■ 移籍市場の傾向Jリーグ各チームのキャンプがそろそろ始まる時期となった。そろそろ移籍市場も閉じられようとしている。今シーズンの傾向をまとめておきたい。
選手が移籍するときのパターンは、以下のとおりで、
① 自分自身のステップアップのための移籍
② 出場機会を求めての移籍
③ チームのJ2降格に伴う移籍
④ 若手が経験を積むための移籍(レンタル移籍)
⑤ 戦力外通告(構想外)に伴う移籍
①に該当するのが、阿部(千葉→浦和)、バレー(甲府→G大阪)、新居(鳥栖→千葉?)、古賀(名古屋→柏)ら。
②に該当するのが、増嶋(東京→甲府)、宮沢(東京→大分)、坂本(千葉→新潟?)、服部(磐田→東京V)、斉藤(清水→湘南)、深井(鹿島→新潟)、黒部(浦和→千葉?)、川島(名古屋→川崎)ら。
③に該当するのが、名波(C大阪→東京V?)、大久保(C大阪→神戸?)、西澤(C大阪→清水?)、千代反田(福岡→新潟)、下村(C大阪→千葉?)ら。
④に該当するのが、豊田(名古屋→山形)、三木(G大阪→愛媛)、内村(大分→愛媛)、藤井(磐田→愛媛)、新井(浦和→愛媛)ら。
⑤に該当するのが、秋田(名古屋→京都)、奥(横浜FM→横浜FC)、薮田(福岡→横浜FC)、ジャーン(FC東京→湘南)ら。
■ 阿部勇樹(千葉→浦和)のケース阿部のようなケースは、今後、ますます増えていくことだろう。資金力のあるチームが、資金力の乏しいチームの主力選手を引き抜くケースである。リーグ優勝を狙えるチームであること、アジア(世界)と戦えるステージをもつこと、環境面、条件面など、チーム間の格差は広がる一方である。ACLがメジャー化することで、その傾向をいっそう強まるだろう。
ビッグクラブが出現することはアジアの舞台で戦えるチームが生まれることを意味するため悪いことではないが、デメリットも少なからず存在する。阿部の移籍によって、千葉と浦和戦の勝敗に対する興味は小さくなったといえるだろう。
ここで注意しなければならないのは、ビッグクラブ行きが必ずしも、自身の成長を促すわけではないということである。千葉時代は阿部が活躍しなければチームは勝てないという立場であったが、浦和では、阿部が本来のパフォーマンスを発揮できないときでも、チームは問題なくリーグ戦を勝ち進むだろう。シーズン終了後に、阿部の移籍を評価するときは、チームの勝敗だけではなく、阿部自身の成長につながったかどうかを見て、考察しなければならないだろう。
■ 坂本将貴(千葉→新潟?)のケース同じ千葉のMF坂本の退団が濃厚になっている。この万能MFに対しては、いくつかのチームからオファーがあったようだが新潟への移籍が噂されている。坂本のケースもなかなか興味深いケースである。阿部に続いて坂本の退団も濃厚となり、ジェフ千葉はチーム崩壊の危機をむかえた、と伝えたメディアもあるが、これは、やや安易な報道だと感じる。
左右のウイングバックにボランチ、ときにはCBもこなす坂本だが、昨シーズン後半、右サイドでは水野、左サイドでは山岸が台頭し、本職のウイングバックでレギュラーポジションを失った。チームとしては、ノビシロのある水野と山岸を起用したいはずで、坂本に対して、レギュラーポジションを確約することは難しい。
坂本に対して、チームは強い慰留は行っていない模様である。確かに坂本は、チームの精神的支柱であり重要な選手ではあるが、オファーが殺到している今の状況を考慮し、フロントが(決して口には出せないものの、)放出を容認したとしても不思議ではないし、理解できる判断である。
■ 新居辰基(鳥栖→千葉?)のケース同じく千葉では、鳥栖のFW新居の獲得が濃厚となっている。J2では2年連続で日本人最多の得点を挙げており、J2最高の日本人ストライカーであることに疑いの余地はない。昨年のオフも、新居に対しては、いくつかのチームが興味を示したようだがチーム残留を表明していた。しかし、今オフは、2年続けて結果を残したことで、新居の将来を考えて、チームも強く引き止めることはしないようだ。
ペナルティーエリア内でのセンスは図抜けており、J1でも相当の活躍が期待できる。J2でゴールを量産した選手は、J1でも一流のストライカーとして活躍できる可能性が高いということは、過去の例が証明している。
2トップを組む巻は、どんなタイプの選手にも合わすことのできるフォワードなので、新居との相性も問題ないだろう。J2がその地位を向上させるためには、J2からJ1に羽ばたいていった選手が、高い確率で活躍することが必須条件となる。おそらく、J2に関わる全て人間が、新居の活躍を期待していることだろう。J2の代表として、ゴールを量産してもらいたい。
■ 下村東美(C大阪→千葉?)のケース千葉は、阿部の移籍によってボランチにひとつ空席ができたが、C大阪の下村の獲得が濃厚となっている。J2に降格したC大阪は、下村に対して残留を要請したものの、J1でのプレーを希望する下村の決意は固く、慰留は難しい状況となっている。相思相愛といわれる千葉は、阿部の退団を想定して下村の獲得を早い段階から狙っていたようだ。
ある選手に対して移籍の噂が出ると、まず考えなければならないのは、その選手が加入することでどんなメリットが生まれるのかということだが、ボクは、今オフの移籍話の中では、下村のジェフ入りの話が最も興味を惹かれた。
千葉のボランチは、佐藤勇人と阿部のコンビでここ数年は固定されていたが、下村のキャラクターは、この2人とは大きく異なる。佐藤と阿部は、得点能力が高く、前に出た時に持ち味を発揮したが展開力はいまひとつだった。「つぶすこと」に加えて、「散らすこと」のできる下村の加入は、阿部がいなくなったとしても、ジェフのサッカーが継続して、ハイレベルを維持できる可能性を秘めた、面白い補強であると感じる。
下村に対しては、阿部の後継者ということで注目度も高くなることが予想されるが、05シーズンの活躍を思い出してみれば分かるように、阿部の代役だけにとどまらず、新しい千葉の魅力を引き出すことができるかもしれない。
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