■ 勝たなければ降格勝って勝ち点「3」を取らなければJ2降格が決定する、という厳しい試合が続いている18位の大分トリニータ。しかしながら、最近の5試合は2勝3分けと遅まきながら調子が上がってきている。
ホームの京都は<4-2-3-1>。GK水谷。DF増嶋、水本、森下、李正秀。MFシジクレイ、柳沢、中山、中谷、ディエゴ。FW林。出場停止明けのDF李正秀が左サイドバックに入り、DF森下がセンターバックに入る。MF安藤とMF佐藤勇は怪我で欠場し、MF中谷のポジションが1列上がって左サイドハーフ。1トップでFW林。
対するアウェーの大分は<3-4-2-1>。GK西川。DF深谷、藤田、菊地。MF東、エジミウソン、家長、チェ・ジョンハン、金崎。FW高松。DF上本が出場停止で、菊地と東のポジションが1列ずつ下がって、U-20韓国代表のFWチェ・ジョンハンがスタメン出場。
■ 勝ち越しゴールは生まれず・・・試合は前半6分に大分が先制する。左ウイングバックに入っているMF高橋が中央に切れ込んでミドルシュート。これが決まって先制する。さらに、大分に追い風が吹いて、前半12分と前半14分に京都のDF李正秀が続けざまにイエローカードを受けて退場。前半14分という早い段階で京都は10人となる。
これで完全に有利に立ったはずの大分だったが、前半21分にMFシジクレイのロングパスを受けたFW林に抜け出しを許して同点ゴールを奪われる。これで1対1となる。
勝ち越さなければいけない大分は、後半に攻撃的な選手を投入するが、後半13分に攻撃の要になっていたMF家長が負傷で交代し、意気消沈。後半31分にはFW前田を投入するが、効果的な交代策にはならず。
結局、10人の京都を崩しきれずに1対1のままで終了。7年間守り続けたJ1の座から転落し、来シーズンはJ2での戦いが待っている。一方の京都は勝ち点「1」を獲得した。
■ 降格が決定大分はここ6試合で2勝4分け。ようやくポポヴィッチ監督の目指すサッカーが浸透してきて、勝ち点を稼げるようになったが、あまりにも14連敗中に失った勝ち点が響いた。
昨シーズンはナビスコカップを制し、リーグ戦も4位。順風満帆のシーズンを送って、ステップアップを図った2009年であったが、怪我人の続出、フロントとサポーターのゴタゴタ騒ぎなど、複合的な要因が絡んで、30節という早い時期でのJ2降格が決定。2010年はJ2からのやり直しとなる。
シャムスカ監督を斬るべきか否か、どのタイミングで斬ればよかったのかについては、散々、これまでにも議論されてきたことであるが、ようやく、ここに来てポポヴィッチ監督の目指すサッカーの形が出来てきている事を考えると、「もう少し時期に決断していれば・・・」となるが、それは結果論でしかない。
■ 家長の負傷退場10人の相手を攻めきれなかった要因の1つになったのが、後半13分のMF家長の交代。DF坪内を入れて3バックから4バックに変更したが、大きな効果はなく、右サイドで起点になっていたMF家長不在の影響は大き過ぎた。
ポポヴィッチ監督のスタイルがようやく実を結んできた大きな理由は、MF家長の存在であるのは間違いなく、彼が確実に右サイドで起点を作って、ドリブルで仕掛けてチャンスを作ることが攻撃の最大の武器になっていただけに、彼不在で攻撃の迫力は3割減となった。
怪我の程度ははっきりとは分からないが、もう少し頑張れば、プレー出来たのではないかとも思う。実際に足を引きずっていたものの、全く動けない状態ではなく、交代するまでの数分間はピッチ上に残ってプレーしていた。チームの降格がかかっている大事な試合である。自分が外れれば、攻撃力が大幅にダウンすることは本人もよく分かっていたはず。少しくらい足が痛くても、限界近くまでプレーを続けるような気概を見せてほしかった。
■ 高松大樹の涙降格が決定したあと、一番、悔しがっていて、一番、涙を流していたのがFW高松。今シーズンのFW高松は3ゴールのみ。シーズン途中にFWウェズレイが突如、引退し、完全移籍で獲得したFW森島康仁も全く戦力にならない状態。彼がやるしかない状態に追い込まれていたが、コンディションは良くなかったようで、本人も悔いが残っているだろう。
大分の生え抜きで10年目。J2時代を知る数少ない選手の1人であるが、責任感の強い選手でもある。フォワードの柱としての責任と、チームリーダーとしての役割を課せられたFW高松にかかる負担は大き過ぎたのかもしれない。
GK西川、DF森重、MF金崎と日本代表を経験した生え抜きの若手選手もいるが、彼らはチーム全体のことを考えるにしては若すぎた。
■ 1年での昇格は可能か?経営的な問題もあって、数名の日本代表クラスの流出は確実となっているが、彼らが抜けたとしてもそれ以外の主力選手の多くがチームに残るようだと、戦力的に考えても、1年での再昇格は可能である。もともと若い選手の多いチームであったが、シーズン後半になって、MF東やFWチェ・ジョンハンといった若い選手が試合に出るようになって来てきている。明るい兆しはある。
約2万人を動員している観客動員がどの程度、落ち込むのかは分からないが、サポーターの数でいうと、J2では屈指の存在であり、昇格候補の1つであることは間違いないところである。ただ、J2は何が起こるのかは分からないし、若手だけで乗り切れるほど甘いものでもない。J1とは違って、毎試合、勝ち点「3」を要求される戦いは、精神的にも非常に苦しいものであり、これは、J1から降格チームのここ数年のJ2での成績を見てみれば、すぐに分かるものである。
降格が決まってしまった以上、すぐにでも来シースンの準備に取り掛からないといえない。そうしないと、開幕から躓いて取り返しのつかないことになる。
■ 10人になりながらも・・・ 京都はDF李正秀が早々に退場し、10人になりながらも、よく追い付いてドロー。勝ち点「1」をゲットし、残留に近づいた。
ここ最近のDF森下のプレーが良かったので、そのままDF森下をセンターバックで起用し、DF李正秀を左サイドバックに回したが、これが裏目に出た。リズムが違ったのか、感覚が違ったのか、DF李正秀は自分を制御できずに、あっさりと2枚のイエローカードをもらって退場となってしまった。
チームの苦境を救ったのがFW林。1トップで久々に持ち味を発揮し、スピード溢れる突破は驚異的であった。ジェフを退団した後、ここ数年は思うような出場機会を得ることが出来ずに苦しんでいたFW林であったが、まだこれだけのスピードを持っていたのか、と驚かされた。
■ 期待のFW金成勇京都は後半23分にFW林に代えて新人のFW金成勇を投入。この日のFW林のプレーはキレキレで、少しでも引っ張りたい気持ちも理解できるが、FW林は前半から相当に動いていて、スタミナが切れかかっていたので、も少し早いタイミングで交代しても良かったように思う。
代わりに入ったFW金成勇は無名の存在ではあるが186cmと高さもあって、北朝鮮国籍の選手に特有の体の強さがあって、非常に面白い存在である。磐田のGK川口と激突して負傷させてしまったというアクシデントがあって、マイナスイメージを持たれることもあるが、層の厚い京都のフォワード陣の中でこれだけチャンスを得ているのはタダものではない。
■ 育ちつつある若手2008年シーズン前に大補強を行って、悲願の残留を果たした京都。今シーズンも残留は確実といえる状況になった。エレベーターチームと言われたクラブが2年連続でJ1に残って、来シーズンは3年目となる。
今シーズンのスタメンを見ても、センターラインはGK水谷、DF水本、DF李正秀、MF佐藤勇、MFディエゴ、FW柳沢と軸はしっかりとしていて、その軸の選手を固定しつつ、DF渡邊大剛、MF安藤、MF中山、FW金成勇といった生え抜きの選手を組み合わせて、いいチーム構成になりつつある。
今シーズンはもう仕方がないが、基本的には、もっと上を目指すことの出来る戦力であり、もっと上の野望を持つべきではないかと思う。その手始めとして、まずは続投が決定的という報道もある加藤久監督で本当にいいのかどうなのかを、考える必要があるだろう。
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