■ フィテッセへの移籍 ガンバ大阪のDF安田理大のオランダリーグのフィテッセへの移籍が決定。すでにチームに合流しており、ウインターブレーク明けの最初の試合となる1月22日(土)のアウェーのヴィレムII戦でデビューする可能性が高くなってきている。
フィテッセは現在リーグで15位。日本代表のDF吉田の所属するVVVが17位で、ヴィレムⅡが最下位の18位。残留をかけて後半戦を戦うことになるが、最下位のヴィレムⅡ戦でアピールして、レギュラーポジションを確保したいところである。
■ サイドバックの分類DF安田のポジションは左サイドバックである。右利きなので右サイドバックもこなすが、しっくりきているのは左サイドでのプレーであり、ドリブルで縦に勝負できることが魅力の攻撃力のあるサイドバックである。フィテッセでも、右サイド、左サイドの両方で試されているよう模様であるが、左サイドの方がベターだろう。
そもそも、サイドバックを大雑把に分けると4つのタイプがある。
① 本職組
② コンバート組
③ センターバック出身
④ ゲームメーカータイプ
①は、ずっとサイドバック(あるいはウイングバック)でプレーしてきた選手である。DF駒野、DF加地、DF市川あたりがその典型であり、運動量が豊富で90分間、サイドをアップダウンする。日本代表のDF長友もプロに入ってからはずっとサイドバックなので、①のタイプといえる。このグループの選手は、サイドバック(あるいはウイングバック)以外のポジションでプレーすることは想像しにくい。
②は他のポジションからコンバートされた選手である。攻撃力があるが、守備力に不安を抱える選手が多いのが特徴で、DF安田はこのタイプで、サイドハーフでもプレーできる攻撃力を持つが、左サイドバックにコンバートされて日本代表まで駆け上がった。ジーコジャパンでレギュラーだったDF三都主アレサンドロ、アジアカップの予備登録50人に入っているC大阪のDF丸橋もこのタイプで、神戸のDF茂木、C大阪のDF酒本らもこのカテゴリーである。
③はセンターバックでもプレーできるほどの守備力を持つタイプ。FC東京のDF徳永がその典型である。国見高校時代はセンターバックでプレーしたが、五輪代表やプロでは右サイドバックが基本となった。ジェフ千葉のDF青木、FC岐阜のDF秋田、札幌から徳島に移籍したDF西嶋もこのタイプではあるが、日本では非常に少ないタイプといえる。ACミランやイタリア代表でプレーしたDFマルディーニが代表的な選手である。
④はゲームメーカータイプ。名古屋のDF阿部、山形のDF石川あたりがその典型であり、キックの精度が高くて、ビルドアップでの貢献度が高い選手である。G大阪のDF下平、新潟から鹿島に移籍したDF西も広い意味ではこのタイプであり、ここ最近、増えているタイプで、キックとセンスが売りとなる。
■ 日本のサイドバック事情南アフリカ大会後、DF内田がシャルケに移籍し、DF長友がチェゼーナに移籍しているが、ともにレギュラポジションを確保している。DF内田はチャンピオンズリーグで決勝トーナメントに進出したチームの右サイドバックとして地位を確立し、DF長友はアジアカップで離脱するまでは全試合にフル出場していた。
意外なことに、サイドバックの選手で海外のクラブに移籍した代表クラスの選手は少なく、過去はオーストリアのザルツブルクでプレーした経験を持つDF三都主くらいであり、挑戦した例はほとんどなかった。ただ、海外リーグの試合や国際試合を観ていてと、「日本のサイドバックはレベルがかなり高い。」と感じる部分は多く、DF内田、DF長友に続いて、DF安田も成功をおさめるとなると、これまで以上に海外クラブが「日本のサイドバック」に目をつけてくる可能性はある。
「日本人プレーヤーで魅力なのは献身的なところ。」と言われることが多い。ドイツでプレーするMF長谷部、MF香川あたりも、この言葉で評価されることが多いが、サイドバックというポジションは、まさしく「献身的なところ」が重要な要素となるので、日本人の特徴を生かしやすいポジションである。その上、DF安田の場合、突破力もあるので、海外のクラブに魅力的に感じたのだろう。
オランダリーグというと、欧州の中では「中堅よりも少し上」のリーグであり、さらに上のリーグにステップアップするという野心を持った選手が集まっている。スカウトの目につきやすいリーグであり、サイド攻撃に特徴のあるクラブが多いので、サイドバックのDF安田にとってはいいリーグといえるだろう。
■ 若手の移籍若手の代表クラスの選手が、続々と海外のクラブに移籍すること(特に移籍金なしで)に対しては批判の声も上がっているが、今の状況では仕方がないといえるだろう。「若いうちに複数年契約を結んでおいて、移籍するときは元のクラブに移籍金が生じるようにするべき。」というのは間違った考えではないが、若くして海外挑戦を視野に入れている若手選手達にとって、Jリーグのクラブと長期契約を結ぶことにほとんどメリットを感じないだろうし、現実的な話とは言えない。
南アフリカ大会でのベスト16入り、MF香川、DF長友、DF内田らの活躍でドイツを中心に「日本人バブル」が発生しているが、海外組の全てが活躍しているわけではなく、日本代表のMF長谷部でさえ、ヴォルフスブルクでレギュラーといえる状況ではない。
今オフ、何人もの選手が海外のクラブと契約を結んだが、活躍できるかどうかは、これからの頑張り次第であり、失敗する人も出てくるだろう。言葉の問題や環境の問題といったサッカーの実力以外の要素も絡んでくるので、簡単なものではないが、今の選手の活躍は、次の世代の選手の評価にもつながってくる。彼らが成功することで、今後、高い移籍金を払ってでも選手を獲得したいと考えるクラブも出てくるかもしれない。日本を代表してプレーしているということを忘れずに、オランダでも「らしいプレー」を見せてほしいところである。
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