■ バトル・ オブ・九州J2は、ギラヴァンツ北九州、サガン鳥栖、ロアッソ熊本、大分トリニータと、九州に4つのクラブが存在する。今シーズンも、「バトル・ オブ・九州」と題して「九州№1の座」を争うことになっており、5月4日のロアッソ熊本とギラヴァンツ北九州の試合が、その開幕戦となった。鳥栖と大分にとっては、この試合が「バトル・ オブ・九州」の開幕戦となる。
昨シーズンは、5勝2敗1分けの成績を残したアビスパ福岡が「バトル・ オブ・九州」を制したが、サガン鳥栖は4勝2敗2分けで2位。3勝1敗4分けのロアッソ熊本が3位、0勝2敗6分けの大分トリニータが4位、0勝5敗3分けのギラヴァンツ北九州が5位と続いた。
ホームの鳥栖は<4-2-2-2>。GK室。DF田中輝、木谷、呂成海、金民友。MF永田、岡本、國吉、早坂。FW池田、野田。DF浦田は出場停止で、DF呂成海がスタメン。エースのFW豊田はベンチスタート。3年目の池田と新人のFW野田の2トップ。5年ぶりのチームに復帰したばかりのFW新居はベンチ外。FW新居は鳥栖でプレーした2005年シーズンは39試合で17ゴール、2006年シーズンは35試合で23ゴール。2年間で40ゴールをマークしている。
対するアウェーの大分は<4-2-2-2>。GK清水。DF刀根、作田、阪田、安川。MF土岐田、宮沢、西、チェ・ジョンハン。FW前田俊、森島。2009年に行われたU-17世界大会の日本代表のDF松原はベンチスタート。デカモリシことFW森島康は4試合で2ゴールを挙げている。
■ FW豊田陽平が劇的なゴール 前半はアウェーの大分ペースで進む。FW森島康が前線で起点になって攻撃をリードすると、前半15分に中盤で鳥栖のMF永田からボールを奪ってカウンター。FW森島康がボールを運んで右足でシュートを放つと、これが豪快にネットを揺らしてゴール。大分が先制する。FW森島康は今シーズン3ゴール目。前半は大分が1対0でリードして折り返す。
ビハインドの鳥栖は、後半16分にFW豊田を投入。これで前線に圧力を加えると、さらに後半28分にはMF永田に代えてDF磯崎を投入。DF金民友を高い位置に上げる作戦に出る。
これが実ったのは後半終了間際。そのDF金民友が左サイドでフリーになって得意の左足でクロスを上げると、ゴール前の大分DFがクリアしきれずオウンゴール。1対1の同点に追いつく。さらにロスタイムの3分過ぎにも、左サイドからまたもDF金民友が左足でクロス。今度は、ファーサイドのFW豊田がヘディングで決めて逆転に成功する。FW豊田が今シーズン2ゴール目。
結局、試合終了間際に2ゴールを奪った鳥栖がホームで劇的な勝利。今シーズン3勝目で勝ち点を「10」に伸ばした。一方の大分は、痛い逆転負けで1勝2敗2分け。勝ち点「5」のままとなった。
■ エースが劇的な逆転ゴール前半は硬さもあったのか動きが重くて、大分の守備陣を崩し切れなかった鳥栖だったが、ロスタイムのエースFW豊田のゴールで劇的な勝利で、バトル・オブ・九州の初戦を飾った。鳥栖は、FW池田とFW野田の2トップだったが、これがあまり機能せずに、ほとんどチャンスを作れなかったが、後半途中から出場したFW豊田が格の違いを見せてチームを勝利に導いた。
北京五輪代表で、オリンピックの本戦でゴールも決めているFW豊田は、昨シーズン34試合で13ゴールを挙げて、J2の得点ランキングでも6位に入ったが、MF本田圭、MF香川、DF長友、DF内田らを当時のチームメイトが出世しているのと比べると、物足りない状況であるが、着実に力をつけており、サガン鳥栖では絶対的なエースとなった。
今シーズンは、鳥栖にしては珍しく、開幕からいいスタートを切っており、昇格レースに加わってきており、当面の目標として、上位に離されないよう食らい付いていきたいが、FW豊田がコンスタントにゴールを重ねていければ決して不可能ではない。劇的な勝利をはずみにしてもらいたいところである。
■ DF金民友が2ゴールに絡む昨シーズンの終盤からコンディションを崩していたDF金民友が今シーズン初スタメン。かなり長い間、コンディションを崩しており、状態が心配されていたが、スタメン復帰戦で2ゴールに絡む活躍で復活をアピールした。始めは左サイドバックでプレーし、途中から少し前のポジションに上がったが、精度の高いクロスは健在だった。
序盤は久々のスタメンということもあって、アグレッシブに戦えていない印象を持ったが、最後までスタミナも落ちずに走り切った。2010年には韓国のA代表にも召集されており、コンディションさえ問題なければ、J2では屈指の実力を持つアタッカーである。FW豊田とのホットラインが成熟していくようだと面白くなる。
■ リードを守れず大分はFW森島康のゴールを守り切りたかったところであるが、MF土岐田が足を攣ってピッチを離れているときに同点ゴールを許し、その後も勢いと止められずに連続失点。ほぼ手中におさめていた勝ち点を取りこぼすことになった。
大分は、今シーズンは元日本ア表の田坂氏を招へいしたが、戦い方は悪くない。GK清水、DF作田、DF阪田のDF陣は安定しており、DF松原、DF刀根、DF安川といった実績の乏しい選手もよく頑張っており、開幕戦も勝利をつかんだが、その後は、若さが裏目に出て、勝ち点を伸ばせずにいる。この試合でも、追いつかれた後の戦いがはっきりせず、試合を落ち着かせてドローに持ち込むのか、攻めに出て行って勝ち越しゴールを狙うのか、どっちつかずだった。
■ デカモリシが3ゴール目決勝ゴールにはならなかったが、大分のFW森島康はポテンシャルの高さを発揮し、素晴らしいパフォーマンスを見せた。後半17分という早い時間に交代してしまった点だけは残念だったが、昨シーズンまでとは見違えるようなプレーを見せて、チームを引っ張っている。
もともとミドルシュートは得意としているが、この日のゴールは彼らしいゴールで、スピードがあって、重たいシュートを打てるのは魅力である。もちろん、ゴールシーン以外でも積極的にプレーし、守備でも、ポストプレーでも貢献した。ここ2年間は全く自分のプレーが出せなかったが、さすがに、U-19、U-20、U-22の日本代表で活躍しただけの選手であることを示した。
パートナーを組んでいるFW前田俊も久々にキレのプレーを見せており、かつて、サンフレッチェ広島やセレッソ大阪で、サポーターから大きな期待を受けたストライカーが、九州のという場所で復活しつつある。これまで、何度も期待を裏切ってきた2トップであるが、今回は信用してもいいかもしれない。
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