カナタ、
リオ、
クレハ、
ノエル、
フィリシア。彼女達の最後の姿。
この蒼い「ソラノオト」の中で彼女達はどう生きようとしているのでしょうか。
-あらすじ-カナタが砦へ来て1年。カナタのトランペットの腕も上達しつつある頃
ミシオから
「カナタの夢」は何と聞かれる。
「トランペットが上手になること」とカナタは答えるが
ミシオからそれは
目標だといわれる。
夢と目標の違い。
そして自分の夢が何なのかを知りたくなったカナタは隊員や知り合いに
それぞれの夢を聞くのであった。
そんな最中、クラウスからリオにローマ皇帝の手紙を渡したいと言われ
カナタはどこかに行ってしまったリオを探しに行くのであった。
-感想-どこまでも限りなく広がる、世界の果て、いやその先まで蒼く続くであろう
「ソラ」。
そしてこの
「ソラ」に人が紡ぎだする
「オト」を奏でられれば、生きていける。
どんなに世界そのものが荒廃して寿命が尽きようとしても、
蒼い
「ソ・ラ・ノ・オ・ト」の世界で生きていこう!!、前をそして希望を見失わずに!!
夢だって叶えたいんだ!!!というお話が
「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」という作品のように思えます。
私は世界が荒廃した後のお話という設定が好きです。
(例で挙げるとするとファイナルファンタジー6やブレス・オブ・ファイア3などです)
この世界設定ではおのずとテーマが「世界が荒廃しても生きていこう」になります。
状況はアマガミSS13話のサブタイトルのように「サイアク」ですが、
人の気持ちとしては「希望に向かっていこう」に繋がっていきます。
「ソラノヲト」はこの世界崩壊後という世界観を土台に
隊員同士の健気に生きよている生活感を重視した物語構成を中心に据え
またそれを美術背景によって、トータルにまとめあげられた作品です。
演出のトーンも抑え目でありますが、その分地に足の着いた
キャラクターの見せ方でリアリティを確保しています。具体的な夢や目標は無いが「何」かをしたいと思っているカナタ。
「ローマを救いたい、新しい世界を発見したい」夢を持つリオ。
そんなリオの夢に
「今は彼女についていきたい」と決心したカナタ。
そしてリオは
「カナタの夢が何なのかがわかるまで導く」と言います。
カナタとリオの新たな出発を示唆して結末を迎えました。
具体的な夢がまだ無いカナタはまだまだ成長途中のキャラですが、
もちろん本編を通して成長しています。そしてここで物語は終了ですが、
この後にリオと一緒にいること、一緒に経験を重ねることで
「夢」をつかむのでしょう。
それは自らの持つ
トランペットとは無縁ではないはずです。
カナタは「世界の彼方」でソラノオトを奏でるのでしょうから。このお話の終着点としては説得力のある結末となっていると思います。
世界を救うという「設定」を消化するのが大事なのではなく、
物語の最後でリオの「世界を救いたい」カナタの「夢を手に入れたい」という言葉を
彼女達が説得力をもって言うためにどういう経路を辿ったかが重要であると考えています。その点でカナタの言葉もリオの言葉も説得力がありましたので
素直に良かったのではと思います。
カナタが光に対して向かうショットや5人全員が左を向いて走るショットなど
希望を象徴したカットが見受けられます。確かにリオの言うとおり
いつか
「世界が滅びるかもしれません」がそれまでは
「彼女達の世界」
「希望溢れる世界」だという事を見せてくれた2つのショットだと思います。
-全体の感想-全体的には
佳作でしたね。手堅い、作りこまれた作品世界には素晴らしいものがあります。
特に美術背景やキャラクターの造形といったビジュアルは個人的に好きでした。
また神戸監督の細部にまで徹底して描写しぬくというスタイルは健在でした。
ノエルは可愛いですね~♪無口キャラはたまらないです♪♪大島ミチルさんのどこかケルト調の楽曲は世界が滅び去る雰囲気も醸し出しつつも
その中での人間の生き様をきちんと拾っているように思われます。
音楽を聞き、キャラクター達の挙動を追っかけているだけとても幸せな感じになれます。
TV放映時から気になっていたのですが、今回で音楽のよさもやっとわかりました。
全体的に地味な作品で、大きなカタルシスや派手な展開、
キャラクターの活躍を期待すると肩透かしになる可能性がありますが、
「一つのテーマを作品世界レベルで作りこんで結論を出す作品」が好きであれば
オススメできる作品であると言えるでしょう。
神戸守監督、吉野弘幸氏、赤井俊文氏、大島ミチルさんをはじめ
スタッフの皆様ありがとうございました!!