■ グループCグループCの韓国とオーストラリアの試合。初戦は韓国がバーレーンに2対1で勝利し、オーストラリアはインドに4対0で勝利している。2強にバーレーンがどう絡んでくるかが見所のグループであるが、最後にバーレーン戦を残しているオーストラリアにとっては、出来れば韓国に勝って連勝してバーレーン戦を迎えたい。インド戦を残している韓国にとっては引き分けでもグループ首位通過が見えてくる。
韓国は<4-2-3-1>。1トップにGKチョン・ソンヨン。DFチャ・ドゥリ、イ・ジョンス、ファン・ジェウォン、イ・ヨンピョ。MFイ・ヨンレ、キ・ソンヨン、イ・チョンヨン、パク・チソン、ク・ジャンチョル。FWチ・ドンウォン。京都サンガのDFカク・テヒは出場停止。
対するオーストラリアはFWケーヒルとFWキューエルの2トップで<4-2-2-2>。元浦和レッズのオジェック氏が監督を務める。名古屋のFWケネディは怪我もあって大会にエントリーされていない。
■ 1対1のドロー南アフリカW杯の出場国同士の試合は前半24分に韓国がFWチ・ドンウォンのポストプレーからフリーのMFク・ジャンチョルがミドルシュートを決めて先制。MFク・ジャンチョルは2試合連続で今大会3得点目。前半は1対0の韓国リードで折り返す。
後半になるとオーストラリアはフィジカルを生かしたロングボールを中心に韓国ゴールに迫ると、後半17分にコーナーキックの流れからMFジェディナクが頭で押し込んで1対1の同点に追いつく。疲れの見える韓国は3枚の交代カードを使って流れを取り戻そうとするが、交代で入ったメンバーがうまく機能せずに2点目のゴールは奪えず。結局、1対1のドロー。得失点差でオーストラリアが首位を守った。
■ 韓国の突破は濃厚グループリーグ屈指の好カードとなった1対1のドロー。韓国がインドに取りこぼすことは考えにくいので韓国のグループリーグ突破は確実となって、逆に、オーストラリアは3戦目のバーレーン戦に敗れるとグループ敗退となるシチュエーションとなった。
準々決勝で対戦するグループDの顔ぶれを見る限り、オーストラリアも韓国も首位通過でも、2位通過でもそれほど変わらない気もするが、バーレーンはそれほど簡単な相手ではないのでオーストラリアも苦労するだろう。韓国は相手との実力差を考えるとメンバーを代えて、控え中心で来ることも考えられる。
■ 世代交代の時期2006年のドイツ大会ではブラジル、日本、クロアチアと同グループになったが見事にグループリーグを突破し、ベスト16に進んだオーストラリア代表であるが過渡期に入っており、30代の選手がスタメンに7人も入っている。FWビドゥカやFWケネディのようなセンターフォワードがいないので、FWケーヒルとFWキューエルの2トップになっているが、「この2人の前にFWケネディがいれば・・・。」と感じるシーンは多く、チーム力は2006年と比べても下降線である。
致命的なのは、FWケーヒル、FWキューエル、FWビドゥカよりも下の世代が育ってきていないことであり、南アフリカ大会でもグループリーグ敗退したこともあって、アジアカップで大きくメンバーを変えてくるかと思われたが、同じようなメンバーで大会に挑んでいる。
W杯からアジアカップまでの間隔が短くて準備に時間がかけられなかったという意味では、日本も、韓国も同じであるが、この2ヶ国は若い選手を積極的に起用してきているのに対して、オーストラリアはほぼ同じ。この部分でのオーストラリアの考え方は疑問であるが、FWケーヒルがいるので、一発の怖さはある。メンバーが大きく変わっていないこともあって、ある程度は戦い方も固まっており、日本にとっては相変わらず嫌な相手ではある。
■ 別格のパク・チソン対照的に韓国は若手がいい具合に育ってきている。マンチェスター・ユナイテッドのMFパク・チソンが中心になって、その周りを20歳前後の選手が固める布陣である。
システムは日本と同じ<4-2-3-1>。メンバーは少し代わっているが、2010年の南アフリカ大会でも同じ戦い方だったので、成熟度は日本よりもはるかに上であり、若い選手達の「運動量」と「スピード」を生かしたサッカーは従来の韓国の無骨なサッカーとは違った新鮮さを感じさせるものである。
メンバーを見ると、MFパク・チソンのほかに、右DFのDFチャ・ドゥリと左DFのDFイ・ヨンピョが2002年のワールドカップメンバーであり、日本が日韓大会のメンバーがゼロであるのに対して、韓国はこの3人が健在でチームを引き締めている。
右DFのチャ・ドゥリはもともとフォワードの選手であるが、右サイドバックにコンバート。スコットランドリーグのセルティックに所属し、スタメンにも名を連ねている。繊細さは皆無であるが、圧倒的なパワーとスピードは厄介である。
■ 別格のパク・チソン中心はMFパク・チソン。別格であり、判断のスピードは桁違いに優れている。この試合で、大柄なオーストラリアのディフェンダーは振り回されてばかりで止めようがなかった。
マンチェスター・ユナイテッドでは脇役になってしまうが、韓国代表では大黒柱であり、彼を中心に前線の4人が巧くポジションをチェンジさせて攻め込むスタイルが確立されている。今大会で代表引退か?とも報道されているが、果たしてどうなるだろうか。
■ 日韓の差日本と比べてみると、成熟度では明らかに韓国が上回っている。日本はMF香川、FW前田がスタメンに入っているが、まだしっくりきていない部分も多い。対して、韓国は戦い方がイレブンに浸透しており、攻守ともにスムーズである。このあたりは、1ランク上の存在のMFパク・チソンがうまく若手の能力を引き出している部分もあって、日本もMF遠藤やMF本田が中心になって、うまく新戦力の力を引き出したいところである。
ただ、韓国も弱点が無いわけでもない。気になるのはゴール前での迫力に欠けることであり、人数をかけて相手DFを崩して攻め込むシーンが多い割には、決定機やゴールに結びつける機会は少なく、本当の意味での怖さは感じさせない。南アフリカ大会でも「ラスト」のところで迫力を欠いたが、同じような傾向はアジアカップのチームにも感じられる。
この監督がどういう考え方をしているのかは分からないが、例えば、ボルトンでプレーするMFイ・チョンヨンなどは悪くないプレーを見せているとはいえ、ボールに絡んでくるシーンは多くなく、メンバー構成にしても、選手の意識レベルにしても、「組み立て」や「崩し」の部分に労力をかけすぎているような印象は受ける。
■ ゴール前の迫力同じような問題は日本代表も抱えているが、韓国の場合、「ゴール前以外」にかけるエネルギーは日本代表よりも過剰のような気はする。人数をかけている分、チャンスは作れるので、見栄えのいいサッカーにはなるが、実は結ばない確率は高くなってしまう。
MFパク・チソンについては問題ないが、MFイ・チョンヨン、MFク・ジャンチョルあたりは、MFパク・チソンとプラスもう1人で出来そうな仕事を分担してこなしているイメージであり、FWチ・ドンウォンが1トップに入っているが、もう1人、ストライカータイプの選手をピッチに入れた方が効果的な気はする。
一方、守備陣は南アフリカ大会でも見られた「一瞬の隙」を作って失点してしまう悪い流れが続いており、センターバック2人は強さはあるが、無駄なファールも多かった。前からプレッシャーをかけて奪った時は問題ないが、ディフェンスラインに圧力を加えられるともろさを見える点は変わっていないような印象である。攻守ともに、若い選手が多く、「成長待ち」の部分もある。タフなアジアカップを経て、どのくらいの成長を見せられるだろうか?
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