「てさぐれ!部活もの あんこーる」が面白い。
この「てさぐれ!部活もの」シリーズの魅力は、
段取りから解放された時間、段取りに縛られない部分がある所だ。
アニメは物語に沿って、キャラクターや物事の一部始終を語る事に沿って作られ、
物語を語るために段取りが作られる。
ギャグアニメでも、オチや展開には一部始終があり、物語と段取りは存在する。
さらにアニメは脚本・絵コンテという設計図を書く。
この工程において、作品は作り込まれる為に、
物語・段取りから逸脱するアドリブ的な展開は行われにくい。
そんな物語や段取りから解放された瞬間を見せるのが
「てさぐれ!部活もの」シリーズだ。
この作品の構成は、まず台本通りに進行するが、
途中で台本に書かれた大喜利的なお題がキャラクターに振られる。
大喜利が始まってからは、声優さん達のアドリブで内容は進む。
このアドリブが始まってからは物語も段取りからも解放された時間帯になる。
西明日香さん達、声優さんの発想に委ねられた時間。
そんな物語や段取りから解放された時間が、見ていて聴いていて心地よい時間だと思う。
また「あんこーる」ではOPの最初の歌詞が毎回変わるのもアドリブ感を与えている。
OP曲と映像という基本変わらないものに対して、変化を付けることでも
油断をさせない、つまりアドリブ感を含ませている演出といえる。
アニメには物語があり、展開があり、段取りがある。
描かなかれば何も生まれないというアニメの特性上、
仕方のないこととはいえ、頑張れば頑張るほど作り込むことに縛られてしまう。
その為に、作品からアドリブ感を求めるのが難しいのだ。
しかし「てさぐれ!部活もの」シリーズは、
作画よりも前に録音を行う「プレスコ」という手法を取ることで、
まず声優さんのアドリブを生かすことで、
作品全体にアドリブ感を与えることに成功している。
振られた大喜利のお題から、どこにいくのかわからない、予測不能な感じ。
物語とは全く無縁な、声優さん達の発想を、
その発想からキャラクターの動きや表情を見ているのが面白い。
こうした感覚を味わえるアニメは極めて貴重だと思う。
確かに声優さんの発想を聴くだけなら、
アニメでも、なくてもいいという意見もあると思うが
ここでキャラクターが存在して、面白い変な動きをつけて、
声優さんのネタを増幅させる演出があるからこそ、
「てさぐれ!部活もの」は面白いのだと思う。
まとめ
アドリブが取り入れられているのは、石ダテコー太郎さんが関わった
「gdgd妖精s」「バックステージ・アイドル・ストーリー」「直球表題ロボットアニメ」
といった作品でも同様だ。
ただ「てさぐれ!部活もの」では今までの作品を手がけた蓄積、
今まで以上に声優さんを信頼して完全任せる石ダテさんの采配もあってか、
極めてアドリブ感が高い映像を見せてくれる作品だと思う。
物語を見せるのではなく、声優さんのアドリブを通した
キャラクター達の大喜利的な発想を見せる。中々TVアニメでは見られないスタイルだ。
この大喜利的な発想をみせるという点で、
TV番組的にいえば「「てさぐれ!部活もの」」はTVドラマ志向ではなく、
バラエティ番組志向のアニメだといえる。
これは石ダテコー太郎さんがお笑い芸人・放送作家から
キャリアを出発させた点にあるといえよう。
TVアニメでバラエティ番組を作れるのか。
そんな試みを石ダテコー太郎さん達スタッフは、
意識しているかしてないかはさておき、実際には実践していると思うし、
この試みが物語から段取りからの開放としての
「てさぐれ!部活もの」を際立たせていると思う。