■ ラウンド16で敗退・・・ACLはラウンド16に突入したが、予選リーグを勝ち上がった名古屋・FC東京・柏の3チームは、いずれもアウェーで敗れたため、ベスト8に残ることはできなかった。2011年はC大阪がダービーを制してベスト8に進出したが、鹿島・名古屋・G大阪はラウンド16で敗れている。したがって、ここ2年で見ても、同国対決となったC大阪を除く6チームすべてがラウンド16で敗退しており、ラウンド16は、完全に鬼門となっている。
ネックとなるのは、ラウンド16が一発勝負で、首位通過したチームのホームスタジアムで開催されるという点である。2011年の鹿島・名古屋、2012年の名古屋・FC東京・柏は、すべて2位でグループリーグを通過したため、ラウンド16がアウェーゲームとなった。日程上の問題で仕方ないのかもしれないが、大事な決勝トーナメント1回戦で、H&A方式が採用されていないことに関しては、疑問を感じずにはいられないが、グループリーグを首位で通過できていない点が、ラウンド16が鬼門になっている最大の理由である。
今シーズンに関しては、名古屋とG大阪が誤算だった。ACL初出場となるFC東京と柏に多くを期待するのは酷で、この2チームに関しては、グループリーグを突破したことでノルマを果たしたと言えるが、経験豊富なG大阪が1勝5敗と惨敗したことと、もっとも戦力が充実していて、アジア制覇の可能性があった名古屋がアデレードに敗れてしまったことは大きな問題で、この2チームについては、期待外れと言わざる得ないだろう。
■ 十分ではないバックアップ体制それにしても、準々決勝に1チームも残れなかったというのは、ゆゆしき問題である。残念に思うのは、多くのチームが本来の力を発揮できずに終わっている点である。J1は13節を終了しているが、(ACL組は9節の試合が未消化なので、1試合少ない状況であるが、)現在のところ、名古屋は13位、FC東京は6位、柏は12位で、G大阪に至っては16位と低迷している。昇格1年目で6位に位置するFC東京は、十分な成績を残しているといえるが、名古屋と柏とG大阪の3チームは、開幕前の予想を大きく下回る成績である。
G大阪については、西野監督が退任した影響は大きくて、松波監督になってからも、チームは迷走を続けている。したがって、他の要因も多いと言えるが、柏と名古屋の2チームに関しては、明らかにACLの影響で成績を落としている。ハードな試合が続くので、怪我人が増えてしまう点は仕方がないといえるが、移動によって、目に見えない疲労が蓄積されて、本来のパフォーマンスを出せずにいる。柏は、グループリーグの終盤戦から少し調子を上げてきたが、名古屋に関しては、ACLで蓄積したダメージを持ったままでラウンド16に挑んで敗れてしまった。
もちろん、シーズン前から、4月中旬~5月末が過密日程になることは分かっているので、クラブ側も、効果的な対策を立てるべきであるが、ACLの4節・5節・6節などは、J1の試合以上にプレッシャーがかかってくるので、選手は本当に大変である。Jリーグ側も、5月3日に行われる9節の試合を、ACL組だけ、6月27日に延期したり、13節の試合を名古屋とG大阪だけは金曜日開催にしたり、いろいろ考慮しているが、十分ではないと感じる。
ギリギリで、日程にほとんど余裕が無いことは、十二分に承知しているが、ACLのラウンド16の前くらいは、十分な間隔を空けることはできないのか。興行的な問題もあるので、平日開催を増やすことは簡単ではないが、一番、大事な試合の前くらいは、もっと、リーグ側が配慮してもいいのでは?と感じる。例えば、以前のKリーグは、降格制度すらなかったので、極端なことを言うと、リーグ戦で負け続けたとしても、大きな損害は発生しない。そういうところと勝負して、勝たないといけないので、ACL組には、できる限りのバックアップをしたい。秋-春制の議論をする前にやることはいくらでもあるだろう、と感じる。
■ 否定できない上位の戦力ダウンその一方で、「Jリーグのレベルが下がっているのではないか?」という意見もあるが、近年のACLの成績を見ると、強く否定するのは難しい。もちろん、ACLのような大会は、リーグ全体のレベルではなくて、上位チームの戦力がものを言うので、ACLの成績だけでリーグレベルを判断するのは危険だが、少なくとも、2007年や2008年の頃と比べて、上位チームの戦力が落ちている点は、素直に認めざる得ない。
考えてみると、2007年の浦和には、ワシントンがいて、ポンテがいて、小野伸二、長谷部誠、闘莉王がいた。この年はベスト8で敗れたが、川崎Fのメンバーも今と比べるとかなり豪華で、アジアを制したときのG大阪のメンバーも、今より上である。上位チームの戦力低下の理由は、いくつも考えられるが、その中でも大きいのは、「過渡期に入っているチームが多い点」と「海外組の増加」である。
鹿島・G大阪・横浜FMというビッグクラブが、開幕5試合を終えて未勝利だったことが象徴的だが、リーグ全体が転換期に入っている。オフに多くのチームが監督を交代させたことも、過渡期のチームが多いことを証明しているが、日本サッカーを引っ張ってきたシドニー世代が30歳を超えて、一線級で活躍するのは、難しくなってきた。前述の3チームは、正にシドニー組がチームの中心で、「彼らの衰えによってチーム力を落としている。」と考えることもできる。
■ ACLで日本勢の復権はあるのか?これらのチームは、今後、世代交代を行っていく必要があるが、「海外組の増加」は、世代交代を難しくするファクターである。もし、若手選手の中に「海外移籍」という選択肢が無ければ、必然的に、ACLの出場権を持つチームやビッグクラブに人材が集まってくるが、最近は、J1やJ2に限らず、ポテンシャルを評価されれば、ユース年代でも、海外のビッグクラブからオファーが届くような状況である。多くの若手選手は、J1のビッグクラブでプレーするよりも、海外リーグでプレーすることを望んでおり、この傾向は、今後、さらに加速していくことは確実である。
もちろん、MF香川がドルトムントに移籍した後、C大阪でレギュラーポジションを確保し、フル代表の常連となったMF清武の例を見れば分かるとおり、海外移籍の増加によって、次代のタレントが生まれやすい環境ができつつあることも事実で、日本サッカーにとってプラスのことも多いが、ACLを勝ち抜くことに主眼を置くと、今のような簡単に若手選手が海外に進出していく状況は、好ましいとは言えない。現状では、どれだけフロントが頑張っても、いいチームを作るのは難しい。
理想を言うと、Jリーグのレベルや認知度が上がって、海外に移籍しなくても、サッカー選手として、正当な評価を受けて、欧州のトップリーグに負けないだけの競争力を付けることであるが、CLに参加できない以上、現実的な話ではない。JリーグやACLに魅力が無いという次元の話ではなくて、どうすることもできないレベルの話である。
このエントリーの主題は、「ACLで日本勢の復権はあるのか?」であるが、残念ながら、しばらくの間は、難しいと思う。海外移籍の流れは、フル代表だったり、五輪代表だったり、U-20だったり、U-17だったり、日本代表チームが、世界の舞台でいい成績を残せば残すほど、ますます、拍車がかかるだろうし、MF宮市のようなケースも、当たり前になっていくだろう。
海外組が活躍して、現地で評価されることは、Jリーグのサポーターも望んでいることである。日本代表チームが世界の舞台で好成績を残すことも、サポーターの大きな楽しみである。ただ、残念ながら、そうなれば、そうなるほど、Jリーグのチームがいい人材をキープすることは難しくなって、ACLのタイトルからも遠ざかっていく。実に矛盾に満ちた話であるが、紛れもない事実であり、しばらくの間は、受け入れるしかないだろう。
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