■ まさかまさかのGK山岸の決勝弾試合は前半26分にアウェーの山形が先制する。キーパーと最終ラインの間に出てきたパスに対して果敢に飛び出して来た磐田のキーパーのGK八田のクリアボールがプレスに来たFWディエゴの足に当たってルーズボールになると、タイミングよく攻撃に参加してボールを拾った右WBのMF山田拓のクロスからゴール前でフリーになっていたFWディエゴが頭で決めて勝つしかない山形が先制に成功する。
1点を追う磐田は前半48分にDF駒野の横パスからボランチのMF宮崎智が左足でシュートを放つと、ゴール前の混戦からMF松井大とDF石井秀が競ったボールがちょうどいいところにこぼれる。これをフリーのMF山崎亮が押し込んで1対1の同点に追いつく。スタメン抜擢のMF山崎亮は名波監督の期待に応えた。ビハインドで折り返すと嫌な流れになったが、ほぼラストプレーで磐田が同点に追いついた。
後半は磐田ペースになる。山形は後半12分に大黒柱のFWディエゴが右足の太もも辺りを痛めて途中交代となるアクシデントが発生する。2点目を取ることができる非常に有利な立場になる磐田はトップ下のMF小林祐が頻繁にボールをに触るようになって、後半はゴール前に攻め込んだ回数は磐田の方が圧倒的に多かったが、試合を決定付ける2点目のゴールを取ることはできない。
試合は1対1のまま進んで「このまま終わると引き分けで磐田の勝ち抜け」となるところだったが、後半47分に山形は右サイドのCKを獲得すると、DF石川竜が左足で蹴ったボールに対してニアサイドに入って来たキーパーのGK山岸がヘディングシュートを放つ。これが見事に逆サイドのゴールに吸い込まれて山形が土壇場で2対1と勝ち越しに成功する。もちろん、GK山岸はプロ初ゴールとなった。
結局、何とも言えない劇的な展開で2対1でアウェーの山形が勝利した。この結果、12月7日(日)に味の素スタジアムで行われる昇格プレーオフの決勝戦は千葉 vs 山形という対戦カードになった。千葉が勝ち上がると2009年以来で、山形が勝ち上がると2011年以来のJ1復帰となる。一方の磐田はまさかまさかの展開でプレーオフ1回戦敗退となった。これで至上命題だった「1年でのJ1復帰」はならなかった。
#13 「山形 県民113万人の思いを一つにJ1まで駆け上がろう!」
#14 コレオグラフィー
■ 「スポーツは筋書きのないドラマ」試合はJリーグ史に残るような激闘となった。磐田は「ホームで引き分けでもOK」という有利な立場だったが、ミスから前半26分に山形のFWディエゴに先制ゴールを許した。厳しい展開になってしまったが、前半のラストプレーと言えるような時間帯で同点に追いつくことができた。前半はどちらというと山形ペースだったが、後半は追いついた磐田がペースを握っていたので、信じられないような幕切れとなった。
Jリーグの試合でキーパーがゴールを決めたのは7例目だったというが、過去の例というのは、「ロングキックが風に乗ってそのまま入ってしまった。」というケースか、「キーパーがPKキッカーを任された。」というケースのどちらかで、ヘディングでキーパーがゴールを決めたのはJリーグ史上初ということで、なかなか観ることができない「超・レアなシーン」を目の前で観ることができた。
185センチのGK山岸のマークに付いていたのはDF岡田隆だった。彼は172センチなので小柄な選手である。高さのミスマッチが生じていたのは事実だが、あのような形でニアサイドで触られて、あの位置に決められてしまったら、守備側の選手がどうすることもできない。上がって来たキーパーに対してヘディングの強い選手(FW前田遼など)をマークに付けることは難しいので、仕方がないというしかない。
当然のことながら、キーパーがセットプレーのときに上がって来るのは後半のアディショナルタイムで、1点ビハインドか、同点の状況に限られる。なので、キーパーの選手がセットプレーからゴールを決めるときはほぼ間違いなく「劇的なゴール」になるが、生きるか死ぬかのプレーオフでこういうことが起こるのだから鳥肌ものである。言い古された言葉であるが、「スポーツは筋書きのないドラマ」である。
#15 ハーフタイムに突入
#16 勝利の瞬間のGK山岸
■ J1昇格に王手を賭けた山形山形はこれで決勝進出を果たした。千葉との試合は味の素スタジアムで行われるので、当然、近場の千葉サポーターが大半になると思われる。雰囲気的には「千葉ホーム」のような感じになると思うが、リーグ戦の終盤戦、そして、決勝まで勝ち上がった天皇杯の粘り強い戦いぶりは脅威であり、「今の山形の勢い」というのはとんでもないレベルである。千葉にとっては何とも嫌な相手が勝ち上がって来た。
気になるのはFWディエゴの症状である。右足の太ももを押さえていたので、筋肉系のトラブルだと思われる。下がったあとも、試合後も、はしゃいでいたので、重症ではないと思うが、こういう感じで負傷交代したときは、回復するまでに最低でも2週間ほどかかるのが通常である。フィニッシャーとしても、チャンスメーカーとしても、超一流なので、FWディエゴがいないとなると大きな戦力ダウンである。
ただ、今の山形には「それでも何とかなりそうだ。」、「何とかしてしまうのではないか?」と思えるほどの勢いがある。MF川西は相変わらず好調で、途中出場のMF伊東俊は2度ほど大きなチャンスを作った。そして、MF山崎雅は勝負強い選手で、MF中島裕も経験のある選手である。FWディエゴが欠場となる非常に痛いが、曲者が揃っており、大一番で何か大きなことをしでかしそうな選手ばかりである。
#17 ピッチとの距離が近い。
#18 ゴール裏(1階席)から の景色
■ 1年でのJ1復帰はならず・・・。一方、磐田にとっては信じられないような敗戦で、今シーズンの戦いが終了した。「2014年のJ2の大本命」と言われており、開幕前の評価はダントツだったが、リーグ戦は4位に終わって、プレーオフも1回戦敗退となった。明るい話題がなかったわけではないが、結局のところ、名波監督になってからも成績が向上することはなかった。プレーオフも含めた最後の7試合は勝ちなし。これでは話にならない。
1対1の同点に追いついた後、2点目を取れなかったたことが敗因の1つである。シュート数は磐田は16本で、山形はその半分の8本だけ。後半は磐田がボールを保持して攻め込む時間帯が続いて、「入ってもおかしくないシュート」は何本もあった。バーに防がれたシーンはアンラッキーだったと言うしかないが、「決めれるときに決めないと・・・。」というサッカーの試合ではよくある敗戦パターンの1つになった。
「引き分けでもOK」という心理状態がマイナスに作用したとは考えにくい。同点で終盤に入ったが、磐田の方も極端に守りを固めてひきこもるようなことはなかった。2点目を奪うチャンスはいくつもあったので、必要以上に守りに入ったわけではなかったが、山形はいいキッカーを擁しているので、セットプレーを与えると何が起こるかわからない。嫌な時間帯にセットプレーを与えてしまったことが残念だった。
2失点目のCKはFW前田遼がハーフウェーライン付近でボールを失ったことがきっかけだったが、この日のFW前田遼は不用意な形でボールを失うシーンが多かった。90分間の戦いの中で4・5回ほど「失ってははけないエリアでボールを失う。」というシーンがあった。FW前田遼にボールが入ったときの山形の守備が良かったのは間違いないが、FW前田遼がやや精彩を欠いたのは誤算だった。
#19 試合後の両キーパーの握手
#20 勝利の報告
(
下)に続く。
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