■ 福西ダービーMF福西崇史を巡る因縁が渦巻く、FC東京とジュビロ磐田が味の素スタジアムで対戦したJリーグ第3節。
FC東京は、五輪代表帰りのMF梶山とFW平山がベンチスタート。1トップにFWルーカスを起用し、右ウイングに石川、左ウイングに鈴木、トップ下に栗沢を配置する。
対するジュビロ磐田は、長期離脱中のFW前田に加えて、MF菊地、MF成岡の2人も欠場。FWカレンの1トップで、MF西とMF太田を攻撃的MFに起用する<4-5-1>。
■ ファブリシオの退場試合は、ポゼッション能力で優る磐田がボールを支配して、FC東京がカウンターでゴールを狙う展開になる。しかしながら、前半36分、磐田のボール回しの中心であるファブリシオが2枚目のイエローカードで退場になると、試合は、それまでとは、正反対の展開になる。
この退場を受けて、磐田はFWカレンに代えて17歳のMF山本康裕を投入。西と太田の2人を前線に残して、カウンターでチャンスをうかがう戦術に転換した。
1人多い東京は、その後、圧倒的にボールを支配するが、なかなか、1人多い優位性を生かしきれず、0対0で前半を終えた。
■ 立ちはだかった磐田の守護神攻めきれないFC東京は、後半13分に石川に代えてFW平山相太を投入。さらに、MF馬場、FWワンチョぺと次々に攻撃的な選手を投入し、チャンスを生み出すようになるが、FC東京の攻撃に立ちはだかったのが、この試合から復帰したGK川口。
試合を通じて、20本あったFC東京のシュートをことごとくストップ。そんな中、後半37分、セットプレーから、この試合唯一のゴールが生まれる。磐田の五輪代表の上田のFKから、DF鈴木秀人が合わせて先制。1対0で磐田が貴重な勝利を挙げた。
■ 素晴らしい気迫で勝利をつかんだジュビロイレブン前半36分にMFファブリシオが退場し10人となった磐田だったが、集中力が切れることはなく、粘り強い守備で勝利をもぎ取った。なかでも、アトランタ五輪を経験している、ベテランのDF田中誠、DF鈴木秀人、GK川口能活の3人の活躍ぶりは、目を見張るものがあった。
点数がたくさん入る試合はエキサイティングだが、たまには、こういうDFやGKの奮闘振りがクローズアップできる試合があってもいい。おそらく、ロスタイムがあと15分あったとしても、FC東京はゴールを奪えなかっただろう。
■ 西の気迫と太田の気迫DFとGKだけでなく、太田と西の前線での奮闘も忘れることは出来ない。太田は尽きることのない運動量で前線をかき回し、西も鋭いドリブル突破と献身的な守備で大きく貢献した。
皮肉にも、前半途中でFWカレンがピッチを去って、純粋なフォワードがいなくなった後の方が、太田と西が生き生きしているように見えた。FW前田がいない中、カレンとどういう関係を築くことができるかは非常に重要であるが、だが、まだ解決できていない課題である。
■ 新しいチームが見せた新しい魅力ジュビロ磐田は、チーム創設当初から、きれいなサッカーで勝利をつかんできた。名波浩と藤田俊哉を中心に華麗なパスワークが、チームのストロングポイントだった。それは、今のアジウソンのチームにも受け継がれる伝統である。
しかしながら、そんなチームが、この試合では新しい一面を見せた。泥臭い戦いのなかで、チーム全員でもぎとった勝利。この勝利は、非常に大きい。開幕戦で0対4という予期せぬ敗戦を喫したジュビロ磐田だったが、この試合の勝利でそのダメージも吹っ飛ぶことだろう。
■ 攻撃に課題を抱えるFC東京対するFC東京は、開幕戦の広島戦よりも、かなり守備に重点を置いており、磐田のカウンター対策はそれなりに出来ていたが、攻撃面では、まだまだ課題を多く抱えている。
サイドバックの伊野波と金沢がオーバーラップで味方をサポートしたり、トップ下の栗沢がサイドに回って味方のチャンスを拡大しようとする動きはなく、個人能力に頼った攻撃が多かった。
両ウイングの生かし方にも疑問が残った。右に石川、左に鈴木というサイドアタックのスペシャリストを配置し、サイドから攻撃をしたいという意図は見えるが、サイドで彼らがボールを持ったときのサポート意識が気迫で、単独突破に頼るしかなかった。
さらに、2人のポジショニングが、サイドに張り付くのか、中に入って仕事をするのか中途半端になっていて、攻撃に幅を作ることが出来なかった。両サイドに同タイプのウイング的な選手を配置するのであれば、もう少し、ふたりの仕事を明確にしておきたい。結局、攻撃的な選手は多いものの、そのタレント力に見合っただけの攻撃的なサッカーを披露することはできなかった。
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