■ ナビスコカップ決勝カップ戦日本一を決めるナビスコカップのファイナルゲーム。クラブ史上初のタイトル獲得を目指す大分トリニータと12年ぶりの栄冠を目指す清水エスパルスの対戦。
ホーム扱いとなる大分は<3-5-2>。GK下川。DF深谷、森重、上本。MFエジミウソン、ホベルト、高橋、藤田、金崎。FWウェズレイ、高松。ベンチには、FW森島康、MF家長が控える。MF鈴木慎は出場停止。
対する清水は<4-4-2>。GK山本海。DF岩下、青山、高木、児玉。MF伊東、兵働、山本真、枝村。FW原、岡崎。DF市川、FW矢島がベンチに控える。
■ ハイテンションの攻防から・・・前半から両チームがハイテンションでぶつかり合う展開となった。
大分は何度か右ウイングバックのMF高橋がサイドでフリーになってクロスを上げるが、精度を欠いてチャンスにはつながらない。一方の清水は、フレッシュな前線が個人技を生かして大分守備陣の攻略にかかる。
前半は、大分がMFホベルトのシュートがポストに弾かれるというシーンを作り、一方の、清水はセットプレーからDF高木がゴール前正面でフリーでシュートを放つシーンを作ったが、共にゴールを割ることは出来ずに0対0で前半を終えた。
■ 悲願の初タイトル後半は立ち上がりは清水がペースを握る。FW岡崎がうまくボールに絡んで前線で起点となるが、期待のMF枝村とMF山本真のコンビが思うように流れに乗れない。
すると、0対0で迎えた後半23分に大分が右サイドに流れたMF金崎のクロスからファーサイドのFW高松が打点の高いヘディングシュートを決めて先制すると、さらに、後半44分にもMF金崎のスルーパスからFWウェズレイがゴールを決めて2点リードを奪った。
結局、スタイム6分を含めて96分間、全ての選手が集中した大分が2対0で勝利し、クラブ初タイトルを獲得。九州勢としても初めてのタイトルとなった。
■ エースの決勝ゴールなかなか先制ゴールは奪うことは出来なかったが、結局は、経験豊富な選手の多い大分が若い清水を押し切った形となった。
初タイトルをもたらす決勝ゴールを挙げたのはFW高松大樹。今シーズンは怪我に悩まされていて、シーズン途中に加入してきたFW森島にスタメンを譲る機会が多かったが、大一番でスタメンに起用されて、見事なゴールを奪った。
全体的な動き自体は、まだ本調子とはいえない状態ではあったが、ファーサイドからあれだけの高さでネットを揺らすことが出来る選手は他には少ない。日本代表からも遠ざかっていて、苦境の時期を過ごしていただけに、ドラマチックな出来事となった。
■ 大分のサッカーは守備的か?①今シーズンはリーグ戦でも優勝争いに絡んでおり、クラブ史上最高のシーズンを過ごす大分トリニータだが、一方で、「守備的な退屈なサッカー」と揶揄されることもある。リーグ戦では30試合で31得点で23失点。確かに、大分の試合は対戦相手も含めて得点が入る確率は高くない。
ただ、「みんなで守備を固めてカウンター」というありきたりなサッカーではないことは、一目瞭然であり、しっかりとボールをつないで崩す形に持ち込むことも少なくない。よって、「単なる守備的なサッカー」と切り捨てるには、あまりにも惜しい。
守備の強さの基盤となっているMFエジミウソンとMFホベルトのダブルボランチは、正真正銘のダブルボランチであり、攻守両面でどちらに重心を傾けることなく、絶妙なバランスで舵取りを行う。こういうタイプの選手が1人でもチームに在籍すればチームの総合力は格段にアップするはずであるが、大分の場合、そういう核になりうる選手が2人もいる。
また、それ以外の中盤にも、むしろ、MF金崎、MF高橋、MF鈴木といった魅力的ななタレントが集まっていて、どこからでも点が取れそうな雰囲気はある。
■ 大分のサッカーは守備的か?②したがって、順位表だけを眺めて、「失点数が少ないから、守備的で面白くないサッカー」とは表現できないし、また、逆に、「得点数が多いからと言って、攻撃的で魅力的なサッカー」とはいえない。
あえて、どういうものが魅力的なサッカーかを定義すると、「個々の選手がその個性を殺すことなく、それでいてチームとしても機能性を保っていること」だといえる。
今シーズン、シャムスカ監督の育てた大分トリニータのサッカーを見ると、見る人にどれだけ『サッカーを観戦する力』が備わっているかを試されているようである。安易な論評は出来ない。
■ 九州にカップが渡った日九州地区には、高校年代には、国見高校、東福岡高校、大津高校、鹿児島実業高校といくつもの強豪校があって、サッカー熱は高く、競技レベルも常に全国トップクラスで、日本代表に育っていった選手も多い。
ただ、どういうわけか、Jリーグ誕生以後、なかなか、九州のクラブにタイトルが渡ることはなかった。大分トリニータ以外にも、アビスパ福岡とサガン鳥栖とロアッソ熊本と4つのクラブが存在するが、J1チームは、大分だけ。生みだしてきた優秀な人材の割には、アウトサイダーでしかなかった。
しかしながら、今回、初めて大分がタイトルを獲得した。この影響は、小さくはないだろう。トップリーグの先輩であるアビスパ福岡が、このまま、J2で埋もれたままで辛抱するはずもなく、目の色を変えて、強化に励んでくるはずである。
前述のように、九州地域からは優秀なタレントが続々と生まれているが、九州の子どもたちが、身近なところに、夢を重ねられる存在のクラブがあるということは、ストレートに競技力アップにつながってくるだろう。
この日は九州地区のサッカー界にとって、大きな第一歩であり、メモリアルな日となった。
おめでとう!大分トリニータと大分トリニータにかかわる全ての人たち。
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ナビスコカップ 大分 vs 清水(まおうの勘違い評論さん)
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