ファミコンソフト「ドラゴンクエストⅣ」が今年の2月11日で発売25周年となった。
今回はドラゴンクエストⅣ(以下ドラクエⅣ)の物語について語ってみたい。
1章から4章まで
ドラクエⅣは復讐の物語だったと思う。
本作は5章構成だが、1章から3章までは、復讐の色は見えてこない。
1章のライアンでは、戦士としての職責を描き
2章のアリーナ達では、おてんば姫の好奇心を描き
3章のトルネコでは、商人の探究心と商才を描く。
キャラクターの特徴に沿った物語展開を行っている。
そして4章から復讐の物語としての本作が色濃くなる。
4章では踊り子マーニャと占い師ミネアの姉妹は、父親を殺したバルザックを探し
やがてバルザックの所在を突き止め、一矢報いる。
しかしバルザックの後ろ盾であるキングレオに返り討ちをされる。
そして姉妹は国外へ落ち延びる。姉妹の復讐は失敗に終わる。
5章前半
そんな姉妹の失敗を受けて5章冒頭は、
山奥に住む勇者の村が魔族の首魁デスピサロに滅ぼされる展開になる。
育ての親、剣術や魔法の死、そして幼な馴染みシンシアとの死別。
特にシンシアは変身の魔法「モシャス」を使い、勇者の身代わりになって死ぬ壮絶さ。
この一連の流れはプレイヤーに衝撃を与えたであろう。
そして滅ぼされた故郷を背にして勇者は旅を始める。
手がかりはデスピサロという魔族の首魁。
この勇者の旅の目的としては、愛する人を、村を滅ぼされた
無念を果たす為にデスピサロを探し復讐を果たすという解釈が自然にくると思う。
こうして4章から5章にかけて、復讐に失敗した姉妹と復讐の為に旅する勇者が
出会うことで、勇者の運命が大きく好転する事を描いている。
そして勇者達は他の仲間たち(導かれし者たち)と出合い、
マーニャ・ミネア姉妹の敵であるキングレオとバルザックと再戦する。
バルザックは進化の秘法でより強い姿に進化したものの、
力をつけた勇者たちに倒されてしまう。
二人の姉妹の復讐もキングレオ・バルザックを倒すことでひとまず達成。
そしてバルザックの背後にいたのはデスピサロだったことがわかり、
バルザックもまたデスピサロという巨悪の手先に過ぎないことがわかる。
モンバーバラの姉妹の復讐は終わっても、勇者の復讐はまだまだ続く。
5章中盤・後半
ただそんなデスピサロも勇者が旅をしていく内に明らかになることがある。
それはエルフのロザリーの存在だ。
ロザリーの流す涙が宝石となるために人間に狙われていて、
そんなロザリーに対しデスピサロは哀れみと愛情があったのだろう、
彼女を守るために人間を根絶やしにすることを決意する。
その為に魔族の存在を脅かす勇者の存在を疎ましく思い、
勇者の居場所を突き止め、勇者を滅ぼし、目的は達成されたかに見えた。
しかし勇者は仕留めそこない、それが故にキングレオなどの部下を失い、
そして魔族側の切り札として見なされていた
地獄の帝王エスタークも勇者達に倒されてしまう。
さらにロザリーもデスピサロがエスターク探しに躍起になる中で人間に惨殺されてしまう。
結果デスピサロは人間への復讐心に心が支配され
黄金の腕輪によって完成した進化の秘法により究極進化を遂げ、
自らの記憶を失うとともに究極のモンスターとして生まれ変わることになった。
こうしてドラクエⅣの物語は
愛する村、愛する人シンシアを失った勇者と
愛するロザリーを失ったデスピサロという
愛するものを失い、復讐心を持った二人の戦いという構図になる。
それぞれの正義と復讐。
5章後半~ED
最終的には、一人ぼっちのデスピサロに対して
仲間が傍に勇者はデスピサロを倒すことができた。
デスピサロも哀れだった思う。ロザリーを守るために、
人間全てを滅ぼすという果てしない野望に身を殉じるよりかは
ロザリーの傍にいてあげたほうが良かったと思う。
しかし彼自身の行動が結果的に勇者を目覚めさせ、
ロザリーを失い、最後は自らのみを滅ぼすことにもなった。
一方の勇者も復讐を果たしたとはいえ孤独だ。
仲間達はそれぞれの居場所があるのだが、
マスタードラゴンに天空城で住む事を拒絶した
勇者の居場所は滅ぼされた山奥の村しかない。
焼け果て朽ち果てた村に戻る勇者。
この姿に復讐の無意味さを感じずにはいられない。
そんな勇者にシンシアの姿が現れ、勇者を抱きしめる。
そして後ろには導かれし者たちが駆けつける。そしてエンディングが始まる。
まとめ
ドラクエⅣは勇者とピサロというそれぞれ愛するものを失った
二人が戦い合うという悲劇の物語だったと私は思う。
そして復讐を果たしても、元には戻らない虚しさと儚さを描いてもいたと思う。
ただ勇者には共に戦った仲間たちがいた。それは勇者の救いだったと思う。
最後のシンシアについては解釈が別れるところだが、
私は素直にシンシアが生き返った(生き返った理由は不明としても)と思いたい。
最後に。ドラクエⅣは魔族側にもプレイヤーを共感する動機がある事を描いたが、
これは天空シリーズとしてのドラクエがロトシリーズ以上に
キャラクターの描写に拘った方向性を指向した事を象徴するものだと思う。
そんなキャラクター同士のぶつかり合い、そして個性ある仲間達の魅力を描いたのが
「ドラゴンクエストⅣ」の魅力だと私は思う。
※今回の記事はFC版のドラクエⅣが対象。