が起用されることが多かったが、攻守両面でハードワークすることが求められる。ボランチ的な動きも要求されるので「トリプルボランチ」と表現されることもあるが鳥栖ではMF崔誠根とMF金民友の韓国人コンビが起用されている。人一倍のハードワークが求められるが出来としては両名ともなかなか良かったと言える。
フィッカデンティ監督が得意とする「4-4-2」がチームに浸透すると大きな武器になるのは間違いない。福岡の井原監督が試合後のインタビューでコメントした通り、相手にとっても慣れていないシステムなので対処法を見つけるのは難しい。フィッカデンティ監督の古巣となるFC東京も今シーズンはオーソドックスな「4-2-2-2」を採用しており、鳥栖が特異な「4-4-2」をものに出来ると大きな武器になるだろう。
■ システム変更で流れを変えた福岡だったが・・・。一方の福岡は前半29分あたりで「3-4-2-1」から「3-4-1-2」にシステムを変更。MF金森のポジションを前に上げてFWウェリントンとの2トップに変更したことがきっかけとなって流れが良くなった。「3-4-1-2」のときはほとんどいい形を作れなくて守備のときもボールの奪いどころが見つからなかったが2トップになったことで前からの守備が機能するようになった。システム変更で流れを変えることに成功した。
システム変更を実施した後はどちらかというと福岡がペースを握ったが決定機は少なくなかった。後半18分にはFW金森が抜け出して左ポストに直撃するシュートを放っているが五輪代表入りが期待されるMF金森には2つの決定機が訪れた。後半46分にはFWウェリントンに同点の決定機が訪れたが決められず。シュート数では福岡が4本だけ上回ったが、決定機の数でも福岡の方が多かったように感じられる。
決定機が少なくなかっただけに福岡にとっては悔やまれる敗戦となったが早い時期に初勝利を挙げて落ち着きたい。J2だった2015年は開幕3連敗スタートから見事に昇格の切符を勝ち取ったがJ1は試合数が少ないのでリカバーするのも難しくなる。次はホームで横浜FMと対戦するが3節がアウェイの浦和戦であることを考えると『何としても勝ち点「3」の欲しい試合』になる。非常に大事な試合になるだろう。
福岡は若い選手が多いので「彼らがJ1の舞台でどれほどのプレーができるのか?」に注目が集まる。この試合でJ1デビューを飾った18歳のFW邦本のその1人。浦和ユースの頃から注目を集めてきた選手であるが、173センチ/74キロとがっちりとした体格。左足を駆使したドリブルとパスには非凡さを感じる。FW邦本のような若い選手がJ1の舞台で活躍できるとチームとしても勢いに乗ることができるが・・・。
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