■ J1の第8節第3節のベガルタ仙台戦、4節のジュビロ磐田戦で連勝。好調なスタートを切ったかと思われたが、第5節のセレッソ大阪戦、第6節の名古屋グランパス戦に連敗。第7節のFC東京戦は1対1で引き分けに終わったため、3試合勝利の無い京都サンガ。7節を終えて2勝3敗2分けという成績を残している。
対するは開幕4試合で2敗2分けとスタートダッシュには失敗したものの、第5節のサンフレッチェ広島戦、第6節のヴィッセル神戸と連勝。第7節の横浜Fマリノス戦は0対1で敗れたものの2勝3敗2分けとまずまずの出だしとなっているモンテディオ山形。共に勝ち点で「8」を稼いでいながら、上昇中のチームと下降気味のチームと好対照の両チームの激突。
ホームの京都は<4-2-3-1>。GK水谷。DF増嶋、水本、カク・テヒ、森下。MF片岡、角田、西野、ディエゴ、中山。FW柳沢。コンディションが万全ではないMF渡邊はベンチからも外れた。DF登録のMF西野が右サイドハーフで2試合連続スタメン。FW柳沢はリーグ戦100ゴールに王手をかけている。
対する山形は<4-2-2-2>。GK清水。DF宮本、石井、西河、石川。MF佐藤、秋葉、北村、宮沢。FW古橋、田代。鹿島からレンタル中のFW田代はここまで3ゴールを挙げている。FWハン・ドンウォンとMFキム・ビョンスクがベンチスタートで出番を待つ。
■ 田代の逆転ゴール試合の前半はイーブンの展開で進む。ホームの京都はMFディエゴを起点に攻め込み、アウェーの山形は積極的なミドルシュートで応戦する。0対0のまま迎えた前半42分に京都が左サイドからフリーキックを獲得。MFディエゴがファーサイドに蹴ったボールをMF角田がうまく頭で合わせてゴールイン。MF角田の2試合連続ゴールで京都が先制し、1対0のリードで折り返す。
後半の立ち上がりから京都が何度か決定機をつかむ。しかし、ラストの精度を欠いて追加点はならず。そのまま試合は1対0で京都が逃げ切るかと思われた後半37分に山形はこぼれ球を拾った右サイドバックのDF宮本のミドルシュートから最後は途中出場のFWハン・ドンウォンがヘッドで決めて同点に追い付く。FWハン・ドンウォンはJリーグでのデビュー戦でゴールをマーク。
追いつかれた京都はFW柳沢に代えてFW宮吉を投入。勝ち越しを狙うが、山形は後半47分に右サイドからこれまた途中出場のMF下村のアーリークロスをFW田代がボレーで合わせて逆転に成功する。FW田代は今シーズン4ゴール目。結局、2対1で山形が鮮やかな逆転勝利。今シーズン3勝目を挙げた。対する京都はまさかの逆転負けで4敗目を喫した。
■ 鮮やかな逆転勝利スッキリとした展開にはならなかったが、京都が前半にセットプレーから1点を先制し、後半もたびたびチャンスを作った。試合の流れ的にも京都がそのまま1対0で勝利を収めるのかと思われた後半37分にFWハン・ドンウォンのゴールで山形が追いつくと、後半ロスタイムに新しいエースストライカーのFW田代が値千金の逆転ゴール。ホームで強い京都相手に見事な勝利を飾った。
前半はミドルシュートしか得点の可能性を感じさせるシーンはなかったが、後半開始からMF宮沢に代えて長身のMFキム・ビョンスクを投入。FW田代の他に、もう1枚ゴール前に高さを加えて京都DFにプレッシャーをかけると、後半32分にMF秋葉とMF北村に代えてFWハン・ドンウォンとFW下村を投入。この3枚の交代策が見事に当たって、FWハン・ドンウォンが同点ゴール、さらにMF下村が決勝アシストを記録。小林監督の選手交代が見事にはまって、「負けゲーム」を「勝ちゲーム」に持っていくことに成功した。
最低限としてJ1残留を目指す山形にとっては、この勝ち点「3」は大きく暫定で8位に浮上。着実なステップで勝ち点を「11」まで持ってきた。
■ 決勝ゴールの田代有三ロスタイムに決勝ゴールをマークしたFW田代はこれで4ゴール目。今シーズンの山形の3勝はすべてがFW田代の決勝ゴールでもぎ取ったものであり、コンディションが整っていないFW長谷川の穴を埋める以上の働きを見せている。
この日は韓国代表経験のあるFWカク・テヒとマッチアップすることが多かったが、186cmと高さのあるDFカク・テヒを相手にしても高さで負けておらず、しっかりと前線で起点になった。山形のサッカーは中盤でキレイにつなごうとするサッカーではないのでフォワードの役割が非常に大きいが、これまでの所、期待以上の働きと言ってもいいほどのパフォーマンスを見せている。
■ 好プレーを見せる宮本卓也FW田代と並んで山形の中で目に付いた選手は右サイドバックのDF宮本。C大阪から山形に移籍して3年目。豊富な運動量を武器にユーティリティプレーヤーとして評価を高めてきたが、今シーズンは右サイドバックでプレーし、好プレーを見せている。
サイド攻撃が生命線の山形にとって、これまでMF宮沢とDF石川のいる左サイドがクローズアップされてきたが、この日は左サイドのDF石川よりも右サイドのDF宮本の方が積極的で目立っていた。その積極性は後半のミドルシュートからの同点ゴールにも結びついた。守備力には定評がある中、攻撃でも関与してチャンスを演出することが出来るようになると、その評価はさらに高まることになる。
■ 痛い敗戦一方の京都は勝てそうな試合を逆転負け。厳しい結果となってしまった。好調のMF角田のゴールで先制したが、ディフェンスのマークが緩んだ隙を突かれて2失点。大事な場面でマークが外れてしまっては、リードを守って逃げ切ることは出来ない。
追加点が奪えなかったことが敗因の1つであるが、加藤監督の交代策にも疑問が残った。後半16分に右サイドハーフで起用されていたMF西野に代えてFWドゥトラを投入。カカー2世という評判もあるFWドゥトラはJリーグ2試合目の出場でサイドからのドリブル突破を見せるなど、前回のC大阪戦よりも印象的なパフォーマンスを見せたが、FWドゥトラの投入によりFW柳沢を1トップの位置から右サイドにポジションをスライドさせる必要が出てきて、それなりに機能していた布陣を自らで変える必要が出てきた。
試合をクローズさせてもいい状況で、アクシデントのためのDF染谷の投入と、同点に追いつかれてからのFW宮吉の投入は妥当ではあったが、小林監督の積極的でかつ的確なメンバーチェンジと比べると、FWドゥトラ投入の意図は不明確でかつ結果にも結び付かなかった。慣れない右サイドハーフというポジションでの先発となったがMF西野のプレーは悪くはなかったため、わざわざ機能していたメンバーを自らで諦めてしまったという印象となった。
■ 新戦力のドゥトラ京都は開幕前の怪我で戦線を離脱していたFWドゥトラが2試合目の出場。後半16分から出場し1トップを務めた。京都が押していた時間帯での投入であり、追加点を期待されての登場であったが、結果は残せなかった。ただ、前述のようにほとんどインパクトのあるプレーは見せられなかったC大阪戦と比べて、ドリブルで持ち味を発揮して見せた。
188cmという長身であるが、持ち味はやはりドリブルやショートパスということになるのだろう。スピード感はそれほどでもないが、細かい足技を持っていて高さもあるということで相手にとっては守りにくい選手であることは間違いない。ただ、京都の中でポジションを探すのは難しい。この運動量や守備意識では中盤で起用するのは難しく、MFディエゴとFWドゥトラを中盤で並べると言うのは現実的ではない。
前評判が高くいい選手という評判のFWドゥトラの加入が決まった時、MFディエゴの後釜としての獲得であってMFディエゴは移籍するのかと思ったが、とりあえずMFディエゴの移籍はなさそうで、加藤監督も使いどころが難しいだろう。
■ 100ゴールならず4節のジュビロ磐田戦でゴールを決めてリーグ戦で99ゴール目をマークしたFW柳沢であるが、後半41分までプレーしてシュートはわずかに1本だけ。今シーズンは怪我もなくて開幕から8試合連続でスタメン出場を果たしているが、8試合で合計9本のシュートを放っただけ。もともとシュートへの意識はそれほど高くはない選手ではあるが、1トップとしてはかなり物足りない数字が残っている。
高校時代から注目を集めたFW柳沢も32歳になって、キレという点ではもう一つになってきている。1トップを継続するなら、その選択肢はFW柳沢以外に有効な選択肢がないので仕方がないが、上位を狙うのならばエースの活躍は不可欠であるが・・・。
■ 覚醒しつつあるMF角田誠敗れたものの、ここ最近のMF角田のプレーは以前とは違っていて非常に雰囲気を感じさせるプレーを見せている。この日はなったシュートは4本。前節のFC東京戦でも4本のシュートを放っているが、ボランチの一角としてプレーしている選手としては目立つ数字であり、すでに今シーズン3ゴールを記録している。
この日も、何故かMF角田のところにいいボールが多く回ってきて、ゴールシーン以外でも見せ場は多かった。終わってみれば、「MF角田がチャンスに決めていれば・・・。」という試合にはなったが、シュートへの意欲やゴールへの嗅覚を見ると並の選手とはいえない。
■ 小林伸二日本代表監督の可能性①2009年シーズンは下馬評を覆す開幕ダッシュを見せて、ほとんど残留争いに巻き込まれることなく15位でJ1残留を果たした山形の小林監督。大分トリニータのJ1昇格、2005年のセレッソ大阪の躍進、山形の昇格と残留とインパクトのある仕事を続けている。
少し気の早い話になるが、2006年と同じような過程をたどるとすると、2010年7月下旬には新しい日本代表の監督が決定することになる。岡田監督の後任候補として、鹿島アントラーズのオリベイラ監督、元浦和レッズのブッフバルト監督、名古屋グランパスのストイコビッチ監督、ガンバ大阪の西野監督らの名前が挙がっていて、現段階では誰が次の日本代表監督に就任するのか分からない。
クラブと代表の監督を兼任することはないと仮定すると、シーズン途中でのJリーグクラブからの監督引き抜きは2006年のイビチャ・オシム監督の時に騒動になったので現実的ではないが、契約の問題を抜きにして「誰が今の日本代表の監督にふさわしいのか?」を考えてみると、小林伸二監督のその上位にランクされる監督といえる。C大阪時代の2006年シーズンのように行き詰った時の打開力に対する不安はあるが、「世界のサッカーにおける日本代表の立ち位置」と「J1におけるモンテディオの立ち位置」はよく似ていて、それほど戦力を持たないチームを戦う集団に変身させる術を持っている。
■ 小林伸二日本代表監督の可能性②ただ、もし小林ジャパンが実現したとしても、まず間違いなく「地味」と評価されるだろうし、マスコミ向けに気の利いた発言もないだろう。また、ピッチ上で見せるサッカーもスペクタクルとはいい難いサッカーなので、「つまらないサッカー」という評判も広がるだろう。そういう意味では全くマスコミ受けしない監督である。そういう意味では代表人気回復の起爆剤になるとはいえない。
それでも、いつも山形の試合では、中継マイクから小林監督の大きな声が聞こえてきて、(本人にその気があるのかは全く分からないが、)その情熱的な姿勢は魅力的であり、その情熱こそ、今の日本代表にもっとも必要なものといえるのではないだろうか?
人気、期待感をアップさせるためには外国人のビッグネームの招へいが一番いいのは事実だが、すでに実績のある有名な外国人監督を連れてきたとして果たしてどれだけの情熱を持って日本代表の強化を進めてくれるのか?という疑問もある。また、そもそも、協会も、マスコミも、代表サポーターも十分に成熟していない中で、スペクタクルなサッカーで万人の支持を得られるようなネームバリューと実績のある外国人監督を招へい出来る可能性はゼロに近い状態であるという事情もある。
もちろん、小林監督はモンテディオ山形との契約が残っており、2010年7月に「小林ジャパン」が誕生する可能性はゼロである。空想の話となるが、こういうタイプの監督が岡田監督の後任としてはベストではないかな、と考えられる。
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