■ 第8節J1の第8節。第7節の湘南戦ではMF香川のロスタイムのゴールで2対1の勝利を飾り、今シーズン2勝目を挙げたセレッソ大阪。ホームでの戦いが続く中、長居スタジアムで3位の名古屋グランパスと対戦した。名古屋は第7節のアルビレックス新潟戦は試合終了間際に追い付かれて1対1のドロー。水曜日に行われたサンフレッチェ広島戦は後半43分にFW佐藤寿にゴールを奪われて0対1の敗戦。2試合連続で勝利が無い。
ホームのC大阪は<4-2-3-1>。GKキム・ジンヒョン。DF高橋、茂庭、上本、尾亦。MFアマラウ、羽田、家長、乾、香川。1トップでFW播戸。MFマルチネスとFWアドリアーノが怪我のため欠場し、MF家長とFW播戸がそろってスタメン出場。MF家長は今シーズン2試合目のスタメン、FW播戸は初スタメン。怪我が癒えたMF清武ではなく2年目のDF丸橋がベンチ入り。
対するアウェーの名古屋は<4-2-1-3>。GK楢崎。DF田中隼、増川、闘莉王、阿部。MF中村直、三都主、ブルザノビッチ。FW金崎、玉田、マギヌン。水曜日の広島戦では先発だったMFダニルソン、FW巻がスタメン落ち。怪我で戦列を離れていたFW玉田が復帰し、3トップの中央に入る。DF阿部が左サイドバックに入って、MF三都主がボランチ。1ボランチというよりはMF中村とMF三都主のダブルボランチ気味の布陣。FWケネディは2試合連続で欠場。
■ ロスタイムの決勝ゴール試合は開始早々にいきなり名古屋のFWマギヌンが負傷退場するアクシデントが発生。前半8分という早い段階でMF小川と交代する。名古屋は2試合連続で勝利なしということで相当な気合が入っており、前から積極的にプレスをかけてC大阪の自由を奪う。前半は怪我から復帰したFW玉田がいいアクセントになるが、FWケネディを欠いてゴール前の高さという面では迫力を欠く。前半は名古屋ペースで進むも0対0で終了する。
後半は、中3日での試合ということで徐々に名古屋のスタミナが切れ始めて、C大阪のカウンターが効果的となる。そのカウンターの中心になったのはMF家長で、MF家長のドリブルが抜群のキレを見せてチャンスを演出する。C大阪は何度か決定機を迎えるが、GK楢崎が好セーブを見せてゴールを許さない。
0対0のままで迎えた後半のロスタイム。名古屋が右寄りの位置からフリーキックを獲得。FW玉田が左足で蹴った速いボールに対して、クリアしようとしたC大阪のMFアマラウがクリアしきれずにゴールイン。結局、1対0で名古屋が勝利。今シーズン5勝目を挙げて2位に浮上。一方のC大阪は惜しい試合を落とした。
■ 3試合ぶりの勝利2試合連続で試合終了間際にゴールを奪われて勝ち点を取りこぼしていた名古屋が、今度は、逆に後半ロスタイムに決勝ゴールをマーク。後半は劣勢だったが、アウェーで大きな勝利を勝ち取った。
ここ最近は不出来な試合が続いていたということもあってか、DF三都主をボランチで起用し、MF中村とのダブルボランチ気味の布陣でC大阪の3シャドーに対応。また、FWケネディ不在の中で、同じポストタイプのFW巻を起用せずに怪我の癒えたFW玉田を3トップの中央で起用。FW玉田とトップ下のMFブルザノビッチのポジションチェンジもスムーズで、ここ数試合の停滞していた攻撃はやや改善を見せた。
ただ、チーム内のポジション争いが厳しくて結果を残してアピールしたい、という立場の選手が多くいるためなのか、力みがあってシュートの確実性を欠いてしまった。ミドルシュートもほとんどが可能性の無い「枠外のシュート」であり、崩し切ったシーンでは確実に行こうとして思い切りを欠いた。C大阪の守備陣がDF茂庭とDF上本を中心に踏ん張ったという部分もあるが、攻撃陣はFWケネディが戻ってくるまでは厳しいかもしれない。
■ ゴールに直結するプレーが求められる金崎夢生この試合では、ロンドン世代であり2月に行われた東アジア選手権の日本代表にも選ばれている名古屋のFW金崎とMF香川の初対戦となったが、共にゴールもアシストもなく、双方、見せ場は少なかった。
大分から移籍してきたFW金崎は、今シーズン、開幕から8試合連続で先発出場。右のウイングを基本ポジションとして高確率の打開力を見せて、名古屋の攻撃にバリエーションを加えているが、なかなかゴールに直結する活躍が出来ずにいて1ゴールのみ。いいプレーは見せているが、いいプレー止まりに終わっている。
相手の左サイドバックの選手とマッチアップすることが多くて体格的にも有利に働くため、普通に仕掛けていけば、サイドを打開できる能力を持つが、ラストのパスやシュートで正確性やアイディアを欠くシーンが目立ち、もったいないプレーも多い。ウイングの位置なのでチャンスを作るのがメインの仕事ではあるが、ゴールやアシストに絡んでいかないと攻撃的な選手は評価されにくい。もう一段のレベルアップが求められる。
■ 守りきった楢崎後半にMF家長を中心に攻め込んできたC大阪は前線のコンビネーションから何度もいい形を作って、MF家長、MF乾、MFアマラウがいいミドルシュートを放ってゴールに迫ったが、すべてGK楢崎がはじきだして無失点。「さすが日本代表の正ゴールキーパー」というべき実力を見せつけた。
一度、MFアマラウの強烈なミドルシュートを正面にはじいてゴール前のMF乾に押し込まれそうになったが、それ以外ではボールをはじく位置も完ぺきで隙がなかった。川崎フロンターレのGK川島やサンフレッチェ広島のGK西川もいいGKに育ってきているが、南アフリカ大会でもGK楢崎が日本代表のゴールを守ることになるだろう。
■ アドリアーノの代役全試合でスタメン出場していたFWアドリアーノが怪我のため欠場したことで、今シーズン初先発のチャンスをつかんだFW播戸。前半35分に右サイドに流れたMF香川のパスを受けて、いいタイミングでシュートを放ったが、シュートはGK楢崎の真正面。チャンスはこのシーンだけで、大きなアピールチャンスだったが不完全燃焼で終わってしまった。
そして、そのFW播戸に代わって出場したのがFW小松。J2で2007年は12ゴール、2008年は16ゴールを挙げているストライカーは、今シーズンも開幕から出遅れていたが、この日が初出場となった。
1トップのC大阪の中で、FWアドリアーノ、FW播戸、FW小松の3人でフォワードの1つのポジションを争うことになるが、187cmの高さというのがFW小松の魅力であり、ポストプレーは得意ではないが単純なハイボールの競り合いには強さを発揮する。この日も自軍からのロングボールに対して名古屋のDFに競り勝ってチャンスになりかけたシーンがあったが、この高さはやはり魅力である。
同じ長身のFWカイオとのポジション争いでは運動量や献身性に欠けるため劣勢であったが、FWアドリアーノやFW播戸との争いとなると、高さでは有利になるためアピールするチャンスも出てくる。この日はGKキム・ジンヒョンのロングキックのミスが目立ったが、FW播戸、MF香川、MF乾、MF家長の前線ではロングキックを蹴っても勝てる見込みが薄く、GKキム・ジンヒョンにとっては厳しい状況になっている。今後、FWアドリアーノのプレーも悪くないが、場合によっては、FW小松がスタメンでも面白いのではないか。
■ 丸橋投入のタイミングC大阪にとって悔やまれるのは、試合終了間際のDF丸橋の投入。FW金崎にやられ始めていたDF尾亦に代えてフレッシュなDF丸橋を入れて対策を立てようとしたが、DF丸橋がファーストプレーでFW玉田のドリブルに対して不必要なファールでフリーキックを与えてしまって、そのファールが決勝点につながっ。
U-18セレッソユース出身のDF丸橋は2年目でプロデビュー戦となる試合。0対0の試合終盤の投入はやや酷であり、DF尾亦を変える必要があるのであればDF石神を投入するのがベターだったといえる。
昨シーズン終盤の愛媛FC戦で、DF丸橋と同期でユース出身のMF山口螢をいきなり先発で抜擢し、MF山口螢がガチガチのプレーに終始した試合を思い出させたが、若い選手の起用に躊躇しない姿勢がクルピ監督の持ち味であり、MF香川やMF乾の才能を引き出した部分もある。高いレッスン代になってしまったが、DF丸橋がこの試合を糧に成長してくれたら、それはそれでOKである。
■ サプライズ召集は家長で・・・敗れはしたもののC大阪の中ではMF家長のプレーが輝いていた。第7節の湘南戦に続いて今シーズン2試合目の先発出場となったが、すでに攻撃の中心となっていて、ずっとC大阪でプレーしているような錯覚を覚えさせるほどチームになじんでいる。
運動量はそれほど多くはないが、ボールを持った時はほとんどボールを失わないので、味方からの信頼も厚く、ボールが良く集まってくる。第6節の横浜Fマリノス戦まではビルドアップに苦しんでいたが、MF家長が入って大きく改善された。大分時代はどちらかというとパサーとしての才能を見せて、後半の躍進に貢献したが、C大阪では武器であるドリブルで積極的に仕掛けていて、ほとんどの場面で局面を打開することが出来る。
課題は言わずと知れた得点力であり、昨シーズン前の通算成績は117試合でわずかに6ゴールのみと、彼のポテンシャルを考えると信じられないような低調な成績が残っていて、この日もGK楢崎のパフォーマンスが素晴らしかったとはいえパンチ力のあるシュートがコースに飛ばずにゴールは生まれなかったが、きっかけさえあれば、変わりそうなくらいの有り余るポテンシャルは備えている。
各年代の日本代表でプレーしてきたMF家長であるが、2008年の大怪我の影響もあって少し遠回りしたことで、A代表のキャップ数は「1」のみ。オシム監督時代の2007年3月のペルー戦の1試合に途中出場しただけであり、現実性に乏しいが、現時点での調子と日本代表にもっとも必要とされるプレーが高いレベルでこなせそうなポテンシャルを考えると、5月10日のメンバー発表の時に、MF家長が日本代表に召集されてもいいのではないか?と思わせるほどのプレーを見せた。
MF香川とMF家長のプレーを見ていると、2007年に18歳だったMF香川がトップチームの試合に出場し始めるようになった頃のことが思い出される。18歳のときのMF香川はドリブルとパスの使い分けがうまくて、(運動量は今のMF家長よりもはるかに多かったが・・・、)、判断も正確で、今のMF家長のような確実なプレーを見せていた。その後、MF香川は「得点を取ること」に特化していってため、18歳の頃に持っていた繊細さはなくなってしまったが、MF家長はMF香川がもっていて失ったいったものを、今も、まだ持っているように思う。
第5節の京都サンが戦のFW播戸のゴールにつながったワンツーを見ても、MF香川とMF家長のコンビはいい関係になっている。そこに、もっとMF乾が絡めるようになると、攻撃はもっと面白くなるだろう。そして、サプライズで「家長in」という話はないだろうけれども、あったら面白い。
家長昭博 (いえなが・あきひろ) 0373 2006/10/08
【磐田×G大阪】 思わぬ連休 0393 2006/10/29
【G大阪×清水】 優勝戦線に残ったガンバ 0424 2006/11/21
【U-21日本×U-21韓国】 可能性を感じさせた両翼 0537 2007/03/24
【日本×ペルー】 ジョーカー参上 0540 2007/03/28
【U-22日本×U-22シリア】 見えた片鱗 0649 2007/07/14
【ナビスコ:G大阪×浦和】 飛翔する家長 0734 2007/09/15
「個の力」というフレーズにだまされるな!!! 0764 2007/10/03
川淵氏の「家長に対する移籍のススメ」について 1338 2009/02/18
【大分×LA】 復活をかける家長昭博 1832 2009/10/24
【大分×清水】 家長昭博のベストポジションは? 1836 2009/10/25
【京都×大分】 J2降格が決定した日 1937 2010/01/10
09年 移籍市場の雑感⑧ (ダニルソン、増田誓志、高橋義希、ミシェウ、家長昭博) 1986 2010/03/15
【C大阪×G大阪】 セレッソのベスト布陣は? 1990 2010/04/03
【C大阪×京都】 2006年以来のJ1での勝利
- 関連記事
-