前に書いたことのある、無印リリカルなのはについての文を再構成してみた。
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2006/4/2
ネット上でのリリカルなのはの評価を聞いているうちに非常に見たくなってきてしまい、
先週末から借りてきて、昨日で全話見終えた。
全体的にみれば毎回テンションが上昇していく展開なのが見やすく、
1クールながらそれなりに纏まった内容になっていたと思う。
家族の話や友達の立ち位置が弱く、話に絡めなかったといった印象もある。
ただ、なのはとフェイトがいかに友情(百合)を育むかという本筋は
首尾一貫していた話の構成だったのでそこは一番評価したい。
作り手側もそこに一番力を入れていたはずだろうから。
下手に恋愛要素も入れなかったのも、そうした本筋を考慮したものだと思った。
基本的に物語の多くは他者とのコミュニケーションを如何に成立させるかという
主題を持った作品が多い。しかしこれを描くのはテーマを選ぶのは可能だが
それを上手く表現し作品の主題として完遂するのは難しい。
そういう意味でも「なのは」はこの単純な主題を丁寧に描き出した作品だったと思う。
「リリカルなのは」の大まかな構成は
①1話から3話までの、なのはが魔法少女になっていく過程の「なのは編」(起)
②4話から7話までの、ライバル・フェイトが登場し、その動機が語られる「フェイト編」(承)
③8話から12話までの、ドラマが本格的に動き出す、「プリシア事件編」(転)
④そして最終話の「エピローグ」(決)、と自分では分類してみた。
おもに話の評価についてのキーポイントは2つある。
1つ目は「なのは編」から「フェイト編」までのストーリーを
「話が緩い」と取るか取らないかによる。
しかし「事件編」以降、バトルメインの話・スペクタクル的な方向へ
シフトしていると考えると作り手側は序盤であえてその緩さを狙ったともいえる。
特にフェイトの動機とその実際を出すタイミングが遅かったのは
緩さを伸ばして後半に畳み掛ける為の展開であると言えるだろう。
二つ目は、なのはとフェイトの動機付けだ。フェイトの動機が明確なのに対し
なのはの動機が人として普通すぎる所にある。
自分は将来、何が出来るだろうという本当に普通の動機なのだ。
そのためどんどん何でもありになる本作の世界観では、なのはの動機は
テーマにこそなれドラマとしては成立しにくいのかもしれない。
だから後半はドラマ的な背景を持つフェイトに話がシフトし、それに引きずられる。
そのためなのはの立ち位置が弱いという言い方もできるが、フェイトに手をさしのべたのは
普通の女の子であったなのはなので主人公はなのはでいいのだと思う。
魔法少女モノでありながら、レイジングハートバルディッシュといった
マジックアイテムをメカニカルなものに置き換えて、
まさに庵野秀明の言うオタク好きな二大要素「メカと美少女」を
上手にミックスしそれを上手くしたてたのは特筆に価する。
(要は無理に女の子をロボットに乗せなくても良いって事)
特に、11話でなのはとフェイトが戦う所、12話でメカっぽい敵と戦う姿は
魔法少女の姿を借りたロボットものアクションだった。フェイトはまるでGWのデスサイズだ。
萌えと少年漫画的展開(燃え)をミックスする内容は「デモンベイン」や「Fate」で
その人気が実証されているが、「なのは」も大雑把な分類をすれば
こうした「萌え燃え系」に辺り、その文脈で人気を博したと言えるだろう。
余談になるが「萌え燃え系」人気のルーツは80年から90年前半の黄金盛ジャンプの
モロ洗礼を受け、青年期以降にギャルゲーの時代を生きてきた層が重要な気がする。
スタッフ的に言えば新房監督の作品にしては彼の演出はスパイス程度で押さられた印象。
「とらハ」はやってないのだが、原作・脚本の都築真紀氏のカラーが一番出てたのではないか。
監督としては脚本を邪魔しないような演出を行ったのではないかと勝手に推察してみる。
作画ではプロップデザインの斉藤良成氏のメカニカルなアクション・エフェクト作画と
7話の萌え萌えな大田和寛作画が印象に残った。
(こののち斉藤氏はA'Sでベルカ式作画で恐れられる事になるが)
あと忘れてはならないのが、1話のなのは夕食シーンとなのはの走るシーンですね。
またこでらかつゆき氏が担当したコンテは圧倒的に引きの絵やパースを効かせた絵作りで
特に9話・12話でその上手さが巧みに光った印象を受けた。
作画や話のあり方に興味を持つ部分が多かったので、とても面白く見られた。
特にバトルシーンが後半になると格段に面白くなったのはとても良かったです。
後はベタベタなゲーム音楽風味ながら、やたら盛り上がる劇伴も良かった。
リアルタイムで1話は見たけど、その時はピンと来なかったのです。
今回も最初付近の展開はあまりピンと来なかったが、
9話のなのはとフェイトが始めて共闘する回以降は
今までの伏線が繋がった感じがしてそれ以降は本当に楽しめましたね。
つまり「萌え」から「燃え萌え」へシフトチェンジしたのが9話だと思います。
だから個人的には9話まで見続けられれば面白い作品になる可能性が高いと思いますね。
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