■ プレーオフJ1昇格プレーオフの準決勝。リーグ戦で3位の京都サンガと、リーグ戦で6位の大分トリニータが西京極陸上競技場で対戦した。両チームは10節と33節で対戦しているが、大分が2連勝している。大分は2009年にJ2に降格したときは、西京極で降格が決定している。今回で、嫌な思い出を払しょくしたい。
ホームの京都は「4-2-3-1」。GK水谷。DF安藤、染谷、バヤリッツァ、黄大城。MFチョン・ウヨン、福村、工藤、中村充、中山。FW駒井。フォワード陣は、FW原、FW宮吉、FWサヌがベンチスタートで、U-19日本代表から戻ってきたFW久保と長身ストライカーのFW長沢はベンチ外となった。中心選手のMF中村充はリーグ戦は41試合で14ゴールを挙げている。
対するアウェーの大分は「3-3-2-2」。GK丹野。DF土岐田、阪田、安川。MF宮沢、丸谷、永芳、三平、チェ・ジョンハン。FW森島康、木島。得点源のFW森島康は37試合で14ゴール、MF三平は39試合で14ゴールを挙げている。ベテランで元日本代表のFW高松、京都でプレーした経験のあるFW林、レフティのMF村井らがベンチスタートとなった。
■ 4対0で大分が勝利!!!試合は前半17分にアウェーの大分が先制する。左サイドでFKを得ると、FW森島康がファーサイドに蹴ったボールがそのまま決まって大分が先制する。さらに、前半33分にも、MFチェ・ジョンハンが左サイドを突破してクロスを入れると、FW森島康が左足でうまく合わせて2対0とリードを広げる。前半は2対0と大分がリードして折り返す。
後半開始から京都はMF中山に代えてMFサヌを投入し、FW中村充の1トップ気味の布陣に変更すると、後半6分にMF駒井のドリブルからMFサヌが抜け出して決定機を得るが、決めることはできない。すると、後半15分に京都のバックパスの処理ミスを拾ったFW木島がペナルティエリア内で倒されてPKを獲得。さらに、DF染谷にはレッドカードが出されて2点ビハインドの京都が10人となる。
これで得たPKをFW森島康が確実に決めてハットトリックを達成すると、その後も、数的優位の大分が試合を支配して、後半45分にはMF三平のパスを受けたFW森島康が右サイドからネットを揺らして4対0とリードを広げる。FW森島康はこの日は1人で4ゴールを挙げる大活躍を見せた。
結局、試合は4対0でアウェーの大分が勝利して、決勝進出が決定。11月23日(金)に国立競技場で行われる決勝戦で千葉と対戦することが決定した。一方の京都は、もっとも有利な立場でプレーオフを迎えたが、まさかの大敗でJ1復帰はならず。2013年もJ2で戦うことが決定した。
■ プレーオフの是非J1昇格プレーオフは、3位の京都と6位の大分、4位の横浜FCと5位の千葉の対戦となったが、いずれも、下位チームが4対0で勝利するという予想外の結果に終わった。リーグ戦で対戦した時は、大分と千葉が2連勝しているので、相性のいいチームが相手だったが、「引き分けでもOK」という上位クラブが、ともに大差で敗れるとは、誰も予想することはできなかった。
大分というと、2009年は西京極で悔しい思いを経験しているが、今度は、歓喜の瞬間を迎えた。セットプレーから先制して、相手のミスからPKを得るというラッキーもあったが、終始、大分が試合のペースを握っており、内容でも大分が圧倒した。横浜FCに勝利した千葉にも同様のことが言えるが、文句なしの勝ち上がりであり、大一番で勝負強さを発揮したのは見事だった。
プレーオフ制度に関しては賛否両論あって、「リーグ戦の順位が下だったチームが勝ちあがるのはいかがなものか?」という意見は根強い。プロ野球のクライマックスシリーズでも、同じようなことが言われ続けているが、個人的には、シーズン前から決まっていたルールなので、仕方がないことであり、だからと言って、リーグ戦の価値が下がるわけでもないし、不公平というわけでもない。
■ 影のヒーローたちヒーローになったのは、言うまでもなく、FW森島康である。彼については、今回は、簡単に触れるだけにとどめるが、最初のFKが見事で、これで試合の流れを完全に引き寄せることが出来た。ゴール正面の位置でFKを得たとき、「ドカーン」というシュートを打つケースはよく見るが、ああいったコントロールしたFKを決めるのは、初めて観たので驚いた。
当然、FW森島康がMOMと言えるが、MF丸谷、MF永芳、DF阪田の3人も良かった。MF丸谷は2列目のポジションで起用されているが、運動量豊富に動いてこぼれ球を拾って、守備のときは、献身的にプレーして、京都のストロングポイントである2列目に自由を与えなかった。攻撃面では、頻繁にチャンスに絡んだわけではないが、貢献度は非常に高かったといえる。
筑波カルテットの1人のMF永芳は、シーズン中はスタメンで出場したのは5試合だけで、途中出場を含めても、7試合にしか出場していないので、チャンスは少なかったが、終盤の40節・41節・42節でスタメン出場して田坂監督の信頼を勝ち得ると、この日も、2列目でしっかりと起点となる仕事をこなして、決定機にも絡んだ。ビッグチャンスを決められなかったのは課題と言えるが、なかなかのパフォーマンスを見せた。
最終ラインの中心のDF阪田は守備の要であり、今シーズンは、J2の年間ベストイレブンにも値するようなハイパフォーマンスを見せてきたが、プレーオフでも、印象的な仕事を見せた。178センチなので、高さはないが、スピードがあって、アプローチの早さと的確な潰しは、J2では屈指のレベルである。また、汚いファールと言うのがほとんどなくて、クリーンなところも好感が持てる。
これで、大分は決勝進出が決まって、千葉と対戦することになったが、舞台は国立競技場なので、中立地とは言っても、アウェーの雰囲気になることが予想される。これは、大分にとっては不利な要素と言えるが、国立競技場には、いい思い出があるはずである。千葉は、近年にないほど、調子がいいので、難しい試合になると思うが、いい試合になることを期待したい。
■ 昇格ならず・・・一方の京都は、11日(日)の試合で自動昇格のチャンスを得ながら、甲府と引き分けでチャンスを逃したという悪い流れを引きずっていて、いいときの京都のサッカーを見せられなかった。自動昇格が目の前にあった中で、3位に転落してプレーオフに進んできたので、精神的には難しかったと思うが、上手く気分転換することが出来ず、序盤から雰囲気は良くなかった。
試合の行方を左右するポイントの1つになったのは、MFサヌの逸機である。0対2になった後、後半6分に途中出場のMFサヌが決定機を迎えて、これが決まっていれば、試合は分からなくなったと思うが、シュートは枠に飛ばず、絶好のチャンスを逃してしまった。それほど多くのチャンスがあったわけではないが、ここで1点差になっていれば、大分はプレッシャーがかかったと思うが、決めきれなかった。
DF染谷の退場シーンに関しては、バックパスのミスがあって、慌ててしまったところもあったと思うが、ボールに乗り上げるという考えにくいプレーが発生して、その後、FW木島を後ろから倒してしまった。ボールにタックルしているようにも見えるが、ボールを失った後のチャージなので、印象は良くない。PK&退場になったことで、大分の勝利の可能性が限りなく高くなった。
■ CFWの不在ということで、京都は昇格の可能性がなくなったが、昨年の天皇杯では準優勝に輝いて、今シーズンの開幕前は、「昇格候補の筆頭」と言われており、余裕を持ってJ1に昇格できるだけの戦力を有していたので、受け入れがたいことであり、J2に降格した後、比較的、順調に来ていた再建への道が大きく狂ってしまった。
ありきたりな意見になってしまうが、今シーズンは、センターフォワードで苦労した。FW久保、FW宮吉、FW長沢、FWサヌ、FW原ら、候補はたくさんいて、どの選手もレギュラーとして固定されれば、10ゴール以上をマークしてもおかしくないだけのポテンシャルを持っているが、最後まで、軸を決めることができなかった。終盤になると、FW駒井を起用するようになって、一定の成果を得たが、最終節の甲府戦とプレーオフの大分戦では不発に終わった。
言うまでもなく、FW駒井は2列目タイプの選手である。京都というよりも、大木監督のサッカーの特徴と言えるが、大木監督はショートパスを駆使した魅力的なチームを作るが、就任してから時間が経過して、大木サッカーが熟成されていくと、ショートパスにこだわり過ぎるようになって、うまくいかなくなる。2007年の甲府がそういう症状に陥ってJ2降格となったが、攻撃陣の中に異質な存在がいないと、「パスは回っているが点は獲れない。」という状況に陥っていく。
今年の京都で、そういった異分子的な存在になれる可能性があったのは、相手を背負った状態でも精度の高いプレーができるFW久保か、爆発的なスピードを持ったFWサヌあたりであるが、FW駒井の1トップになると、MF中村充やMF工藤やMF中山などとリズムが同じなので攻撃が単調になってしまう。
もちろん、1トップで起用されるようになった後のFW駒井は、MF中村充に負けない存在感を示しており、勝利にも貢献したが、FW駒井の1トップが機能しなかったときの選択肢が用意されておらず、うまくいかない状況を打破する術を持たなかったと言える。
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