■ 第28節J1の第28節。1勝19敗7分けで勝ち点「10」の大分トリニータ(18位)と、11勝5敗11分けで勝ち点「44」のセレッソ大阪(6位)が大分銀行ドームで対戦した。J1は残り7試合となって、15位の甲府の勝ち点が「29」なので、大分はこの試合で敗れると、最高でも勝ち点「28」にしかならないので、J2降格が決定する。一方のC大阪は首位の横浜FMとの差が「8」なので、優勝争いに踏みとどまるためには、落とせない試合である。
ホームの大分は「3-4-2-1」。GK丹野。DF阪田、高木和、安川。MF為田、ロドリゴ・マンシャ、松原、チェ・ジョンハン、土岐田、木島。FW森島康。古巣対決となるFW森島康はチームトップの7ゴールを挙げている。司令塔タイプのMF木村とMF梶山はベンチスタートで、運動量のあるMF土岐田とMF木島が2列目に入る。23試合で5ゴールを挙げている元日本代表のFW高松もベンチスタートとなった。
対するアウェーのC大阪は「4-2-2-2」。GKキム・ジンヒョン。DF酒本、藤本、山下、丸橋。MF山口螢、扇原、枝村、南野。FW杉本、柿谷。26節の磐田戦と同じ「4-2-2-2」を採用して、ロンドン五輪代表のFW杉本が2トップの一角でスタメン出場となった。怪我で離脱していたリオ世代のMF南野は21節の清水戦以来のスタメンで、MFエジノとMFシンプリシオはベンチスタートとなった。日本代表のFW柿谷は27試合で16ゴールを挙げている。
■ 2対0でC大阪が勝利試合の序盤はC大阪ペースとなる。しかし、前半15分あたりを過ぎると、ホームの大分も攻撃の形を作るようになる。イーブンの展開となったが、前半33分にC大阪の右SBのDF酒本が右足のアウトサイドでファーサイドにトリッキーなクロスを入れると、FW柿谷が難しい体勢からうまく中央にボレーで折り返して、最後は、ゴール前に入っていた18歳のMF南野が頭で押し込んでアウェーのC大阪が先制する。MF南野は今シーズン2ゴール目となった。
負けると降格が決まる大分は、MF木村、MF梶山、FW高松を投入。FW森島康とFW高松の2トップにして、ツインタワーでゴールを目指すが、セットプレーを除くといい形を作れない。対するC大阪はカウンターを中心に何度か決定機を作ったが、FW杉本やFW柿谷が決められず。1対0のままロスタイムに突入するが、後半47分にMF枝村のパスからGKと1対1のチャンスを得た途中出場のMFエジノが決めて試合を決める2点目のゴールを奪う。
結局、試合は2対0でアウェーのC大阪が完封で勝利して9試合負けなし。16位以下に落ちる可能性がなくなって、残留が決定した。一方の大分は途中出場の3人が入ってからは、前から積極的にボールを奪いに行く姿勢を見せて、セットプレーで惜しいシーンを作ったが、GKキム・ジンヒョンを慌てさせるようなシュートを打つことはできず。残り6試合で全勝したとしても、勝ち点「28」止まりで、15位の甲府を抜くことは出来ないので、J2降格が決定した。
■ 好プレーを見せた杉本健勇C大阪は8試合負けなし中だったが、楽な展開にはならなかった。1対0の時間帯が続いて、試合を決める2点目のゴールがなかなか決まらなかったので、クルピ監督はフラストレーションをためていたと思うが、ロスタイムにMFエジノがネットを揺らして、大分のわずかな望みを断ち切って引導を渡すことになった。終盤戦に入って、得失点差も重要になってくるので、1対0で終わらずに2点目を獲れたことは、今後、利いてくるかもしれない。
この日は、MFエジノとMFシンプリシオとMF楠神がベンチスタートになって、MF枝村とMF南野とFW杉本がスタメンで起用されたが、FW杉本が高いパフォーマンスを見せた。ゴールやアシストといった目に見える結果を残すことはできなかったが、ほぼ完ぺきにポストワークをこなしており、FW柿谷との連携も非常に良かった。運動量も多くて、サイドに流れて起点になるプレーもできており、MOM級の活躍だったと言える。
ただ、決定機に決められなかったことは、反省材料である。途中出場も多いので、出場時間は満足に得ることが出来ていないが、リーグ戦では1ゴールにとどまっている。惜しいシーンはたくさんあるので、1つ決まると、どんどんとゴールが増えていきそうな感じもするが、きっかけとなる今シーズン2点目のゴールがなかなか決まらなくて、力んでしまうのか、ゴール前になると落ち着いてシュートを打つことが出来ていない。
これだけのサイズがあって、運動量があって、守備もしっかりこなして、ポストプレーもできるので、あまり点が獲れなくてもチームに貢献できるタイプのCFである。こういう感じのCFは、それほど多くないので、どのチームでも重宝されているのは事実だが、FW杉本の場合、チームの中のタスクをこなしつつ、エースストライカーとなって、自らゴールを射止めるだけの能力があると思うので、23試合で1ゴールという数字は寂しいものがある。
■ ホーム未勝利で降格決定・・・一方の大分は16試合勝ちなしで、J2降格が決定した。2012年は劇的な形でプレーオフを制して4年ぶりのJ1復帰を決めたが、わずか1勝だけ。12節にアウェーのビッグスワンで新潟に勝利しただけなので、ホームでは未勝利が続いている。サポーターは、ホームで勝つ姿を観ることを何よりも楽しみにしていると思うので、選手や監督やスタッフはもちろんのこと、久々にJ1に戻ってきて、活躍を期待していたサポーターにとっては、辛いシーズンになっている。
2012年の札幌は4勝28敗2分けで勝ち点「14」だったので、1試合平均の勝ち点は「0.412」だったが、今シーズンの大分は28節を終えた段階で勝ち点「10」なので、1試合平均の勝ち点は「0.357」となる。勝ち点のペースでは2012年の札幌よりも下となる。残りは6試合となったが、頑張らないといくつかのワースト記録を塗り替えて、J2に降格することになる。できるだけ不名誉な記録は作りたくないので、最後まで、気持ちを切らしてはいけない。
大分はJ2で6位になって、そこからプレーオフを勝ち抜いてJ1に上がって来たので、「やっぱりJ2で6位のチームがJ1で戦うのは無理だ。」という声が出てきても不思議はない。こういう成績なので、その意見を強く否定することは難しいが、ではでは、残留できる可能性がゼロに近くて、他の17チームと比べて天と地ほどの差があったかというと、そういう感じはしない。やり方次第では、そして、もう少し運があれば、残留できてもおかしくない戦力はあったと思う。
■ 「場違い」だったか?1勝20敗7分けという成績だけを見ると、「場違い」と言われてもおかしくないほどの差があるかのように感じるが、試合を観ていると、こんな成績に終わるようなチームではないことは分かる。先制する試合も多くて、大差で敗れる試合はほとんど無くて、紙一重の試合はたくさんあった。そのことは、実際に対戦した相手チームのサポーターが、一番、良く分かっていると思うし、大分のサポーターも「そこまでの差はなかった。」と感じている人が多いと思う。
そのことは、決定機の数であったり、支配率であったり、シュート数であったり、数字でも証明できると思うが、リードを奪った後の戦い方というのが、最後まではっきりしなかった。逆転負けが非常に多かったが、J2の頃は、もっと割り切って、「守る時は人数をかけてしっかりと守る。」という意識が統一されていたと思うが、J1昇格を果たして、変に自分たちのサッカーを貫くことに意識が傾いてしまって、勝ち点を取り逃がしてしまった印象はある。
J2降格が決まるというのは、サポーターにとっては、最も辛い出来事の1つと言えるが、どうしようもないほどの実力差がある場合は、サポーターも割り切って、早く気持ちを切り替えることができるが、今シーズンの大分に関しては、「もう少しうまくできたのではないか。」、「やりようがあったのではないか。」という感情は誰しもが抱いていると思うので、サポーターも気持ちを切り替えるのが難しいかもしれない。
今、振り返ってみると、3節の浦和戦(H)と5節の甲府戦(H)と21節の浦和戦(A)の3つがポイントだった。3節の浦和戦は2対0から同点に追いつかれてドローで、5節の甲府戦は終了間際に決勝ゴールを許して0対1で敗れて、21節の浦和戦はアウェーで前半20分までに3対0とリードしながら、その後、4ゴールを許して3対4で敗れた。このうちのどこかで勝ち点「3」を得ていたら、全く違った展開になったと思うが、勝利に結びつかなかった。
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