■ クラブ史上最大の危機2011年のJ2で2位になって初めてのJ1昇格を果たした鳥栖は、以後、何度も残留争いに巻き込まれながら全て乗り切ってきた。「J1経験がありながらJ2に降格したことがないクラブ」はJリーグの56クラブの中では鹿島と横浜FMと鳥栖の3チームのみとなる。早くもJ1で9年目のシーズンを迎えているが「何度目かのクラブ史上最大の危機」に陥っており、3月18日(水)に日刊スポーツが「チーム存続の危機」と報じた。
2018年の夏に元・スペイン代表のFWフェルナンド・トーレスを獲得するなど拡大路線を進めてきたが財政事情は厳しい。2018年のクラブ決算は5億8,100万円の赤字だった。厳しい状況になったが2019年の開幕前にCygamesとの契約が終了して、2020年の開幕前には胸スポンサーを務めていたDHCが撤退した。どちらも大手スポンサーである。「2つを合わせると10億円以上の広告料だった。」とも言われている。
CygamesやDHCの代わりになるようなスポンサーが見つかれば撤退のダメージは最小限に抑えることが出来たが代わりはなかなか見つからなかった。今シーズンは胸の部分に「佐賀新聞」の名前が入っているが暫定的な処置と言われており、佐賀新聞がプラスαのお金を出して胸スポンサーになったわけではなさそうだ。鳥栖の竹原社長は30億円とも言われる巨額の私財を投入してきたが限界に達しつつある。
新型コロナの影響で世界中がパニックになっており、「鳥栖のチーム存続の危機問題」も新型コロナと絡める報道が出ているが「新型コロナの影響」というのは適切ではないだろう。もちろん、新型コロナの影響は少なからずあるとは思うが新型コロナに関係なく危機的な状況だった。今後、(J2やJ3を中心に)経営的に難しくなるJリーグのクラブが出てくる可能性は高いが鳥栖の問題とは分けて考える必要がある。
■ 30億円とも言われる私財を投入3月19日(木)に日刊スポーツが一面で「チーム存続の危機」と大々的に報じた翌日にお膝元である西日本スポーツが「
鳥栖社長破綻を完全否定、チームに給与確約も…新スポンサーが契約保留」という記事を出しているが竹原社長のこれまでの言動を振り返ると素直に「ああ、そうなのか・・・。」と聞き入れるのは難しい。嘘を言っているとは思わないが「完全否定」と言えるほどの根拠や理由は全くないという印象になる。
例えば「既に年間指定席のチケットが約3億円分、売れている。」と書かれているが2018年の鳥栖の入場料収入は6.78億円になる。過去のスタジアム観戦者調査報告書からシーズンチケットを購入している人の割合はほぼ50%である。具体的に約3億円という数字が出てくると「大丈夫なのでは?」と錯覚する人は一定の割合で出てくると思うが例年と変わらない程度であり、大丈夫な根拠としてはかなり薄い。
「複数の新たな主要スポンサーと契約間近ながら、経済の先行きが不透明なためにサインを保留されている。」というのも胡散くさい話である。「新たなスポンサーが見つかっているが新型コロナの影響で発表できていない。」ということを言いたいのだと思うが、スポンサーと言ってもピンキリである。「どのくらいの規模のスポンサーなのか?」の情報が全くないとよほどの人でない限り、「一安心」とはならない。
社長として「らいふ薬局」を大きく育ててきた人なので経営人としての能力は高いと思われる。また、人間的な魅力を持った人物であるというのも間違いないと思うが、「その場しのぎの発言が多い社長」という印象は否めない。経営不振の責任を取って早期の社長交代を求める声は鳥栖のサポーターから強く上がっているが30億円とも言われる私財を投入していることを踏まえると簡単には引き下がらないだろう。
■ 「地方クラブの最大の成功例」だったが・・・。ある時期までの鳥栖は「Jリーグの地方クラブの最大の成功例」と言えるほどだった。J2で力を蓄えて2012年にJ1に昇格してくるとハードワークするサッカーでいきなり5位と躍進した。2014年も5位と大健闘したがこのあたりの時期の鳥栖は「コストパフォーマンスが異常に優れたクラブ」だった。クラブ規模はJ1の18クラブの中では最小クラスだったがチームが一丸となって戦って力以上の成績を残すことが出来た。
「さらに上」を目指すのは決して間違いではないが、やはり、無理があった。いくつかの大きなミスを犯していると思うが致命傷になったのは2018年のFWフェルナンド・トーレスの獲得である。推定年俸は8億円だったとも言われているが2018年は17試合で3ゴールのみ、2019年も18試合で2ゴールのみ。トータルでは35試合でわずか5ゴールに終わった。コストパフォーマンスはJリーグ史上でも最悪レベルである。
チーム存続の危機という事態になったので、今、掌返しでFWフェルナンド・トーレスを獲得した判断を批判する人が増えているが当サイトでは当初から「危険な賭けだ。」と警鐘を鳴らしてきた。破談になりそうな流れになったときは「これで良かった。」という記事を書いているが「せっかく世界のスーパースターがJリーグに来てくれたのだから水を差すようなことは言うな!」という批判的な意見はたくさん頂戴した。
→ 2018/07/02 【移籍話】 さすがにかっこ悪いよ。FWフェルナンド・トーレスさん。■ 裏目に出たFWフェルナンド・トーレスの獲得駅前不動産スタジアムのキャパシティを考えると例えば名古屋のFWジョーのようにFWフェルナンド・トーレスがゴールを量産した場合でも元を取るのはかなり難しかったと思う。あまりにも無謀な賭けであることは冷静に考えると誰にでも分かる話だったので古くからの鳥栖のサポーターの中には「本当に大丈夫なのか?」と心配する声は少なくなかったがネガティブな方向の指摘はかき消されてしまう空気だった。
「リーグ戦安定開催融資制度の適用」に関してはひとまず竹原社長は否定したが2005年の草津、2008年のFC岐阜、2011年の水戸とは事情は大きく異なる。このあたりのクラブには同情の余地が多分にあったがイメージ的には「2009年に過剰な投資で経営を圧迫した大分」と似ている。この時の大分は何と6億円を借りているが大分と同様で「過剰な投資が原因の経営不振」になると(厳しい言葉を使うと)自業自得である。
2009年のJ1で17位に終わって大分は「J2降格」となったがこの年のオフに流出したのはGK西川、DF森重、DF高橋大、DF上本、MF金崎、MF清武なので錚々たるメンバーである。期限付き移籍だったMF家長も退団しているが主力級の選手のみならず、期待の若手だった当時・20歳のMF清武も売らざる得なくなった。今後、鳥栖がJリーグの助けを請うのであれば主力ならびに有望株の大量流出は避けられない。
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