松前緒花の一つの終わりと新しい始まり。
喜翆荘は終わりますが、緒花には夢が出来ました。
つまり喜翆荘は終わっていないのです。
堂々完結した「花咲くいろは」。
最終回としてこれ以上素晴らしく収めきった内容も
中々無いでしょう。感無量です!
余韻を残した終わらせ方が素晴らしいです!
感想ぼんぼり祭りの虚構空間
私が今回注目したいのは、ぼんぼり祭り自体の描写です。
ぼんぼり祭りの描写は、おそらく実在する祭りを取材して描かれたものでしょう。
様々なアニメ作品で「祭り」という記号は描かれても、
「ぼんぼり祭り」という固有名詞をもった「祭り」を描いたのは中々珍しいです。
むしろよくここまで描ききったなぁと、その労力に関心してしまいます。
おごそかでありながら、賑わいも感じさせ、まさに「祭り」だと感じる事ができました。
正直、鳥肌が立ちましたね。
緒花の目標(夢?)と恋問題は解決
緒花の目標というか夢は決まったようです。
そして祭りに駆け付けたこうちゃんには、ドサクサに紛れてながらも
本心である「好き」と告白しました。
焼きソバ屋の心憎い配慮ですね。
そんな緒花の目標は
「四十万スイになりたい」という事でした。
女将とその旦那の二人で始めた夢。途中で一人になりましたが、
女将・おばあちゃんの夢は緒花に引き継がれた事を指し示す描写です。
祖母から孫へという血縁的な夢の継承は心躍る展開です。
また、皐月とスイの関係も無事和解しました。
一つの終わりは状況を変えていくのでしょうね。
終わりを感じさせる描写は未来への伏線
最終的に、喜翆荘は建物は保管されるも閉館。
従業員のみんなもそれぞれの新しい進路に向かって旅立ちます。
そんなみんなが去った後の喜翆荘を女将が振り返ります。
ガランとした風景に終わりを感じさせるものがあります。
女将の夢はある意味終わったのかもしれませんが、
女将はそこで自分が見たかったであろう喜翆荘の姿をイメージします。
こういうシーンには弱いですね。
最後には「あなた」が見守ってくれた事を確認する女将でした。
これらの描写で喜翆荘は一つの終わりである事を視聴者に印象づけます。
電車を使ったさよならと新たな出発(希望)の描写
物語ラストのさよならと新たな出発を語るのに電車が効果的に用いられました。
左(上手)から右(下手)にやってくる電車。緒花も右に向いています。
ここでは電車が、緒花の喜翆荘との女将との別れを描くものに用いられます。
別れの場面に電車は効果的です。
別れたくない気持ちがある中で旅立たないといけない。
時刻通りに動く電車はそんな気持ちを断ち切るのに効果的だと感じます。
そして緒花が登校する時は、電車は右(上手)から左(下手)に移動。
緒花も左側に向いて、移動しています。
というように、別れの場面と登校の場面で移動・運動する方向が対照的です。
緒花と女将さんの別れたシーンにおける
左(下手)から右(上手)への運動・移動の視覚効果は
別れを感じさせる印象を視聴者に植えつけますが、
緒花が登校していく時の、右(右手)から左(下手)の視覚効果は希望を感じさせます。
そう考えると、基本的には空っぽの喜翆荘や緒花と女将の別れといった
寂しさを描写するシーンを積み重ねて、最後は希望的なシーン(登校シーン)で締めくくった。
この映像的連続の見事さには思わず声をあげてしまいますね。
もう一つ。電車ではないですが、ラストもラスト。緒花が線路を進むシーン。
線路をこえる事で、新たな一歩を踏み出す意味を込められた描写ですね。
緒花がいうには、まだ花は咲いていないようですが、
確実にこの物語の中で一歩花開いたといえると思います。
みんなの新天地
物語ラストでは、喜翆荘のみんなのその後がちょこっと描かれました。
こうしたシーンが少しでもあると、最終回らしくていいですね。
まとめ
一つの終わりは始まりでもある事を感じさせてくれた最終回でした。
他のアニメには見られないほどの最終回の余韻が素晴らしい。
良き邦画時代の抒情的な映像をみるような端正な映像が素晴らしいです。
絵コンテ・演出の安藤監督の映画好きが感じられる演出でした。
青鷺もきちんと飛び立ちました。
物語的にはどうしても喜翆荘をP.A.WORKSとして見てしまうので
作り手側の心情は、P.A.WORKSがもし無くなったらという事を想定しながら
描いたような印象があります。
でも新しい場所で精一杯頑張ればいいという事を示したので
変化があってもぼんぼればいいのでしょうね。
だから女将さんがP.Aの堀川社長の心情を投影しちゃった存在に見えて仕方が無いです。
P.Aは自分(堀川社長)だけの夢=喜翆荘(女将)だけの夢と考えると、
会社もいつまでも存続できるわけでもないし、自分がやり続ける事もまたできない。
女将はそんな堀川社長を浮き彫りにさせたようなキャラだと感じました。
はやく緒花みたいな後継者が見つかるといいですね。
シリーズ全体のまとめ
最終回のまとめ方が最高でしたね!
TVドラマ的でありながら、アニメっぽい描写を最大限有効活用した描写。
毎回、起伏ある、面白展開を挟みながらのシリーズ構成は
バラエティ溢れる展開で、楽しく・面白く・時には切なく見る事ができました。
とにかくオリジナルの2クール作品、しかもP.A.WORKSの自伝的な内容を
やり遂げた事は、P.A.WORKSにとって大きすぎる財産といえるでしょう。
今後のP.Aの飛躍が期待されると思います。
スタッフの皆様ありがとうございました!
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私が今回注目したいのは、ぼんぼり祭り自体の描写です。
ぼんぼり祭りの描写は、おそらく実在する祭りを取材して描かれたものでしょう。
様々なアニメ作品で「祭り」という記号は描かれても、
「ぼんぼり祭り」という固有名詞をもった「祭り」を描いたのは中々珍しいです。
むしろよくここまで描ききったなぁと、その労力に関心してしまいます。
おごそかでありながら、賑わいも感じさせ、まさに「祭り」だと感じる事ができました。
正直、鳥肌が立ちましたね。
緒花の目標(夢?)と恋問題は解決
緒花の目標というか夢は決まったようです。
そして祭りに駆け付けたこうちゃんには、ドサクサに紛れてながらも
本心である「好き」と告白しました。
焼きソバ屋の心憎い配慮ですね。
そんな緒花の目標は
「四十万スイになりたい」という事でした。
女将とその旦那の二人で始めた夢。途中で一人になりましたが、
女将・おばあちゃんの夢は緒花に引き継がれた事を指し示す描写です。
祖母から孫へという血縁的な夢の継承は心躍る展開です。
また、皐月とスイの関係も無事和解しました。
一つの終わりは状況を変えていくのでしょうね。
終わりを感じさせる描写は未来への伏線
最終的に、喜翆荘は建物は保管されるも閉館。
従業員のみんなもそれぞれの新しい進路に向かって旅立ちます。
そんなみんなが去った後の喜翆荘を女将が振り返ります。
ガランとした風景に終わりを感じさせるものがあります。
女将の夢はある意味終わったのかもしれませんが、
女将はそこで自分が見たかったであろう喜翆荘の姿をイメージします。
こういうシーンには弱いですね。
最後には「あなた」が見守ってくれた事を確認する女将でした。
これらの描写で喜翆荘は一つの終わりである事を視聴者に印象づけます。
電車を使ったさよならと新たな出発(希望)の描写
物語ラストのさよならと新たな出発を語るのに電車が効果的に用いられました。
左(上手)から右(下手)にやってくる電車。緒花も右に向いています。
ここでは電車が、緒花の喜翆荘との女将との別れを描くものに用いられます。
別れの場面に電車は効果的です。
別れたくない気持ちがある中で旅立たないといけない。
時刻通りに動く電車はそんな気持ちを断ち切るのに効果的だと感じます。
そして緒花が登校する時は、電車は右(上手)から左(下手)に移動。
緒花も左側に向いて、移動しています。
というように、別れの場面と登校の場面で移動・運動する方向が対照的です。
緒花と女将さんの別れたシーンにおける
左(下手)から右(上手)への運動・移動の視覚効果は
別れを感じさせる印象を視聴者に植えつけますが、
緒花が登校していく時の、右(右手)から左(下手)の視覚効果は希望を感じさせます。
そう考えると、基本的には空っぽの喜翆荘や緒花と女将の別れといった
寂しさを描写するシーンを積み重ねて、最後は希望的なシーン(登校シーン)で締めくくった。
この映像的連続の見事さには思わず声をあげてしまいますね。
もう一つ。電車ではないですが、ラストもラスト。緒花が線路を進むシーン。
線路をこえる事で、新たな一歩を踏み出す意味を込められた描写ですね。
緒花がいうには、まだ花は咲いていないようですが、
確実にこの物語の中で一歩花開いたといえると思います。
みんなの新天地
物語ラストでは、喜翆荘のみんなのその後がちょこっと描かれました。
こうしたシーンが少しでもあると、最終回らしくていいですね。
まとめ
一つの終わりは始まりでもある事を感じさせてくれた最終回でした。
他のアニメには見られないほどの最終回の余韻が素晴らしい。
良き邦画時代の抒情的な映像をみるような端正な映像が素晴らしいです。
絵コンテ・演出の安藤監督の映画好きが感じられる演出でした。
青鷺もきちんと飛び立ちました。
物語的にはどうしても喜翆荘をP.A.WORKSとして見てしまうので
作り手側の心情は、P.A.WORKSがもし無くなったらという事を想定しながら
描いたような印象があります。
でも新しい場所で精一杯頑張ればいいという事を示したので
変化があってもぼんぼればいいのでしょうね。
だから女将さんがP.Aの堀川社長の心情を投影しちゃった存在に見えて仕方が無いです。
P.Aは自分(堀川社長)だけの夢=喜翆荘(女将)だけの夢と考えると、
会社もいつまでも存続できるわけでもないし、自分がやり続ける事もまたできない。
女将はそんな堀川社長を浮き彫りにさせたようなキャラだと感じました。
はやく緒花みたいな後継者が見つかるといいですね。
シリーズ全体のまとめ
最終回のまとめ方が最高でしたね!
TVドラマ的でありながら、アニメっぽい描写を最大限有効活用した描写。
毎回、起伏ある、面白展開を挟みながらのシリーズ構成は
バラエティ溢れる展開で、楽しく・面白く・時には切なく見る事ができました。
とにかくオリジナルの2クール作品、しかもP.A.WORKSの自伝的な内容を
やり遂げた事は、P.A.WORKSにとって大きすぎる財産といえるでしょう。
今後のP.Aの飛躍が期待されると思います。
スタッフの皆様ありがとうございました!
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