■ ACL出場権争い J1は33節を終了した。広島の初優勝が決定したため、C大阪・神戸・G大阪・新潟に降格の可能性が残る残留争いに注目が集まっているが、ACLの出場権争いも熾烈である。広島と仙台はすでに出場権を確保しているので、残りの1枚の切符をかけて、鳥栖・柏・浦和・名古屋・横浜FMの5チームが争う形になっている。
勝ち点は、3位の鳥栖が「53」で、4位の柏と5位の浦和と6位の名古屋が勝ち点「52」で、7位の横浜FMが勝ち点「50」で追っているが、最終節は、横浜FM vs 鳥栖、浦和 vs 名古屋と直接対決が組まれている。7位の横浜FMはもっとも苦しい立場であるが、ホームで鳥栖に勝利して、浦和と名古屋の試合が引き分けに終わって、さらに、柏が引き分け以下になると大逆転で3位に浮上することができるので十分にチャンスはある。
この中で、驚きなのは、鳥栖である。2009年は広島が4位となって、2010年はC大阪が3位となって、2011年は柏が優勝するなど、近年、昇格組の活躍が目立っているが、広島やC大阪や柏はJ1経験が豊富なクラブなので、J1初挑戦でACLを狙える位置に付けている鳥栖とは事情は異なる。驚きの度合いは3チーム以上と言える。
■ 前評判の低さ ここで、「J1順位予想バトル」の参加者214人の平均の順位予想を見ると、以下のようになっている。このとおり、鳥栖は「16.72」で最下位である。17位の札幌は「16.54」なので、大差はないが、「鳥栖と札幌は苦戦する。」という予想が多かったので、大方の予想を大きく裏切る結果になっている。
表1 平均予想順位 (214名分)
ランキング | チーム名 | 平均予想順位 |
1 | 名古屋グランパス | 1.53 |
2 | 柏レイソル | 3.00 |
3 | ガンバ大阪 | 3.88 |
4 | 鹿島アントラーズ | 5.25 |
5 | FC東京 | 7.09 |
6 | 横浜Fマリノス | 7.59 |
7 | ヴィッセル神戸 | 7.92 |
8 | 浦和レッズ | 9.59 |
9 | ベガルタ仙台 | 10.00 |
10 | 清水エスパルス | 10.16 |
11 | 川崎フロンターレ | 10.64 |
12 | ジュビロ磐田 | 11.37 |
13 | セレッソ大阪 | 11.39 |
14 | 大宮アルディージャ | 11.47 |
15 | サンフレッチェ広島 | 11.91 |
16 | アルビレックス新潟 | 14.95 |
17 | コンサドーレ札幌 | 16.54 |
18 | サガン鳥栖 | 16.72 |
筆者も、鳥栖を最下位に予想しているが、1月17日の段階で、今シーズンの鳥栖について、以下のような見解を述べている。プラスの要素として、FW豊田とMF岡本の残留を挙げており、不安要素は、J1経験のある選手の少なさを挙げているが、いずれにしても、評価は低かった。
サガン鳥栖
→ 最下位の18位に予想した鳥栖は、FW豊田、MF岡本が残留したのは朗報だが、エースのFW豊田を含めて、J1で実績のある選手がほとんどおらず、J1でどこまでできるか、判断するのは難しい。戦い方としては、J2時代と同様に粘って、セットプレーからゴールを狙いたいが、スローイン(=MF藤田のロングスロー)なり、コーナーキックなりを、どういう形で取ることができるかがポイントになる。
そういう意味でも、カギを握るのはMF金民友だろう。韓国代表のフル代表経験があって、U-22韓国代表にも選出されており、J1でも上位クラスのアタッカーになりうる選手なので、個の力を発揮して攻撃をリードしたい。彼のところでボールがおさまって、周囲の選手を生かすプレーができれば、ゴール前にはFW豊田がいるので、ある程度のゴール数は期待できる。
また、MF岡本とMF藤田のダブルボランチも要注目である。どの試合でも、押され気味の展開になることは確実であるが、ダブルボランチのところで落ち着いて展開できれば、守備陣の負担も減ってくる。J2時代ほど攻撃に関与できないかもしれないが、共に、適応力の高い選手なので、彼らが早い時期にJ1のスピードに慣れてきて、相手のプレスをいなせるようになると、J1残留も見えてくる。
戦力だけを見ると厳しい気はするが、J1は初挑戦なので、とにかくアグレッシブな試合をして、リーグに新風を巻き起こしてほしいところである。
[リンク] → 2012/01/17 【J1】 2012年シーズン 大展望 (下位グループ))
■ 躍進の理由ここで、躍進の理由を考えていくと、以下の5点が思い浮かぶ。
(1) 主力の流出が無くて、さらに、MF水沼、DFキム・クナンと効果的な補強ができたこと。
(2) チームの顔であるFW豊田とMF藤田の2人が、J1でも予想以上に存在感を発揮できたこと。
(3) J2時代と同じスタイルで戦うことができたこと。
(4) 鳥栖のような泥臭く戦うチームがJ1では珍しかったこと。
(5) J1は監督を交代したチームが多くて、これらのチームが本来の力を発揮する前に勝ち点を積み上げることができたこと。
もっとも大きかったのは、(3)の要素である。J2時代から、試合の主導権を握ることにこだわらないチームだったので、J1に上がった後も、戦い方を変える必要はなかった。また、主要メンバーも変わっていないので、継続性がアドバンテージとなった。
ただ、当然、J1とJ2はレベルが違うので、J2時代であれば、「しっかりと守って、セットプレーからゴールを狙う。」と戦いができていても、J1に上がると、守備陣が耐えきれずに失点する可能性は高まる。その点について、上の文章では、「ポゼッション力を高めて、相手に攻撃される回数を減らすことが重要になるのではないか?」という趣旨のことを記述しているが、それよりも、鳥栖の代名詞となった「ロングスロー」が大きな助けとなった。
実際に、MF藤田のロングスローからゴールも生まれているが、それ以上に大きかったのは、相手に攻め込まれたとき場合でも、敵陣でスローインを獲得できれば、相手に傾きかけた流れをストップさせることができる、という点である。ロングスローになると、DFキム・クナンなどが攻撃に参加してくるが、ロングスローを入れるまでに、かなり時間がかかるので、相手の攻撃のリズムを壊すことができる。
204センチのFWオーロイとロングスローの得意なDFミリガンを擁した2011年の千葉もロングスローが大きな武器となったが、それ以上に、鳥栖はロングスローを有効に利用し、得点源としてだけでなく、試合の流れを作ったり、壊す役割も課した。Jリーグの歴史を振り返ってみても、ここまで、ロングスローを武器としたチームは無かったと言える。
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