■ 最終節 グループBの最終節。1勝1分けの日本と、2敗のサウジアラビアの対戦。サウジアラビアは2連敗ですでにグループリーグ敗退が決定している。日本は引き分け以上で自力でのグループ突破が決定。敗れてもヨルダンがシリアに勝利するとグループ2位で勝ち抜けとなる。グループAはウズベキスタンが1位、地元カタールが2位になったので、日本は1位通過の場合はカタール、2位通過の場合はウズベキスタンと対戦することになる。
日本は<4-2-3-1>。GK西川。DF内田、吉田、今野、長友。MF遠藤、長谷部、岡崎、柏木、香川。FW前田。シリア戦でレッドカードを受けたGK川島が出場停止でGK西川がスタメン。MF松井、MF本田圭が怪我のためスタメンを外れて、MF柏木とMF岡崎がスタメン出場。MF松井は肉離れのため、チームから離れることになった。
■ 日本が完勝 引き分け以上で突破の決まる日本は前半8分に左サイドでボールを回して時間を作ると、MF遠藤の縦パスからうまく裏に飛び出したMF岡崎が飛び出してきたGKの頭上を越えるシュート。これで完全にゴール前でフリーになると、難なくゴールに流し込んで日本が先制する。さらに前半13分にも左サイドでタメを作って切り替えしたMF香川の右足のクロスをファーサイドのMF岡崎がヘディングで決めて2点目。序盤で2点リードを奪う。
止まらない日本は前半19分にもMF柏木のパスから左サイドを駆け上がったDF長友のニアへのクロス。FW前田がうまく右足のアウトサイドで決めて3点目。早々と試合を決定付ける。FW前田はアジアカップでは初ゴール。代表では3ゴール目となった。その後、ややペースダウンした日本は4点目こそ奪えなかったが、3対0と大量リードで前半を折り返した。
後半も日本が攻め込む。後半6分にはDF内田に代わって出場したDF伊野波の右からのクロスをFW前田が頭で合わせて4点目を挙げると、後半35分にはFW前田のパスからMF岡崎がうまいターンからシュートを決めて5点目を挙げる。MF岡崎はハットトリックを達成。FW前田は2ゴール1アシスト。
結局、5対0でサウジアラビアを下した日本が2勝1分けでグループ首位通過を決めて、準々決勝で地元のカタールと対戦することになった。一方のサウジアラビアはまさかの3連敗。グループ最下位でアジアカップを終えることになった。
■ 理想的な展開すでにグループリーグでの敗退が決定しているサウジアラビアを相手に日本が5対0というかつてないほどのスコアで大勝。引き分け以上でOKというシチュエーションだったが、序盤に3点を奪ったことで非常に楽な展開となった。
3対0とリードした後半は準々決勝で出場停止となるDF内田を下げてDF伊野波を右サイドで試し、さらにシリア戦でイエローカードをもらっていてこの試合でイエローカードを受けると準々決勝の試合が出場停止になってしまうDF吉田を温存することも可能となった。
3点を奪った段階でサウジアラビアは戦意を喪失しており、ラフプレーが怖い展開となったが、ラフプレーもなく淡々と試合は進んだ。シリア戦と比べると、日本の出来も今一つであったが、シビアな戦いが続く決勝トーナメントを考えると、理想的な展開で試合を進めることが出来た。
■ 柏木がスタメンタフな試合となったシリア戦で負傷したMF松井、MF本田圭がスタメンから外れて、MF柏木、MF岡崎がスタメン。<4-2-3-1>はそのままで、MF岡崎が右サイド、MF柏木がトップ下に入った。
特にシリア戦で負傷した大黒柱のMF本田圭がスタメンから外れたことで試合前は不安視されたが、初先発のMF柏木がトップ下でいい動きを見せてリズムを作った。キープ力のあるMF本田圭、MF松井が入っているときよりも、ワンタッチでボールを動かそうとする意識が高まって、サウジアラビアの守備陣はついてこれなくなった。
トップ下の位置に入ったので、もう少し積極的にシュートを狙ったり、ラストパスを狙ったりしても良かったと思うが、味方をうまく使ってプレーしており、MF本田圭のトップ下とは違ったカラーでチームに貢献した。今回、23人枠にMF柏木が入っており、攻撃の流れを変える存在として期待されてはいたが、Aマッチの出場が1試合のみであり、どういう使い方で起用してやればいいのか?という部分がはっきりしていなかったが、いいタイミングで90分間、使うことが出来て、イメージがつかめたのは良かった。
■ ザックジャパンの進化形「MF柏木がトップ下に入ったこと」、「雨のためでボールが走りやすいピッチ状態であったこと」、「序盤に3点リードを奪う楽な展開だったこと」などなど、いくつかの要素が重なって、この試合の日本は、これまでの2試合と比べると、明らかに「パススピード」が早く、意識レベルが「一段上」のような印象を受けた。前半途中から中盤でのミスが目立ったように見えたのも、高いレベルを求めていたからこそではないか、と感じられた。
日本の中盤のレベルであれば、ボールを回そうと思えば回すことが出来るが、リズムが変わらないとなかなか相手を崩せないということは初戦のヨルダン戦でも明らかになったことであり、2試合目のシリア戦でかなり改善されていたが、サウジアラビア戦はさらに一歩進んだパス回しとなっていた。
「奪われるとリスクのあるエリア」に選手が入っていって、そこでボールを受けて、ダイレクトでボールをはたいたり、展開するという形は、ビッグチャンスにつながる可能性は高くなるが、ボールを失うと相手のカウンターの餌食になってしまうので、さらに高いレベルでの「技術」と「判断力」が求められる。よって、簡単なプレーではないが、余裕のある展開になったことで、MF香川、MF柏木、FW前田あたりが、難しいエリアでボールを受けて起点を作ろうとする動きが多かった。
「パスの出し手の精度」と、「パスの受け手の精度」が低いとミスになってしまうので紙一重のプレーであり、パスがずれたり、トラップが上手くいかないことが何度もあったが、日本代表がもっと上のレベルを目指すには、チャレンジしなければならない部分でもある。せっかく、中盤や最終ラインにいいパスの出せる選手を置いているのであるから、安全にボールを回しているだけでは「もったいない」のは自明である。この試合は、楽な展開になったこともあって、日本代表の「進化形」の芽生えが見られる試合となった。
■ 前田遼一が2ゴール1アシスト3試合連続で1トップでスタメンとなったFW前田が待望の初ゴール。左サイドからのクロスに対してうまく中に入り込んで、右足でうまく合わせたファインゴールとなった。その前にも何度かシュートを放っていたことで気持ちの落ち着きもあったので、難易度の高いシュートであったが、彼らしい得点力の高さを示す見事なゴールだった。さらに後半には右からのクロスを頭で合わせて追加点。5点目のゴールにも絡むなど、2ゴール1アシストの活躍を見せた。
初戦のヨルダン戦は前半のみの交代となったが、シリア戦でまずまずの働きを見せており、「あとはゴールだけ。」という状態だったが、本人にとっても、チームにとっても、大きなゴールとなった。今大会は、フォワード登録が3人のみであり、FW岡崎はサイドで起用されていることもあって、FW李忠成か、FW前田かのどちらかが1トップに入ることになるが、信頼して起用し続けたザッケローニ監督の期待に応えたといえる。
2点目のMF岡崎のゴールにも囮の動きでうまく絡んだが、3点目のゴールと4点目のゴールは自分で飛び込むスペースを作ってから中に入ってクロスに合わせるという得意の形であり、FW前田の代表キャリアを考えても大きな試合となるはずである。
■ 岡崎がハットトリック一方、右サイドでスタメンとなったMF岡崎がハットトリックの活躍。1点目の飛び出し、2点目のヘディングとらしいゴールでチームに流れを呼び込むと、3点目はゴール前の混戦からうまいターンで決めるというらしくないゴールで3ゴールを奪った。ここ2試合は途中出場にとどまっていたが、流れを変える大きな役割をはたしており調子は良かったが、MF松井が怪我をしたという事情もあって、今大会初スタメン。早速、結果を残した。
MF松井と比べると、MF岡崎にはゲームメイクやキープは期待できないが、ゴール前に飛び出すタイミングの良さがシュートの上手さがある。チームとしてもうまくMF岡崎のストロングポイントをうまく使うことが出来ており、2点目のヘディングシュートなどは「ストライカー」らしい動きからのゴールだった。
タイプが異なるので単純に比較はできないが、左サイドがベースポジションのMF香川が、まだ中に入り込むタイミングをつかみ切れていないのに対して、MF岡崎はいい具合に中に入ってきて、シュートまで持っていくことが出来る。この試合の5ゴールは、結局、FW前田とMF岡崎の二人で挙げたが、左サイドで作って中央や右サイドから決めるというパターンも悪くない。
■ 伊野波の右サイド決勝トーナメントの1回戦でカタールと対戦するが、不安要素になりうるのがDF内田が出場停止であるということであり、前半の早い時間にDF内田がイエローカードを受けて早々に出場停止が決まって、どこかのタイミングでDF伊野波か、DF森脇を試すことは十分に考えられたが、ザッケローニ監督は後半開始からDF伊野波を投入してきた。楽な展開になったからこその起用であったが、DF伊野波も4点目のFW前田のゴールをアシストするなど、いいプレーを見せた。
前回のアジアカップのメンバーにも入っていたDF伊野波であるが、意外にもAマッチは初出場。これでカタール戦でスタメン出場することが確実になったが、カタール戦がデビューとなったらプレッシャーもかかってしまう状況になったが、リードしていた余裕の展開がDF伊野波にも経験を積ませることが可能となった。
鹿島ではセンターバックでプレーしているが、FC東京時代からサイドバックでもプレーしており、大きな問題はないはずである。オーバーラップの回数はDF内田と比べると減るかもしれないが、まずはきっちり守備をしてくれればOKである。この日のプレーを見る限り、大丈夫だろう。
■ 先発出場の西川周作シリア戦でGK川島がレッドカードで退場になったことでGK西川が先発出場。この試合の日本は、ダブルボランチの運動量が少なめであり、サイドで相手を挟み込んだときに突破されるシーンも何度か見られたため、日本の守備自体はそれほど良くなかったが、決定的なチャンスは作らせず。サウジアラビアのシュートはロングシュートが中心で際どいシュートは少なく、GK西川も危なげなかった。
W杯を経験したGK川島が正GKで、二番手がGK西川という序列になっているが、実力的にはそれほど差はなく、どちらがゴールを守っても安心できるが、GK西川にとってはシリア戦に続いて、いいアピールになった。ザッケローニ監督の考え方がどうなのかは分からないが、これまでの選手起用を考えると、カタール戦はGK川島に戻してくるように思うが、GK西川でも全く不安はない。
■ 惨敗のサウジアラビア「腐ってもサウジ」という感じで警戒していたサウジアラビアだったが、淡白なプレーで覇気もなかった。すでに2連敗を喫していたが、「3連敗は出来ないので危険な相手である。」という報道もあったが、全くもってふがいない戦いだった。日本のサイドからのクロスの精度も高かったが、中のマークも甘くて、サウジアラビアらしさはなかった。
今大会でも初戦のシリアに敗れて監督を交代しているサウジアラビア。2000年のレバノンのアジアカップでも同じように初戦で敗れて監督を交代させた。この時は成功して決勝まで進んだが、さすがに何度も同じ手は通用しない。ここ最近、中東のチームに力をつけており、ヨルダンやシリアも日本と接戦を演じるなど、弱いチームはなくなってきている。90年代から00年代にかけて、アジアの盟主の座を日本や韓国と争ってきたサウジアラビアであるが、考え方を変えないと、真の強化は出来ないだろう。
日本も、DF伊野波、DF岩政、MF柏木、MF本田拓を試しており、いろいろな要因もあってミスもあったので万全の試合ではなかったが、第3者がスコアだけ見ると、「日本強し。」ということと、「サウジの凋落」を感じるものになった。ここから、サウジアラビアが巻き返せるのか。アジアの勢力図が変わりかけていることを印象付ける試合となった。
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