佐藤順一原作・脚本・監督、ハルフィルム制作作品。
ARIAスタッフ再集結!が見所なんだろうなぁ。
何よりサトジュン原作は久しぶりだから盛り上がるなぁ。
物語のあらすじは公式ページによると
写真が大好きな高校生沢渡楓と彼女をとりまく人たちの日常とささやかな夢を描いた物語。
という事らしい。いわゆる日常を描いていく作品との事だろう。
ちなみにタイトルの「たまゆらと」いうのは写真に写る光の玉の事を指すそうだ。
描かれる世界のほんわかとした空気感と少女達の可愛さに癒される作品。
見ていて心が落ち着くというか、安らげるというか。
本作はARIAスタッフらしく、レイアウトに凝った画面が充実していた点と
少女達の何気ないやり取りが魅力的な作品だった。
些細な演出にまで気を配っていたし、キャラの立て方も上手だった。
ARIA好きなら、満足できる作品ではないだろうか。
-主観的ショットと客観的ショット-カメラ大好き、写真大好き沢渡楓。
楓はカメラを持っていなくっても、カメラのように手を構えてしまう女の子。
左のカットはそんな主人公の楓がカメラのように手を構えて
何かを撮影しようとしている所を楓の主観から映したショットだ。
しかし彼女は自転車運転中だったのだ。映すことに夢中になっていた彼女は
自転車から倒れようとしてしまう。その倒れる手前の状態が右のショットである。
この右のショットは友人のかおるの背中からその奥の楓を映すショットであり、
とても客観的に映されたショットであるといえよう。
つまりこの連続のショットは、楓が撮影しようとすると
行動が主観的になり周りが見えなくなる事がわかると同時に、
客観的に見るとおかしく可愛げのある少女だという事が表現されているのである。
この一連の流れで沢渡楓というキャラの一端がわかったような気がした。
こうした主観と客観の使い分けの上手さは流石だなぁと思った。
-キャラの性格は足で表現-キャラクターの性格を手で表現する事ができるのを知ったのはTV版「エヴァンゲリオン」
足で表現する事をができるのを知ったのは「ラブ&ポップ」だった。
それ以来、手や足のアップは注意して見るようにしている。
このショットはお好み焼きのお店で食べている時の彼女の足を撮影したわけだが
彼女達の性格の一端が垣間見えるだろう(本当は動いていないと何とも言えないが)
映像的にも見応えがあった「たまゆら」
原画に荒川眞嗣 神谷智大。
キャラクターデザインの飯塚晴子さんは最近引っ張りだこだなぁ。
↓以下、監督の佐藤順一氏についてちょっと書きたいと思う。↓
-私にとっての佐藤順一-セーラームーン おじゃ魔女どれみ ケロロ軍曹 といった人気シリーズの監督であり
現在もなお、ARIAシリーズ等でその才能を如何なく発揮している佐藤順一氏。
80年代からずっとTVアニメの最前線で戦い続け、仕事量と質の高さには驚嘆せざるをえない。
佐藤氏の最大の凄さは作品の企画を立ち上げ長寿化させる能力であろう。
どうすればキャラも話も人気がでるのかを本当にわかっている方なのだろう。
氏自体はセラムン等含め作品途中で降板してしまうのだが、
降板前に作品のフォーマットを作りあげ、後任への引き継ぎを準備万端にする。
そして後任がさらに別の切り口で作品世界を作り上げ作品の人気を不動にする。
その最高の成功例が幾原邦彦にバトンタッチしたセーラームーンだと個人的には思う。
他にも佐藤氏の逸話には「アニメーター経験がないのにアニメーターよりも絵が上手い」
と評されるように抜群の絵の技量をもっている。
特に絵コンテに関しては庵野秀明を含め、業界関係者から大絶賛されている。
甚目喜一名義で参加しているZガンダム・カウボーイビパップ・エヴァンゲリオンは必見だ。
そんな佐藤氏は少女を一貫して描き続けている監督さんだ。
少女を魅力的に可愛く見せるにはどうすればいいのかを徹底して追及している。
重要なのはセーラームーンやどれみというのは普通の女の子にも人気があった事なのだ。
つまり氏の作品にはポピュラリティ性があるということだ。
そのポピュラリティの源泉は必ず少女の性格が偏ったものではなく、
「一生懸命何かに頑張る女の子」をずっと描いているからだ。
これは特に「カレイドスター」や「魔法少女Tai」に顕著に発揮されている。
今回の「たまゆら」は徹底して少女の日常を描き続けている。
最近は「日常系」といわれるようにこうした作品群は多いが、
サトジュンならではの、カメラアングルの巧みさ、記号的演出の上手さが光っていた。
また写真撮影を通して、頑張る女の子という佐藤氏の基本路線もちゃんと描いていた。
そうした普遍的に共感できるキャラ作りが氏の作品の最大の魅力なのかもしれない。
佐藤氏には今後も「少女」を描き続けて、日本のアニメを引っ張っていってほしいと思う。
最後に佐藤順一に興味がある人には「ユンカース・カム・ヒア」をオススメしたい。